レーシングドライバーがSUV? なぜ? しかもPHEV……。中谷明彦氏が乗るジープ ラングラー ルビコン4xeは、少し不思議な立ち位置にあるクルマだ。電気で走れる一方、ラングラーとしての素性も失っていない。この組み合わせは、どんな場面で意味を持ち、どこで割り切りを求められるのか。実際に付き合ってみることで、その輪郭が見えてくる。
文:中谷明彦/画像:ステランティスジャパン
【画像ギャラリー】ラングラー ルビコン4xeは正解だった? 所有して初めて分かったこと!(11枚)
レーシングドライバーがなんでSUV?
ジープ ラングラー ルビコン4xeを2年所有して分かったこと。それは、4xe (PHEV)という選択が示した「合理性」と「限界」だと考えている。
意外に思われるかもしれないが、現在の愛車はジープ ラングラー ルビコン4xeである。いわゆるプラグインハイブリッド車(PHEV)だ。
WLTCモード(EVモード)で約42kmのEV走行が可能で、居住地の東京都内中心部であれば日常使用域はほぼ電気自動車として使うことができる。
なぜこのクルマを選んだのか、と聞かれることは実際に多い。もともとレーシングドライバーであったし、スポーツカーが嫌いになったわけではない。もちろんサーキットを走りたい、限界走行を楽しみたい気持ちが消えたわけでもない。
しかし近年の道路交通環境、そして社会的なコンプライアンス意識の高まりを考えれば、一般道で高性能スポーツカーを所有する合理性は著しく低下してしまった。速度は合法的に抑えなければならず、限界性能に触れる場面もほとんどない。
結果として、性能を発揮できず、ただただ持て余す走りが強いられるストレスだけが残る。
総合的な実用性の高さが決め手
一方で、仕事柄、地方で開催される試乗会への移動や取材での遠出も多く、積載性や悪天候対応力、そして万が一に対する備えは無視できない要素となってきた。
ラングラー・ルビコン4xeを選んだ最大の理由は、オフロードを走りたいからではない。近年、日本各地で頻発する豪雨、冠水、土砂崩れ、雪害といった自然災害に対し、無事に通過できる確率を1%でも上げるためである。
ラングラーほどの悪路走破性能を備えたSUVであれば、地方取材中に不測の事態が起きた際でも、回避・脱出の選択肢が増える。
これは精神論ではなく、単純な機械的な車両性能の話だ。現行JL型ラングラーは2019年に登場し、当初はガソリンモデルのみだった。
2L直列4気筒ターボという構成に魅力を感じつつも本国北米で導入されていたディーゼルターボエンジン搭載車にも興味を持った。しかしPHEVモデルである4xeの登場によって、購入への決意は一気に固まったのだ。
見た目は大柄だが、実寸は全長4870mm、全幅1895mm、全高1855mmと、見た目ほど巨大ではない。特筆すべきは前輪の切れ角が最大43度まで舵角が取れるため、最小回転半径は6.2mだが、実用上かなり小さい。
我が家の駐車場前は4mに満たないほどの狭い私道だが、切り返しをせずに車庫入れが可能だ。国産FFベースのモデルでは最低2回は切り返しが必要だった。これはラダーフレームSUVとしては異例と言っていい。
PHEVならではの走行性能は走る場所を選ばない
縦おきの直列4気筒エンジンでパワートレイン全幅が抑えられていることも奏功しているのだろう。駆動モーターはエンジンとトランスミッションの間、従来トルコンが配置される場所に収まっているので、車輪の操舵角に制限が加わらないのである。
ボディサイドはほぼ垂直に立ち上がり、ドアヒンジも前方に露出しているため、開閉時の軌跡が小さい。結果として、狭い場所でも乗降性は高いし、駐車場で隣の車への干渉も気にならない。
高いフロアだが、サイドステップとアシストグリップのおかげで腰への負担は普通車よりむしろ低いほど(サイドステップはルビコングレードには本来装着されていないが、乗降性のためベースグレードのラングラー標準装備のものを装着している)。
ラングラー ルビコン4xeは発進時、基本的にモーター駆動となる。トルクは太く、極めてスムーズだ。走行モードはハイブリッド、エレクトリック、eセーブが選択でき、用途に応じた使い分けが可能である。
15.5kWhのリチウムイオンバッテリーは後席座面下に配置され、350VシステムでP1、P2モーターを制御。エンジンとP2モーター間にはバイナリークラッチが設けられ、最大出力時にはラングラー史上最も高い動力性能を発揮する。
また、8速ATとの組み合わせにより市街地から山岳路までドライバビリティーは良好だ。大径タイヤとラダーフレーム構造を考えれば、乗り心地はむしろしなやかで、ラダーフレーム特有の悪い粗さは感じない。
意外な欠点とは?
一方で欠点もはっきりしている。バッテリー搭載により荷室床には約10cmの段差が生じ、ガソリンモデルのような完全フラットにはならない。充電は200V普通充電のみで、急速充電には非対応。V2HやV2Lといった外部給電機能も持たない。
車室内の100Vコンセントはサービスバッテリー由来で、出力は限定的だ。EV走行距離も最新国産PHEV車と比べれば短い。
しかし、都内片道20km圏内であればEV主体で運用可能であり、高速巡航中にeセーブで充電を回復させるといった使い方もできる。
レギュラーガソリン仕様である点も含め維持費は予想以上にかからない印象だ。燃費は渋滞路で10km /Lほど。
ラングラー ルビコン4xeは全てに優れるクルマではない。しかし、2年間所有して分かったのは、このクルマが極めて明確な思想で作られているということだ。それは「どんな環境でも走れる確率を最大化する」という走破性の高さに集約されていると言える。
現在ラングラー・ルビコン4xeは販売終了となってしまったが、次にどのような形で進化するのかは注視していきたい。
ラングラーというモデルが持つ時間軸の長さを考えれば、性急な変化は起こらないだろう。しかし、この4xeという試みは、確実に一つの通過点を示していると感じながら、今でも乗り続けている。
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