WEC世界耐久選手権への参戦2年目のシーズンを終えた2輪界のレジェンド、バレンティーノ・ロッシ。昨年初めて富士のWECにやってきた時は、ピットガレージを出たり入ったりするたび、黒山の人だかりとなっていたが、今年も同じシーンが繰り広げられた。さすがは9度の2輪世界チャンピオンである。
ファンだけでなくメディアからの注目度も各国で極めて高いが、それを受けて取材規制も厳しく、チームのメディアセッションでも『質問は1媒体1問まで』といった制限がつくのが実情だ。
「MotoGPと同日開催は奇妙だね!」バレンティーノ・ロッシ、2度目のWEC富士でポールポジション奪取なるか
その喧騒のなかで、チームにいる時のロッシがいったいどんな人なのか、”実態”はなかなか伝わってこない。ということで今回は、ロッシとともに働いている人々に『素顔のバレンティーノ』を語ってもらった(※取材はWEC富士で実施)。
■若手ドライバーの手本となる行動。“特別扱い”は望まない
まず話を聞いたのは、現在所属しているチームWRTのオーナー、ヴァンサン・ボッセ。2輪引退後のロッシを、4輪レースの世界へと引き込んだ張本人だ。
「ヴァレ(チーム内でロッシはこう呼ばれている)は、カリスマ性があって特別な存在だよね。でも、実際にはとても気楽なタイプだし、モータースポーツ全般に対して熱心さがある。彼とは20年以上前からMotoGPなどで会う機会があったんだけど、2輪を終えた後に4輪に乗るかもしれないって話を聞いた時には、すぐに連絡を取った」とボッセ。
「最終的に契約がまとまって、一緒に働き始めたんだけど、彼とはとても仕事がしやすい。やる気もあるし、仕事に対する倫理観が高いレベルにある。一緒に仕事を始めた時、彼はすでに42歳で、いまでは46歳なんだけど、その間の彼の成長は通常では考えられないほど素晴らしいものだと思うよ」
「もちろん仕事に対してのアプローチという面では、4輪のドライバーとは大きな違いがある。彼はMotoGPのレジェンドで、道を極めた人間だから、何に対しても自分自身のやり方というものを持っているんだ。クルマに対しても、特別な感覚を持っているんだよね」
では、クルマから降りている時、ミーティングをしている時、ロッシはどんな感じの振る舞いをしているのだろう。その点に関しては、ロッシのチームメイトであるケルビン・ファン・デル・リンデ、そしてアハマド・アル・ハーティに話を聞いてみた。
まずファン・デル・リンデはドライバーとしてのロッシを次のように語る。
「ヴァレとはWRTで(使用マシンが)アウディ時代から一緒に仕事を始めたんだけど、最初からとてもいいコミュニケーションが取れた。彼は特別な扱いを求めていないし、普通に扱われることを望んでいるんだ。だから、こちらも彼を特別扱いせず、普通に接してきたのがチームメイトとしては良かったと思う」
「それに仕事の進め方がとにかく立派なんだよ。彼がデータを見たりしている時に感じるけど、本当に職業倫理観が高いと思う。セッションとセッションの間にも、どこをどうしたらより良くなるか理解し、自分を進歩させようとずっと努力している。彼の現在の年齢や過去のキャリアを考えると、いまそのように仕事に向き合っているというのは、若いドライバーたちの素晴らしい手本になると思う」
「BMWというクルマに関しては、ヴァレの方がよく知っている。僕は今年から乗り始めたところだからね。ただ、彼はどうやったらもっと燃費を稼げるのかとか、タイヤをセーブできるのか。どういう戦略を取るのがいいのかっていうディテールについては、僕に尋ねてくることもある。そこは僕が長い経験で知っていることだから。クルマを速く走らせることに関しては、何も教えることはないよ」
「ただ、タイムを上げていく手法は、僕らと少し違うかも知れない。4輪でプロとして走っているドライバーは、ピットを出て1周目から思い切りプッシュしていく。でも、2輪の場合はそんなことをしたらリスクが高いから、最初からプッシュはしないよね。だから、ヴァレは最初からフルプッシュするのではなく、セッションごとに少しずつ自分の走りを組み立てていくんだ」
■表裏のない、「テレビで見たまんまの人」
もうひとりのチームメイトであるアル・ハーティも、ファン・デル・リンデと同様、ロッシは“普通”の人間で、それがチームメイトとして素晴らしいのだと教えてくれた。
「まずヴァレと一緒に仕事できるとなった時、僕はすごく光栄だなって思ったよ。彼のMotoGPでのレースを見て育ったからね。でも、実際に会った彼は、とても控えめでいい人だったし、まわりに気を使う人物だった。彼以外に、そんなドライバーに会ったことはないぐらい。彼はプッシュすることを望んでいるし、勝つことを熱望している」
「それと同時に、僕に助けが必要な時には手を貸してくれるし、ドライバーのマネージメントに関してまで気を配ってくれる。彼ほどのキャリアを持っていないドライバーでも、あれほどピットにずっといるってことは少ないよ。彼はサーキット内外を問わず、チームととても近い場所で仕事をしていて、それがいまのWRTを特別なものにしている」
