車のニュース [2025.06.20 UP]
豊田自動織機の非公開化と企業のガバナンス【池田直渡の5分でわかるクルマ経済】
文●池田直渡 写真●トヨタ
トヨタの純正コーティングの特徴や種類は?価格、専門店との違いを解説
6月3日、トヨタグループの源流企業である豊田自動織機(以下、織機)が、上場廃止を目指すことがわかった。当記事では、経営目的としてその意味する所を解説することに集中したい。ついては、自社株消却までの一連の手続き的な流れは詳述しない。企業財務のテクニカルな話がどうしても知りたい方は申し訳ないが筆者の有料noteに細かく書いてあるのでこちらをご参照いただきたい。
さて、今回突然の上場廃止の発表を、世間は驚きを持って迎えた。対外的には「グループ間の株式持ち合いによるガバナンスの複雑化の解消」を目的とするという説明になっている。嘘ではないが、それは多分一面に過ぎない。織機がやったことは詰まる所何なのかと言えば、資本の論理によるガバナンスを整理再編成し、権利関係の混乱を取り除いて企業統治の構成要素をシンプル化したということであり、言い方を変えれば、それは経営メンバー(執行役員)の手に経営の主導権を取り戻し、その分の重責を負っていくということである。
公開買い付け終了後の豊田自動織機と関係各社の資本関係(図版はトヨタイムズより引用)
資本主義経済おいて株式というのは極めて重要な要素である反面、ある種の厄介さを持っている。本質的には、株は企業の所有権を細かく分割したものなのだが、同時に、株は資産として売買して利鞘を稼ぐこともできるし、議決権として行使することもできる。
多くの人間が経営に対する議決権を分割して持っていれば、それぞれの都合や思惑が対立して物事の決定が遅くなる。しかし、これまでそうした株主のわがままは、市場そのもののわがままさの縮図であり、わがままさを内包することが結果的に多様性への対応力を産むことと考えられてきた。非効率ではあるが、そのコストは無駄ではないとする考えである。
しかし、2000年代に入って、グローバルな市場経済に中国企業がプレイヤーとして参加するようになると、一党独裁の中国共産党の計画経済が、株主権利を超越した党の指導という強権を基に、即断即決経営を進め、それによって中国企業は急成長を遂げる。党の指導体制の下には「それぞれの都合や思惑が対立」することはない。個人の自由と引き換えに簡単に意見が一本化できる。
メディアを含め、中国企業のスピード感を礼賛するが、それは同時に個人の財産権と自由への制限と引き換えに成立している。そういうプレイヤーと戦うためには、経営体制の抜本的改革が必要になる。
極論を言えば、中国政府は国家レベルの資本力を基に、中国企業にライバルの株式を取得させて、競争力を弱めるコントロールをすることも可能である。そういう可能性まで考慮した体制を考えると、株式上場という体制の不利が浮き彫りになるのだ。
トヨタ自動車 2025年3月期 決算説明会における質疑応答の模様
極論を除外したとしても、短期保持で株価を上げたい投機筋の思惑もグローバル競争にとって邪魔である。例えばトヨタ自動車は過去数年に渡って、株主総会で機関投資家からの豊田章男会長の罷免請求が提出されてきた。ESG投資の論理で内燃機関禁止の流れで株価を上げたい一部の機関投資家が株を取得し、あるいはそうした機関投資家同士が連携して、罷免請求要求の議決権を増やしてきた。その結果本当に罷免請求が成立する票数が刻々と近づきつつあったのである。
常識的に考えて、5兆円4000億円という空前の利益を出した2024年3月期の決算後の株主総会で、経営陣への退陣要求というのはもはや悪い冗談でしかない。
業界状況を熟知した執行役員の決定が、専門家ゆえの狭い視野に陥るリスクがあるという考え方はわかるが、だからと言って、結果を出している専門家に対して、より素人に近い株主の助言を強めようとする考え方は、「素人だからこそ見えるものもある」という限られた状況でのみ効果的な手段を過剰評価して目的化するという極端な解釈に基づくものだ。
ESG投資の構造的欠陥が明らかになった今年、トヨタ自動車の経営メンバーは何も変わっていないし、経営思想も方針も手法も何も変わっていないにも関わらず。ESGの失敗によって組織票が消滅した結果、豊田会長の信任率は突然、25%も向上した。こんな軽佻浮薄な思惑で経営に容喙されたのでは企業は堪ったものではない。株式市場をベースにしたガバナンスの無責任振りが明らかになった形である。
豊田自動織機は、産業車両、自動車およびエンジンやバッテリーなどの構成部品、繊維機械の分野で事業を行っている。大ヒットモデルとなったRAV4の企画、開発、生産も豊田自動織機が担当
さて、織機である。織機は現在、3つの事業領域を持っている。第一に世界トップのシェアを持つフォークリフトとセットになった物流ソリューション事業である。次に自動車事業。これはRAV4の生産、エンジンの生産、エアコン部品、バッテリーを含む電子機器の開発生産。最後に祖業である繊維機械である。この中で、次世代への大きな伸びが期待されているのは物流のDXとバッテリーであり、これらの事業に対しては、機を見ながら積極果敢な長期投資を続けていくことが必須になる。
しかしながらこれらの個別投資に対して株主だからと言って、一々「何時いくら儲かるんだ」という質問をされても困る。個別案件に関してのそれはわからないとしか言いようがないが、投資を行わなければ衰退していくことは明確なのだ。やらないわけにはいかない。多方面の投資に対して、一定の勝率で勝つことでマネジメントしていくしかない。
そこで織機は2方面から、こうした余計な口出しを排除することにした。ひとつは株式市場である。非上場化することで株式の取得による議決権を無くすことで、経営陣の裁量権を確保できる。
もうひとつは、トヨタグループ内の株式持ち合いの解消である。グループ内とは言え、トヨタグループの複数企業にそれぞれ議決権をバラバラに行使されれば、方針決定に時間がかかる。そこで今回は織機とほぼ事業領域が被らないトヨタ不動産を代表とし、トヨタグループの意向を一本化した。
大きな方向性としては、マイクロマネジメントは全面的に織機の役員会に任せる。個別案件には口を出さない。しかし例えば2024年に明るみに出た「認証不正」のような大きな問題については、織機の親会社(ホールディングカンパニー)を通して、トヨタグループ全体の意向をトヨタ不動産が持つ95.5%の株式を背景に介入する。というよりはグループが一丸となって、必要な措置を講じるということである。
全体として見れば、役割の階層化とも受け取れる。基本的な経営権は役員会に任せる。大きな有事に際しては、トヨタグループが協力できる体制を整え、これを以て経営の健全性を担保する。目指すのは摩擦が少なくスピーディーでより積極的な経営である。
言うまでもないが株式という資本主義の抜本に関わる制度を全否定しているわけではないだろう。だが、会社の状況などによっては、それにもデメリットがあるということで、そうした新しいオプションを創業100年を迎える伝統的企業が行使するというところに、大きな時代の変化を感じるのである。
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