カウンタック50周年を記念して登場した“ニューカウンタック”。世の中で話題となり続けているこの112台の限定モデルについて、 “カウンタック伝説”からその正統性や未来に至るまでを、今一度紐解いてみよう。
話題になり続けるのはカウンタックだからこそ
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北米モントレーカーウィークにおけるメインイベントの1つである「ザ・クエイル・モータースポーツ・ギャザリング」にてランボルギーニ カウンタックLPI 800-4(以下、ニューカウンタック)がデビューを飾った。このモデルはカウンタック誕生50周年を記念して開発されたモデルであり、限定112台のリミテッドエディションとされている。当連載においても既にカウンタック生誕50周年に関して書いたが、世の中ではこのたった112台しか生産されない特殊なモデルに関していやというほど語られ、それは今もまだ続いている。さすがのカウンタックのブランドパワーである。
そもそも限定生産112台という数字にもこだわりがある。そう、それは初代カウンタックの社内開発プロジェクト名の「LP112」に基づいているという。エンツォ・フェラーリがそのクルマを欲しがる顧客の数より1台少なく作り、手に入れることが出来なかった人々の飢餓感を煽れ、といった戦略を命じたというエピソードへのオマージュとして、フェラーリも不思議な台数をこの手の限定生産モデルに設定するのを常としている。たとえばF50は349台であり、近年のモンツァSP1/SP2では499台といった感じだ。もちろんこの手の限定モデルの常として、世の中にその存在がオープンにされる前に、すべての個体の嫁ぎ先は決まっている。メーカーに認められた優良顧客だけにその存在が案内され、オーダーを入れることができるシステムになっている。
モデル名のLPはカウンタックの特徴的レイアウトである縦置きエンジンレイアウト・ミッドマウントを意味するもので、カウンタックの最終モデルである25thアニバーサリー以外の全モデル名に使われていた。次なる800は814psという最高出力の数字を丸めたもので、オリジナルカウンタックにおいては、400、500、5000といった排気量にちなんだ数字が設定されていたことの代わりである。今回の限定モデルではLPの後にハイブリッド技術を採用した証のIが付け加えられ、さらに現行アヴェンタドールのLP780-4にあるように、AWDを表わす-4が表記されている。もう、モデル名においてもウンチク満載である。
すべてのランボルギーニV12は“カウンタックそのもの”
この8月にこのニューカウンタックが発表されると世界のファンの間で、賛否両論となった。1990年に最後のカウンタックがラインオフして以来30年余りの時の流れは“カウンタック伝説”を作り上げていたのだから、それは当然とも言えた。「これはカウンタックではない」「ランボルギーニはマーケティングのために名前を使っただけだ」「カウンタックという重要なアイコンを尊重する姿勢は素晴らしい」「これぞ21世紀のカウンタック! 」……。ネガティブなコメントの意図もよくわかる。1992年にギブリIIがアナウンスされたとき、筆者もマセラティスタとして愕然としたことを昨日のように覚えている。ビトゥルボ系の末裔である222.4Vに、モディファイしたガンディーニ・デザインのエクステリアを被せて”ギブリ”は無いのではないかと……。一方でランボルギーニはそのDNAとしてカウンタックを崇めながらも、これまで30年間カウンタックの名前を封印してきた。どんな形でカウンタックと名付けられたモデルがリリースされようと、様々な意見が噴出するのは当然であり、それゆえこのニューカウンタックの評価は難しい。
ランボルギーニというメーカー名とカウンタックというモデル名はある意味でイコールと言っても過言ではない。カウンタックの後継モデル=ディアブロのチーフエンジニアであったルイジ・マルミローリは、その当時ですら、カウンタックという存在は神格化されていたと語っていた。「社内でもカウンタックを作り続けることこそ正義だ、という意見があったくらいだ。たしかに当時でもその革新的なレイアウトとスタイリングのDNAは全く古くなっていなかった。だからディアブロはそのレイアウトを踏襲したし、スタイリングはガンディーニでなければならないと判断した」。そう、そのルイジの判断は至極正しかった。ディアブロ、ムルシエラゴ、アヴェンタドールは、モデル名こそ異なるものの、皆はカウンタックという“眼鏡”を通してそれらを眺めている。カウンタック以降のランボルギーニV12はカウンタックそのものなのだ。
