純EVメーカーへ移行しつつあるアルピーヌ
text:Richard Lane(リチャード・レーン)
【画像】アルピーヌA110 競合スポーツモデルと比較 全126枚
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
フランスのアルピーヌは最近忙しい。モータースポーツの最高峰、F1への参戦を発表しただけではない。ジャガーと同様に、純EVのみを生産するブランドになることを決定したばかり。
目下、エントリーグレードのハッチバックとクロスオーバー・モデルの計画が進められている。ロータスと共同開発される、よりスポーティなモデルも進行中だという。
そんなアルピーヌにとって、A110に追加となったリネージGTの発売は、小さな動きではあるだろう。4気筒エンジンのみで駆動される小さなスポーツカーは、もうすぐアルピーヌのカタログから永久的に消える運命にある。恐竜時代のクルマとして。
限定400台が製造されるアルピーヌA110リネージGTの英国価格は、5万9410ポンド(855万円)。現在のアルピーヌの中では、上級志向の最も高価なモデルに位置づけけられる。今後のブランドの方向性を考えるうえで、議論となる部分かもしれない。
親会社となるルノーには、1つの目標がある。アルピーヌによるル・マンへの参戦など、モータースポーツ活動に必要な資金を、ブランド内でまかなえるようにするというものだ。
それを実現するには、価格の高いリネージGTの存在が不可欠。より多くの台数を販売し、利益を上げる必要がある。
優れた技術にはプレミアムな設えが必要
現在のアルピーヌが抱える課題は、A110の販売が伸びず損失に近い状態を生み出していること。その原因は、ダブルウイッシュボーン・サスペンションを備えるオール・アルミ製のスポーツカーを、ゼロから開発したことによる。
莫大な開発費用を投じたA110が、エントリーグレードのピュアなら4万8000ポンド(691万円)から英国では買えてしまう。ここに問題がある。
高めの価格を付けて優れた収益を得るには、高い走行性能に加え、プレミアムな設えも必要になる。それが現在のスポーツカーでは、売り方の主流といえる。量産車として世界水準のテクノロジーだけでなく、ラグジュアリーさも欠かせない。
これを一番上手に展開しているのがポルシェ。ロータスがフェラーリを追い越せない理由でもある。この課題を解決する手段としてアルピーヌが生み出したのが、リネージGTだ。
反面、英国価格が約6万ポンド(864万円)もする認知度の低いブランドのスポーツカーに載るエンジンが、直列4気筒で充分なのかという疑問はある。恐らくアルピーヌの製品プランナーも、悩んだだろう。
リネージGTは、安価なルノーのハッチバックと多くの部品を共有しつつ、ラグジュアリーなアプローチを上手に融合させているようだ。アルピーヌを、どこまで上級ブランドに押し上げることにつながるだろうか。
専用ホイールやバケットシートを装備
A110をリネージGTへ仕立てているのは、表面的な部分が中心。ミドシップされる1.8L 4気筒ターボエンジンは最高出力252psを発揮するが、ベースグレードのピュアと同じ。7速デュアルクラッチATも、細身のタイヤを結ぶオープンデフも変わらない。
長距離も含めて、ドライブ時のフィーリングも通常のA110に準じる。固定式のサスペンションは柔らかいまま。引き締められたA110 Sのものではない。
タイヤはミシュラン・パイロットスーツ4。これも従来と変わりなく、グリップ力に優れるが、過度なほどではない。挙動も漸進的で好感が持てる。
時折ドライな破裂音を響かせるスポーツエグゾーストは、標準装備される。ブレンボ社製の強化ブレーキも備わり、車重1123kgのボディを効果的に止めてくれる。ブレーキペダルの重み付けも適正で、高次元での自信をドライバーに与えてくれる。
動的な性能で違いをもたらす装備としては、アルミホイールもある。リネージGT専用デザインで、見た目の印象がだいぶ違う。試乗車のボディはマーキュリー・シルバーに塗られていたが、淡いゴールドのホイールと素晴らしいコーディネートになっていた。
スポークのデザインは複雑だから、重量的なメリットはないかもしれない。とはいえ、ほとんど走りの変化には気づかない範囲だと思う。走りとは関係ないが、シート間の小物入れも大きくなっている。
この続きは後編にて。
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