「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、コンパクトSUVのフォード クーガだ。
フォード クーガ(2010年)
日本に導入されているモデルはあまり多くはないのだけれど、じつはフォードはエクスプローラーやエスケープをはじめ、たくさんのSUVをリリースしているメーカーでもある。そして今回、ヨーロッパ フォードから久々にやってきたニューモデルは、最近流行のコンパクトSUVの「クーガ」だ。2006年のパリ モーターショーでお披露目された「イオシスX コンセプト」というモデルを市販化したものだ。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
ベースとなっているのは、Cセグメントのフォーカス。プラットフォームをSUV用にチューンし、エンジンも同じくフォーカスのハイパフォーマンスモデルであるSTに搭載されていた、224psを発揮する2.5Lの直5 DOHCターボで、トランスミッションもSTのものと同じマニュアルモード付き5速ATの改良版を組み合わせている。ただし、SUVという特性を考慮して最高出力は200psに抑えられているが、そのぶん低回転域のトルクを向上させてあるものだ。
そのエンジンは、アストンマーティンばりにセンターダッシュにレイアウトされたスターターボタンを押して始動させる。だが、聞こえてくるサウンドは意外と静かだったりするのがイマドキっぽいのだが、飛び出し感もカッタルさもなくスルリと走り出す。これはインテリジェントAWDの賜物で、発進時には最大10%のトルクをリアに配分するようにプログラムされているという。
そのほかにも、50:50まで前後トルクの配分が可能なことはもちろん、フロントブレーキを減圧することでオーバーステアを解消するCBC(コーナリング ブレーキ コントロール)や、空転輪にブレーキをかけるBLD(ブレーキ ロック ディファレンシャル)などの機能も盛り込んでいる。
オンロードでも十分に楽しめる軽快なハンドリング
これらはもちろんオンロードでも有効で、予想以上にクイックなハンドリングに少々驚きつつも、峠道での試乗でも自然なロールを保ちながら、安心感を持ったままコーナーをクリアしていくことができた。これには、けっこう感心させられてしまった。
ただし、シートのサポートは今ひとつ。日本人の体格では、例えばランバーサポートなどを工夫するとかの対応で、もう少しホールド感が欲しいところ。また、マニュアルモードのレスポンスはあまり芳しくないので、Dレンジに入れっぱなしの方が、シフトショックもストレスもなく快適に走ることができる。
大きめのサンルーフのおかげで明るい室内から開放感を楽しみつつクルージングしながらも、気分次第でスポーティに走るときもある・・・。そんな使い方が、このクーガには似合いそうだ。クルーズコントロールやシートヒーターなどの快適装備も充実している。
また今回は残念ながらオフロードでは試乗できなかったが、スイッチ類やノブはグローブを嵌めたままでも操作ができるよう、大ぶりに作られている。こんなところを見ても、かなりワイルドに走れそうな予感まで味わわせてくれたのだった。
(編集部註:フォードは2016年末で日本におけるすべての事業から撤退しています)
■フォード クーガ タイタニウム 主要諸元
●全長×全幅×全高:4445×1850×1715mm
●ホイールベース:2690mm
●車両重量:1670kg
●エンジン種類:直5 DOHCターボ
●排気量:2521cc
●最高出力:147kW<200ps>/6000rpm
●最大トルク:320Nm<32.6kgm>/1600-4000rpm
●トランスミッション:5速AT
●駆動方式:フロント横置き4WD
●10・15モード燃費:未発表
●タイヤ:235/50R18
●当時の価格<税込み>:378万円
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