S8Pとルーチェロータリークーペ
『オートモビルカウンシル2025』でマツダが展示した『S8P』。前編ではなぜカロッツェリア・ベルトーネ(以下ベルトーネ)に依頼したのか、その経緯を書かせて頂いた。後編ではS8Pに至る流れとともに、現車の特徴などについてお伝えしよう。
【画像】ジウジアーロがデザインした幻のコンセプトカー『マツダS8P』を関連車種と共に 全44枚
1963年の全日本自動車ショーに出品されたルーチェは、生産には至らなかった。その理由はサイズがコンパクトであったことや、初代ファミリアの投入を優先したためである。
ちなみにエンジンは993ccと1484ccの水冷直列4気筒とされ、全長3960mm、全幅1480mm、全高1385mm、ホイールベース2305mmというサイズだった。初代ファミリアより約200mm全長が違う程度だったことから、より大きなクルマとして改めてベルトーネにスタディをしてもらったのがこのS8Pだといわれている。この案をもとに社内デザイナーの手で量産化されたのが、1966年8月に発売された『ルーチェ1500セダン』である。
ロータリーエンジン縦置き、前輪駆動を想定
さて、S8Pのパワートレインはロータリーエンジンを縦置きし、前輪を駆動することが想定されていたため、ボンネットは低くデザインされた。実際にエンジンは木で作られたダミーが搭載されていたが、エンブレムなどはマツダのロータリーの証である三角形にMの文字が記されたものを採用。
このエンブレムは当時のマツダのものとは若干違っており、ジウジアーロ氏がデザインしたものかもしれない。今回来日した折にマツダの関係者が質問をしたが、覚えていなかったそうだ。
マツダは当時FFの経験がなく冒険だということで、普通のFR+4気筒を選択。しかし、FF+ロータリーは諦められなかったようだ。
1967年にマツダとして初めてロータリーエンジンを搭載した『コスモスポーツ』がデビューして以降、1968年には『ファミリアロータリークーペ』と続き、1969年にはついにFFの『ルーチェロータリークーペ』が登場。1970年には『カペラロータリークーペ』が導入され、一連のロータリークーペシリーズを完成させた。
その『ルーチェロータリークーペ』こそがS8Pの印象に近いことを踏まえると、S8PがあったからこそFFのルーチェロータリークーペが誕生したといっても過言ではないだろう。
ロータリーセダンがあった?
実は、会場で非常に貴重な写真を発見した。それは初代ルーチェと思しき2台と、その先頭に少し表情の違うセダンが並んでいるものだ。それをよくよく見ると、先頭のクルマは後続のルーチェセダンとはフロントフェイスが違い、さらにはロータリーのエンブレムが小さく見て取れる。
あとから入手した情報によると、このモデルは『S10P』と呼ばれるものだった。S8Pは、コスモスポーツの試作車『L402A』に搭載されていた399cc×2ローターである、L8A型ロータリーエンジンで企画しベルトーネへデザインを依頼。そこから市販化を見据え、コスモスポーツの市販車に搭載された491cc×2ローターである10A型を使うべく、仕様変更されたのがS10Pなのである。つまりS8Pの『8』とS10Pの『10』は排気量を示していたのだ。
恐らくこのS10Pは現存していないので駆動方式がFFとFRのどちらだったかはわからないが、ロータリーエンジンを搭載しテストを行っていたことはこの写真からも明らかだ。また、ルーチェロータリークーペとの関係は現時点では不明ながら、少なからず影響はあったと想像するのも楽しいではないか。
イタリアンサルーン
さて今回オートモビルカウンシル2025に展示されたS8Pを眺めていると、当時のアルファロメオのパーツが様々な箇所で使われていることに気づいた。
まず、ホイールは『ジュリア・スプリントGTヴェローチェ』(カロッツェリア・ベルトーネ作)のものだし、ホイールもリング部分を加工したように見て取れる。ちなみにタイヤサイズも全く一緒の155-15/82だ。
室内ではメーター類はヴェリアだし、ルームランプやそのステーも共通。S8Pをベルトーネの工房で作られた際、ひとつひとつのパーツの型を起こすのではなく、使えるパーツは積極的に流用したのだろう。その一方で分厚いシートなどは、当時のランチアあたりを想像させる。
間近で見たS8Pは、まさに当時のイタリアの雰囲気を存分に伝える上質なサルーンに感じられたのであった。
(終わり)
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