現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > なぜトヨタはV8エンジン搭載車を残すのか?

ここから本文です

なぜトヨタはV8エンジン搭載車を残すのか?

掲載 更新 14
なぜトヨタはV8エンジン搭載車を残すのか?

トヨタには今なおV8エンジン搭載モデルが多数ラインナップされている。その理由は? 世良耕太がトヨタ製V8の歴史を跡付けつつ考えた。

はじまりはクラウンエイト

これぞ正常進化──新型ジャガーXF試乗記

トヨタが日本初の乗用車用V型8気筒エンジンを市場に投入したのは1964年のことで、2代目「クラウン」(RS40型)をベースに開発された「クラウンエイト」に搭載された。エンジン名称は「V」で、排気量は2.6リッターだった。

1967年には専用のプラットフォームを持つセンチュリーにV型の発展形である3V型(2Vを飛ばしたのは「鈍い」に通じるからだとか)、3.0リッターV8自然吸気エンジンが搭載された。V8エンジンは、高級車、それもショーファードリブンカーに搭載するために開発されたのだった。上質な乗り味とステイタスを保証するためである。

トヨタの第2世代V8エンジンとなるUZ系は1989年、初代レクサス「LS」(日本名トヨタ「セルシオ」)とともに登場した。高級車向けであることに変わりはなかったが、後席に座る人のためよりも、自らステアリング・ホイールを握る人のために開発された。いわゆる、“高級パーソナルカー”向けである。

レクサスLS(セルシオ)が積んだ1UZ-FE型4.0リッターV8自然吸気エンジンは、静粛性の高さと低振動にこだわって開発された。テレビCMでは、シャンペンをなみなみと注いだグラスをボンネットフードの上に積み重ねてエンジンを始動。1滴もこぼれ落ちない様子を伝えてV8エンジンの低振動ぶりをアピールした。

その後、トヨタは排気量を4.6リッターに引き上げた2UZ-FE型を仕立て、「タンドラ」や「セコイア」といった北米向けのピックアップトラックや、フルサイズSUVの「ランドクルーザー」に搭載した。

第3世代となるUR系のV8は21世紀に入ってデビュー。2006年のことで、4代目に移行したレクサスLSとともに登場した。UR系はLSのようなプレミアムサルーンに加えてピックアップトラックやSUV、スポーツセダンにも搭載することを前提に、企画段階から4.6リッターと5.0リッター、そして5.7リッターの排気量を設定し、燃焼設計や生産設備の共用を意識して設計された。

4.6リッターの1UR系はレクサスLSや「ランドクルーザー」、「タンドラ」、5.0リッターの2UR系はレクサス「IS-F」や「LS600h」、5.7リッターの3UR系はレクサス「LX570」や「セコイア」などに設定された。

V6ではなくV8でなければならないわけ

2021年の段階でも、4.6リッター、5.0リッター、5.7リッターのV8エンジンは健在だ。ただしV8は、もはやトヨタ/レクサスの最上級サルーンの主力機ではなくなっている。エンジンをダウンサイジングするのが世界的な流れであるからだ。ロマンを切り捨て、効率やコストの観点で最適なエンジンの諸元を絞り込んでいくと、排気量が大きく、サイズも大きくて重たいV8は生き残りづらくなる。

たとえば2017年に登場した5代目レクサスLSは、V8のかわりに3.5リッターV6エンジンを積む。そして、5.0リッターV12(1GZ-FNE型)を積んでいたセンチュリーは2018年に21年ぶりのモデルチェンジを実施した際、5.0リッターV8(2UR-FSE型)にダウンサイズした。

一方で、2017年に登場したレクサスの新顔、ラグジュアリー2ドアクーペの「LC」は5.0リッターV8エンジンを搭載した仕様を設定している。センチュリーとおなじ5.0リッターV8であるものの2UR-FSE型ではなく2UR-GSE型で、ハイパフォーマンスエンジンの位置づけである。

2UR-GSE型は2UR-FSE型に対して吸排気のバルブリフト量が高められ、排気側には軽量なチタン合金バルブを採用する。高回転化に対応するためだ。このエンジンは組み立て後に1基ずつクランクシャフトを回転させてバランス量を計測したあと、クランクプーリーにウエイトを組み込んで回転バランスを修正している。まわしたときのドライバーとの対話を意識した取り組みだ。

レクサスLCが搭載する2UR-GSE型ユニットは最高出力477ps/7100rpm、最大トルク540Nm/4800rpmを発生する。5.0リッターの排気量はおなじなのに、センチュリーが積む2UR-FSE型に比べて96psも大きな最高出力を発生するのだ。実際に運転してみると、力強いだけでなく官能的である。

出力の目標を達成するだけならターボ過給を選択すればいい。5代目のレクサスLSが4.6リッターV8自然吸気を捨てて3.5リッターV6ツインターボを選択したように、過給ダウンサイジングに走れば済む話だ。

しかし、回転の滑らかさは自然吸気エンジンに敵わないし、大排気量エンジン特有の応答性の高さと力強さを両立させようとした場合、V6では単気筒あたりの容積が大きくなりすぎるので荷が重く、V8が最適解になる。

効率を至上とするならV8が生き残る余地はない。だが、クルマは趣味の対象であり、人生のパートナーでもある。V8自然吸気にはロジックでは説明しきれない魅力がある。その価値は、過給ダウンサイジングがスタンダードな世の中になっても変わらない。

