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フォルクスワーゲン ザ・ビートルは、正しい「現代版ビートル」として開発し直されていた【10年ひと昔の新車】

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フォルクスワーゲン ザ・ビートルは、正しい「現代版ビートル」として開発し直されていた【10年ひと昔の新車】

2011年4月、上海/ニューヨーク/ベルリンの三都市で、ニュービートルの後継となるフォルクスワーゲン「ザ・ビートル」が華々しくワールドプレミアされた。1938年に登場した「初代ビートル」、115万台が販売されるヒット作となった「ニュービートル」に続く、3代目となる「ザ・ビートル」はどのような進化を遂げていたのか。ここでは発表まもなくドイツ・ベルリンで開催された国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2011年9月号より)

これが新しいオリジナル、納得のいくプロポーション
「2018年までに、フォルクスワーゲンはトヨタを抜いて世界ナンバーワンの自動車メーカーになる!」Dr.ヴィンターコルンのコミットメントは、着々と現実味を帯びている。今年上半期の出荷台数を見ても、前年同期より11.8%増で250万台を超えている。 

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この好調な数字を叩き出した背景には様々な要因が考えられるが、もっとも伸び率が高かったのは、市場の活力が回復してきたロシア、そして東ヨーロッパ諸国のマーケットである。ここでは前年同期比較で42.2%のプラスで9万2300台を販売している。

またこのところ停滞気味だったドイツ市場も活気を帯びてきて4.9%増の30万1700台を記録している。また中国を含むアジア地域でも95万台以上を出荷して、16.4%増を記録した。

そして今回のニューモデルのメインターゲットでもあり、フォルクスワーゲンにとってはなかなか攻略が難しい北米マーケットだが、ここでもなんと販売台数は21.8%の増加を見せて、23万7700台を売り上げた。これは、世界ナンバーワンの自動車メーカーを目指すフォルクスワーゲンにとっては朗報といえるはずだ。

言うまでもなく、ビートルのニューモデルである「ザ・ビートル」は、この北米マーケットにとって非常に重要なモデルである。というのも、それまでのニュービートルは、1998年の発売以来、生産が終了するまでの13年間でおよそ115万台が販売されたが、フォルクスワーゲン側の当初の思惑とは違って、その大半はアメリカ市場で売れたのである。

クルマを実用の道具として使うドイツやヨーロッパにおいてニュービートルは、その見切りの悪いボディスタイルや、これまで慣れ親しんできたものとは異なる不可思議なドライビングポジションなどにより、広く受け入れられるには至らなかった。またその価格も、ビートルというミニマムトランスポーターを期待していたユーザーにとっては、「しょぼい」エンジンを搭載している割には高いと映ったのである。その結果、ドイツにおけるニュービートルの総販売台数は、全生産台数のおよそ10%に留まっている。

ところで本題へ入る前に、ニュービートルにまつわるちょっと面白い話を紹介しておこう。これはフォルクスワーゲンのチーフデザイナー、クラウス・ビショフから聞いた話だが、ニュービートルの基本となったデザイン、すなわち2個の大きな車輪と大きな半円の組み合わせは、確かにクラシックビートルに似てはいるが、その本来の目的は電気自動車、それもインホイール電気モーターを持ったコミューターのためのものだったというのだ。

そして電気モーターの特性から、前にも後ろにも運転できるということで前後のスタイルがほぼ対称形とされ、ドライバーズシートもホイールベースのほぼ中央に位置していたのだ。

ところがそのデザインがオリジナルビートルを彷彿させるものとして認識され、初公開のデトロイトショーで非常に大きな反響を呼んだので、その形のままニュービートルとして生産が始まってしまったのだという。

ビショフ氏によれば、今度のザ・ビートルこそが「新しいオリジナル」、すなわちプロポーションの正しいビートルであるという。言われて見れば、ザ・ビートルのキャビンはホンモノのオリジナルビートルのように確かに後方へ移動しており、実用性を考えた納得のいくプロポーションを持ち、デザイン的な進化が見られる。