「3人のドライバーの絆もすごく強いんだ。その絆こそが僕にとって大切だ。ヴァレは、いつも自分の気持ちを正直に話してくれるし、いつも変わらない。そこが素晴らしいよね。あれほどのキャリアがありながら、今でも正直だっていうのがすごいことだと思うよ」
この正直さ、飾らなさに関しては、ファン・デル・リンデもまったく同じ意見だった。
「ヴァレは、一緒に食事をしていても、テレビで見たまんまの人物。とても楽しい男だよ。演技したり、自分が特別だってふりをしたりしない。裏表がなくて、極めて普通なんだ。そこがいいよね。サーキットの外でも音楽を楽しんだり、パーティを楽しんだりしているよ。特に、今年のオースティンで表彰台を獲得した後、日曜日の夜にはみんなで街に繰り出した。そこでみんなでお祝いをして、楽しんだ。バーに行って冗談を言って、いい夜を過ごしたよ」
そういうプライベートな場では、一体どんな会話がなされるのか。それはアル・ハーティが教えてくれた。
「ここは録音しないでくれる?(笑) いやいや、まぁ 僕らはいろいろなことを話すよ。MotoGPのこと、ル・マンのこと。イタリアの話や家族の話、子どもの話とか。普通にみんなが話しているようなことを僕らも話しているんだ。別に何も変わらない。シーズン中も、シーズンオフもお互いに連絡を取り合っているしね。今年、日本に来た時も、ヴァレに連絡して『いつ来るの? 日本では何を見たらいいのかな?』とか、そういう風に会話している。COTAで表彰台に上がった後のパーティでも、ずっとみんなでレースの話をしていたよ」
■シートポジションには寛容。サインの依頼にはいつも「イエス」
一方、スタッフとしてともに働いている人たちからは、ロッシはどんな印象を持たれているのだろうか。実際、ロッシのマシンのメンテナンスをしているセカンド・メカニックのベンジャミン・ペケはこう言う。
「彼はすごくいいドライバーだと思う。過去にMotoGPでキャリアを積んできているけど、いまでもベストを尽くしているし、戦っている。だから、僕らも彼を手助けしているんだ。ドライバーとしても、すごくいいよね。フィードバックも素晴らしいし、エンジニアへの説明もとても理解しやすいと思うよ」
「メカニックとしては、とても仕事しやすい。あんまり多くを要求しないから。シートやペダルの位置、ボタンの位置などにもうるさくないんだ。開幕前に一度シートを作ったら、それを通年使っている。
「彼は他のドライバーから、いつもできる限りのことを学ぼうとしているよね。そこが素晴らしいよ。そのほかに普段彼と話していること? それは言えない(笑)。彼はいつも冗談を言っているからね。リラックスしている時は、とにかく面白いんだ」
そして、最後に話を聞いたのは、WRTのトラベル&ロジスティック・オフィサーであるクレア・オルセル。彼女から見たロッシは、他のみんなが言うように、とてもいい人だと言うことだが、警備の面では心配もあるのだと言う。
「彼は大スターであるにも関わらず、とても親しみやすいの。特にピットの中にいる時は、他の人とまったく変わらない。普通なのよ。いつも礼儀正しいし、常にジョークを言っているタイプ。私は、彼とともに常に旅しているアシスタントのマックス・モンタナリと一緒に仕事をすることが多いんだけど、彼も含めて、とにかくいい人たちで素晴らしい」
「旅程に関しても、他のドライバーと同じで、彼らの予定や希望に確実に沿うだけだから違いはない。ただ、違いがあるとすれば、どの国に行っても、多くの人々がヴァレに会いたいって思うこと。日本にも多くのファンがいるから、セキュリティという面で彼に一番いいのはどういうことかっていうのを、確実にする必要はあると思う」
「ヴァレは『サインが欲しい』とか『写真を撮りたい』っていうリクエストに対して、いつも『イエス』って答えるんだけど、ある時点で、チームとしては彼がレースに集中できるように、どこかで彼をプロテクトしなきゃ、と思う。ガレージから出ていくたびに、彼はサインをしてあげようとしたり、子どもと写真を撮ってあげようとしたりするんだけど、チームとしては彼に集中するための完璧な環境を用意しなきゃって思うから。ル・マンやスパ、日本では、特に多くのファンが来るから気を使わないといけないって思うわ」
ということで、とても気さくで正直で親切というのが、近くで働いている人たちのロッシの総評となった。もちろんそれが伝わっているから、世界、そして日本のファンの皆さんも、ロッシを応援したくなるということだろう。来季以降のロッシの活動は果たしてどうなるのか、とても気になるオフシーズンに突入していくことになる。
[オートスポーツweb 2025年11月12日]
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みんなのコメント
これがビアッジあたりだと言葉を濁すのかな