この記事をまとめると
■オランダのTLRがディフェンダーを全面再設計したEVモデル「パンテラ」を開発した
レストアしつつの魔改造! いま世界的ブームの旧車の「レストモッド」とは
■4基のインホイールモーターを搭載し600馬力・6400Nmという規格外の性能を実現
■200kWhバッテリーにより約600kmの航続距離と50:50の重量配分を両立している
電動化がレストモッドの常識を塗り替える
オランダに拠点を置くザ・ランドローバーズ(以下TLR)が手がけるディフェンダーのレストモッドは、これまで主にシボレー製V8エンジンを搭載したモデルで知られてきた。年間28台という限られた生産台数のうち、4分の3はV8モデルとなる。だが、残りの4分の1を占める顧客が選ぶのは、まったく異なる電動パワートレインを搭載したモデルである。それが「パンテラ」だ。
電動化されたクラシックカー、いわゆる「エレクトロモッド」自体は決して珍しいものではない。だがこのパンテラは、単に旧式車両に既存のBEVのドライブトレインを移植しただけのプロジェクトとは一線を画している。TLRは7年もの歳月をかけ、ディフェンダーのシルエットの下に隠れるほぼすべてのコンポーネントを再設計したのだ。
もっとも注目すべきは、4つのインホイールモーターを採用した点だ。これにより適応型トルクベクタリングが可能となり、各輪に最適なトルク配分を実現する。新たなマウントポイントを設けた完全独立懸架式サスペンションでは、エアサスペンションまたは既存のコイルスプリングを選択できる。ステアリングシステムも電動化され、従来より大幅にクイックなギヤ比を得た。
そしてなにより驚くべきは、そのスペックだ。システム最大出力600馬力、最大トルク6400Nm(640Nmの間違いではない)という数値は、わずか5.5秒で2900kgというヘビー級のボディを静止状態から時速100km/hまで引っ張り上げる。
富裕層のレジャーの足となるパンテラには、当然V8モデルと同等のロングツーリング性能を求められる。それゆえ、2900kgの大部分を占めるのは200kWhという大容量バッテリーとなった。TLRのエンジニアたちは、シャシーのあらゆる隙間にバッテリーセルを配置することで、前後重量配分をほぼ50:50に保ち、375マイル(約603km)という航続距離を実現してみせた。このバッテリーは、150kW級の急速充電にも対応する。
エクステリアは、LED化された灯火類とインホイールモーター、そしてそれを収めるために大径化されたホイールを除けばオーセンティックなディフェンダーそのもの。一方でインテリアは、オリジナルの要素を残しながらも、独自のソフトウェアによるセンターディスプレイやフル液晶のメーターパネル、上質なセミバケットシートなどによって大幅な近代化改修がなされている。
電動パワートレインの追加コストは10万ユーロ。つまり、パンテラの価格は約42万5000ポンド(約8200万円)からとなる。決して安くはないが、1台あたり3000時間の作業時間を要すると聞けば納得できるかもしれない。
インホイールモーター(と、それがもたらすトルクベクタリング)は、現時点ではEV業界のごく一部を占めるに過ぎない。だがその可能性は大きく、この活気ある若いオランダ企業の挑戦は大いに注目に値するだろう。
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