いろいろなところで書いているので、既に目にされていたら恐縮だが、前述のルイジがこんなエピソードを語ってくれた。ディアブロのチーフエンジニアであった彼は突然、シェアホルダーとなったクライスラーのトップである故リー・アイアコッカとは深い関係を築き、しばしば北米を訪れていた。「あるエキゾティックカーミーティングへ顔を出したときのことだ。カウンタックLP5000を前にしていると、近くに居たカーガイらしき男が話しかけてきたんだ。”このクルマは素晴らしい、カウンタックというメーカーのLP5000というんだ”と。私は自分がその前にランボルギーニの人間だと名乗らなくてよかったと思ったよ」と。
ニューカウンタックの登場は顧客にとってハッピー
「これはカウンタックではない」という否定的な意見を持つ熱狂的なファンも、このニューカウンタックの全112台がその発表を前に完売しているという事実を考慮しなくてはならない。私はつい先日、このニューカウンタックをデザインした親友であるランボルギーニのチーフデザイナーのミィティア・ボルケルトに招待されて、ランボルギーニ本社のチェントロ・スティーレ(=デザインセンター)を訪問した。彼はその場で、ニューカウンタックの112人のオーナーのうちの何人かに行ったであろう、ニューカウンタックのスタイリング・プレゼンテーションを再現してくれた。
ひとことで言って、そのコンテンツは完璧であった。ニューカウンタックのプレゼンテーションビデオに続いたミィティアのアンヴェイルによってLPI 800-4がお目見えする。「ランボルギーニが持つ未来への提案、それを形作る”フューチャーデザイン”を描きながらも、すべてのラインがカウンタックを感じさせるものに仕上がっています。フロントのプランビュー、そしてフェンダーと一体化したバンパーはカウンタック5000クアトロヴァルヴォーレ、スリムでスタイリッシュなヘッドライトはカウンタックの原点たるLP500そのものです」と、彼のプレゼンテーションは続いた。
そして最後は当時のクラシックな外装色と、それをベースに新しい解釈を行ったものの、2つのタイプが用意されているというコトバで締めくくられた。「貴方がオリジナルのカウンタックのオーナーであるならば、その外装色に合わせてニューカウンタックのカラーを選んでください」という完璧なエンディングも用意されていた。
これをして、クラシック・カウンタックファンをも取り込んでしまう隙のないビジネス、または63台限定の既発表シアンのコンポーネントをキャリーオーバーする効率的なビジネス、という観点で見ることができなくはない。しかし、このニューカウンタックの登場は、作り手の彼らだけでなく顧客にとってもハッピーなことではないだろうか。クラシックカーの気むずかしさにはなじむことができず、カウンタックに乗ることが出来なかった顧客。そしてオリジナルのカウンタックは持っているものの、ロングツーリングには気が重いという顧客。そういった顧客に夢を与えることができたからこそ、このニューカウンタックのビジネスが成立した。
2021年の一瞬に生まれた泡沫の夢
クルマはやはり実物を目にしないとその美しさ、完成度は評価できない。このニューカウンタックはどうであろうか? 筆者としては一番重要なそのプロポーションが“正しくカウンタックしている”という点でまずは高く評価したい。そのリアクオーターを眺めるなら本当にスムーズで、カウンタックが生み出したワンモーションのプロポーションが美しく表現されている。ミィティア曰く、”人間の体のようだと言って欲しいね”。
「こんな明確なテーマを持ったスタイリングはアヴェンタドールの後継となるモデルにも活かされるのかな」とさりげなくジャーナリスト根性を出して訊ねる筆者に彼は笑って応える。「私の大好きな質問をしてくれたね。皆もよく解っているようにランボルギーニのDNAは未来へのアプローチだ。だから、私は喜んでこの2021年の仕事をここに残した。次の仕事は全くの別物。新しいテーマに挑んでいるのさ」と、うまくかわされてしまった。
筆者もこのニューカウンタックがシリーズモデルとして生産し続けられるとしたら、このプロジェクトに少し否定的であったかもしれない。しかし、このモデルは2021年の一瞬に生まれた泡沫の夢。だからこそ、その存在価値があるのだと思う。ところで前述したLPI-800-4のイメージビデオであるが、その中に登場したプロトタイプのLP500の存在を皆様は気になさらなかったであろうか。ここまで用意周到な彼らのこと。カウンタック生誕50周年に関してはカウンタックファンのための更なるサプライズを考えているようだ。それもごく近いうちに……。
文・越湖信一 写真・越湖信一(EKKO PROJECT)、Automobili Lamborghini 編集・iconic
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