2019年F1第19戦アメリカGPのパドックで土曜日から話題を集めていたのが、レッドブルがFIAに確認を依頼した燃料流量に関する『技術的指南の解釈』についてだった。
レギュレーションでは『1時間に100kgを超えてはならない』と規定されている。ただし、その計測は連続的にではなく、間隔を置いて断続的に測定されている。そのため、レッドブルのチーフエンジニアであるポール・モナハンは『測定されていないタイミングで多くの燃料を流入させた場合の合法性』について何度かFIAに確認を行っていた。その回答がアメリカGPの土曜日の朝にFIAからあり、それは違法だという結論だった。
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すると、その日の午後にサーキット・オブ・ジ・アメリカで行われた予選でフェラーリの驚異的な速さは姿を消し、メルセデスのバルテリ・ボッタスがポールポジションを獲得した。フェラーリがポールポジションを逃したのは第13戦ベルギーGP以降、初めてのこと(第18戦メキシコGPは予選2番手から繰り上がり)。連続ポールポジション記録は6でストップした。
予選戦後、メルセデスのトト・ウォルフ代表は「われわれにとっては、7月のドイツGP以来のポールポジションだ」と喜び、ルイス・ハミルトンは、「今日のフェラーリは明らかに少しパワーを失っていたと思う。明日のレースがどうなるか見てみよう」と含み笑いを浮かべていた。
果たして、フェラーリは日曜日のレースでも失速。シャルル・ルクレールが4位に終わった。フェラーリが表彰台を逃したのは第5戦スペインGP以来。しかも、3位のマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)に47秒以上の差をつけられ、メルセデス、レッドブル・ホンダの2強に完敗した。
直後に行われたFIAの会見で、そのことを尋ねられたフェルスタッペンは、「フェラーリの失速についてはまったく驚いていない。なぜかって?(FIAが出した)書類(技術指令書)を見たから。それがすべてを物語っている」と笑った。
■トップ3チームのセクタースピードを比較
だが、フェラーリのマティア・ビノット代表は即座に否定。ルクレールも「彼はチームの一員じゃないから、何もわかっていない」と反論した。
そこで、レース中のフェラーリの分析してみた。すると驚くべきことに、最高速はルクレールが13位(時速321.5km)、セバスチャン・ベッテルも16位(時速319.9km)だった。トップ3チームでは後方から追い上げてきたレッドブル・ホンダのアレクサンダー・アルボンが最も速い時速328.7kmを記録。
優勝したボッタスは10位(時速324.1km)、フェルスタッペンも11位(時速323.6km)とフェラーリを上回った。もちろん、レース中の最高速はトウ(スリップストリーム)をどれだけ活用したかによって大きく変動するため、正確な数字ではないが、1ストップだったハミルトン以外のメルセデスとレッドブル・ホンダの3人がフェラーリよりもいずれも速かったことは事実である。
しかし、これだけを見て、フェラーリの失速がFIAが出した技術指令書によるものだと断定することはできない。なぜなら、フェラーリは各セクターの通過地点ではメルセデス、レッドブル・ホンダを凌ぐ速さをサーキット・オブ・ジ・アメリカで披露していたからだ。以下が各セクターの通過地点の最高速だ(序盤にリタイアしたベッテルを除く)。
■セクター1(ターン7の55m手前)
1位 ルクレール(時速231.5.3km)
2位 ボッタス(時速226km)
3位 アルボン(時速225km)
4位 フェルスタッペン(時速223.4km)
5位 ハミルトン(時速221.4km)
■セクター2(ターン13の65m手前)
1位 ボッタス(時速193.6km)
2位 ルクレール(時速192.2km)
10位 ハミルトン(時速189.3km)
12位 フェルスタッペン(時速187.8km)
15位 アルボン(時速187.1km)
■フィニッシュライン
1位 ルクレール(時速217.3km)
2位 ボッタス(時速213.1km)
5位 アルボン(時速212km)
9位 フェルスタッペン(時速211.1km)
10位 ハミルトン(時速210.3km)
各セクターの通過時のスピードは、いかに直前のコーナーを速く脱出しているかにかかっており、それはすなわち、そのマシンがどれだけダウンフォースをつけているかを表していると考えていい。つまり、アメリカGPでフェラーリはかなりダウンフォースをつけた仕様でレースを戦っていたことになる。そのため、サーキット・オブ・ジ・アメリカでのストレートスピードの失速が、FIAが出した技術指令書の影響があったからだと断定するのは、現時点では早計だろう。
ただし、それをもって、フェラーリが燃料流量でトリックは行なっていないと結論付けるつもりもない。引き続き、推移を注視したい。
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