さて、ベルリンで開催された試乗会には、おそらく間違いなく世界で一番忙しい人の部類に入るであろうフォルクスワーゲン会長のDr.マルティン・ヴィンターコルンも参加した。それだけ、この新しいザ・ビートルには大きな期待がかけられているというわけである。

トップモデルの2.0TSI、キャビンは雰囲気も変化
この日、テストドライブ用に揃えられていたザ・ビートルは、欧州仕様と北米仕様の2種類。ただしボディ外観からでは、フロントフェンダーのリフレクターなどにわずかな違いがある程度で、簡単には見分けがつかない。

ところが近寄って細部を見てみると、いくつかの違いを発見することができた。たとえば、ボンネットフードの支持部に、欧州仕様は2本のダンパーが装備されているのに対して、北米仕様は1本のつっかえ棒、つまりボンネットステーで済ませているなど、いくつかの節約装備が見受けられた。

やはりアメリカ市場はコストのせめぎ合いで、ここまでやらねばbセしボディ外観からでは、フロントフェンダーのリフレクターなどにわずかな違いがある程度で、簡単には見分けがつかない。

ところが近寄って細部を見てみると、いくつかの違いを発見することができた。たとえば、ボンネットフードの支持部に、欧州仕様は2本のダンパーが装備されているのに対して、北米仕様は1本のつっかえ棒、つまりボンネットステーで済ませているなど、いくつかの節約装備が見受けられた。

やはりアメリカ市場はコストのせめぎ合いで、ここまでやらねばならないのだろうか。スチール製のボンネットはかなり重く、これはアメリカのご婦人方にはやや不便なのではないだろうかと思わず心配になった。

一方で、試乗車の搭載エンジンはすべてガソリンの2Lターボ仕様、すなわち2.0TSIで揃えられていた。その最高出力は200ps、最大トルクは280Nmを発生するもので、トランスミッションは6速DSGであった。フォルクスワーゲンの発表によれば、スタートから100km/hに達するまでの加速タイムは7.5秒、最高速度は223km/hに達する。

この2.0TSIは、ザ・ビートルのエンジンラインナップでトップレンジに位置するもので、他には1.2TSI(105ps)/1.4TSI(160ps)/2.5(直列5気筒・170ps)のガソリンエンジン、1.6TDI(105ps)/2.0TDI(140ps)のディーゼルエンジンの搭載が発表されており、投入される市場に合わせて順次導入される。日本向けには、1.2TSIと7速DSGを組み合わせたモデルが予定されているという。

現行ゴルフと同じPQ35プラットフォームに構築されたザ・ビートルのボディサイズは長さ4278mm、幅1808mm、高さ1486mm、そしてホイールベースは2537mmである。これをニュービートルの値と比べてみると、152mm長く、84mm広く、12mm低い。そしてホイールベースは22mm長くなっている。

そしてキャビンに入ると、こうした数字から想像される以上に、広々となった感じがする。それは、ドライバーはもちろんのこと、パッセンジャーのすべてが無理のない正しい場所に座ることができるようになったからだ。

たとえば、ニュービートルではドライバーの斜め前方で視界を遮っていたAピラーは大きく後退しているし、同時に無意味に長く伸びていた広いダッシュボードは消えた。そしてリアパッセンジャーの頭上に迫っていたルーフは、後方へと移動している。しかしそれでも、ゴルフに比べたらヘッドルームはミニマムで、やはり本格的な4シーターモデルとは言えない。

またキャビンの位置が大きく後退したおかげで、ニュービートルではわずか214L、リアシートを倒しても769Lしかなかったラゲッジスペースの容量は、標準状態で310Lへと増大している。リアシートのバックレストは左右半分ずつ倒すことが可能だが、左右ともフラットにした最大時での容量は905L。ただし増えたとは言え、これは一般的なFFハッチバックのコンパクトカーから見れば、まだほど遠いボリュームでしかない。引っ越しの際にザ・ビートルは、猫の手ほどのお手伝いしか期待できない。

実質的な改良点も含めて今日的なレベルを獲得
ところで新しいボディレイアウトの大きな利点は、前後の見切りというかボディの捉え所がわかりやすくなったことで、駐車の際でも普通のモデルの感覚でクルマを寄せることができるようになった。

コクピットのデザインも一新され、オリジナルビートルのようにメーターナセルの中央に大型のスピードメーターがレイアウトされている。一方、助手席の前には昔懐かしいフタ付きのグローブボックスが用意されている。

空車重量1364kgと、ゴルフGTIよりも軽いボディに2.0TSIの200psのエンジンを搭載しているのだから、その走りは十分に活発である。またランニングギア(シャシ)は、ニュービートルではゴルフIVのものをベースとしていたためにクラシカルな印象を受けざるを得なかったが、このザ・ビートルではようやく現行ゴルフと同じプラットフォームを獲得することができたおかげで、ロードホールディング、そして乗り心地も含めて今日的なレベルに達している。

ただし試乗車に装備されていたオプションの19インチタイヤはちょっとやり過ぎという印象で、わずかではあるがワンダリングを体験した。おそらくではあるが、18インチタイヤを装着した仕様の方がもっと乗り心地は改善されるだろう  。

というわけで新しい「ザ・ビートル」は、確かに旧モデルとなるニュービートルと比べるとスタイリングだけでなく、ドライビングポジションを始めとして、いくつかの実質的な改良点も備えていた。だが普通ならモデルチェンンジしたクルマが備えている、納得させられるような進化した印象は感じられなかった。また2.0TSIモデルのドイツでの価格は2万7100ユーロ(約312万円)と、ゴルフGTIとほぼ同じレベルである。

だから、よほどこの「ビートル」のスタイルが気に入っていて、これでなければ嫌だという方以外には、ゴルフをお勧めする。ゴルフの方が安くて使いやすいことは間違いないからだ。どちらを選ぶかは、あなた次第である。(文:木村好宏)

フォルクスワーゲン ザ・ビートル 2.0TSI 主要諸元
●全長×全幅×全高:4278×1808×1486mm 
●ホイールベース:2537mm 
●車両重量:1439kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1984cc
●最高出力:147kW(200ps)/5100rpm
●最大トルク:280Nm/1700-5000rpm
●トランスミッション:6速DCT(DSG)
●駆動方式:FF
●0→100km/h加速:7.5秒
●最高速度: 223km/h※
EU準拠

フォルクスワーゲン ザ・ビートル 1.2TSI 主要諸元
●全長×全幅×全高:4278×1808×1486mm 
●ホイールベース:2537m 
●車両重量:1297kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1197cc
●最高出力:77kW(105ps)/5000rpm
●最大トルク:175Nm/1550-4100rpm
●トランスミッション:7速DCT(DSG)
●駆動方式:FF
●0→100km/h加速:10.5秒
●最高速度:180km/h
※EU準拠

[ アルバム : フォルクスワーゲン ザ・ビートル はオリジナルサイトでご覧ください ]

文:Webモーターマガジン Webモーターマガジン編集部
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みんなのコメント

13件
  • Focke
    デザインは特徴あるものだけど、実態は「ツードア・セダン」だからね。ファミリーユースでは使いづらいよ。
  • sug********
    乗っていたけど、まぁとにかく故障が多い車だった。
    毎月何かしか不具合があったんじゃないかと思うくらい!
    個体のハズレって事もあるのだろうけどビートルのココが弱点って箇所が全部出た気がする。
    三年でギブしてフランス車に乗り換えた……コレも物好きだと思うけどww
    ところがコレが大当たりで7年乗ってもほぼノントラブルなんだよね。
    コレは個体が当たりだったのかな?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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