トヨタは自動運転技術を開発するにあたっても「人とクルマが双方をパートナーとして尊重し合い、運転を楽しみ……」と、説明している。きっと、エンジンに対する考え方もおなじなのだろう。V8の価値をきちんと認めているのだ。

だから、これからも生き残っていくはずだ(なくさないように頑張っている人がいるに違いない)。

文・世良耕太

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

F1第22戦水曜会見:レースディレクター交代は「知らなかった」と驚くラッセル。一方で対話を続ける意思も明かす
F1第22戦水曜会見:レースディレクター交代は「知らなかった」と驚くラッセル。一方で対話を続ける意思も明かす
AUTOSPORT web
大人気の輸入車コンパクトSUVが進化! VW改良新型「Tクロス」はどう変わった? 乗って思った「これでいいんだよ」感とは
大人気の輸入車コンパクトSUVが進化! VW改良新型「Tクロス」はどう変わった? 乗って思った「これでいいんだよ」感とは
VAGUE
いすゞ新型「FRマシン」発表! 斬新「スポーティ顔」採用&四駆設定あり! “新開発エンジン”と8速AT搭載の「D-MAX」「MU-X」タイで発売!
いすゞ新型「FRマシン」発表! 斬新「スポーティ顔」採用&四駆設定あり! “新開発エンジン”と8速AT搭載の「D-MAX」「MU-X」タイで発売!
くるまのニュース
トラックの頭と積荷が載ったトレーラーの知られざる接続部! 最後のロックはあえて「手動」にしていた
トラックの頭と積荷が載ったトレーラーの知られざる接続部! 最後のロックはあえて「手動」にしていた
WEB CARTOP
いよいよラリージャパン最終日。勝田貴元の“全開プッシュ”は見られるか?「難しい1年を支えてくれたチームのために仕事をしたい」
いよいよラリージャパン最終日。勝田貴元の“全開プッシュ”は見られるか?「難しい1年を支えてくれたチームのために仕事をしたい」
motorsport.com 日本版
伝説のジャガーXJSが現代に蘇る、660馬力V12スーパーチャージャー搭載『スーパーキャット』誕生
伝説のジャガーXJSが現代に蘇る、660馬力V12スーパーチャージャー搭載『スーパーキャット』誕生
レスポンス
ヒョンデのタナクが総合首位をキープ。トヨタのエバンスとオジェが続く……勝田貴元5番手|WRCラリージャパンDAY3午後
ヒョンデのタナクが総合首位をキープ。トヨタのエバンスとオジェが続く……勝田貴元5番手|WRCラリージャパンDAY3午後
motorsport.com 日本版
岩佐歩夢の気になる去就。「F1に向いているハイブリッド思考」担当の小池エンジニアが話すローソンとの比較
岩佐歩夢の気になる去就。「F1に向いているハイブリッド思考」担当の小池エンジニアが話すローソンとの比較
AUTOSPORT web
F1ラスベガスGP FP2:好調メルセデスのハミルトンが最速。角田は初日10番手、アルピーヌやハースもトップ10入り
F1ラスベガスGP FP2:好調メルセデスのハミルトンが最速。角田は初日10番手、アルピーヌやハースもトップ10入り
AUTOSPORT web
レクサス「FRスポーツカー」がスゴイ! 5リッター「V8」&4.7m級の“美しすぎる”「流麗ボディ」採用! 豪華内装もイイ「LC」とは
レクサス「FRスポーツカー」がスゴイ! 5リッター「V8」&4.7m級の“美しすぎる”「流麗ボディ」採用! 豪華内装もイイ「LC」とは
くるまのニュース
フェルスタッペン、特化仕様のリヤウイングがなく「2戦を棒に振っている」予算の影響で2022年から”割り切り”
フェルスタッペン、特化仕様のリヤウイングがなく「2戦を棒に振っている」予算の影響で2022年から”割り切り”
motorsport.com 日本版
高性能Aクラスの集大成、メルセデスAMG『A45 S ファイナルエディション』が限定発売
高性能Aクラスの集大成、メルセデスAMG『A45 S ファイナルエディション』が限定発売
レスポンス
「いきなりステージから現れたんだ」エバンス、WRCラリージャパン“一般車両乱入事件”を語る。当該SSは安全確保のため中止に
「いきなりステージから現れたんだ」エバンス、WRCラリージャパン“一般車両乱入事件”を語る。当該SSは安全確保のため中止に
motorsport.com 日本版
ラスベガス予選で50G超大クラッシュのコラピント、決勝前に再度メディカルチェックへ。「彼の体調が何より重要」とウイリアムズ
ラスベガス予選で50G超大クラッシュのコラピント、決勝前に再度メディカルチェックへ。「彼の体調が何より重要」とウイリアムズ
motorsport.com 日本版
スバル新型「プレオ」発表に期待の声! “約100万円”の「コスパ最強」軽セダンは実用性バツグン! スバルらしい「水平対向エンジン×MT搭載」を求める声も!
スバル新型「プレオ」発表に期待の声! “約100万円”の「コスパ最強」軽セダンは実用性バツグン! スバルらしい「水平対向エンジン×MT搭載」を求める声も!
くるまのニュース
BMW、ディーゼルエンジン車8車種のリコール…最悪の場合は車両火災に
BMW、ディーゼルエンジン車8車種のリコール…最悪の場合は車両火災に
レスポンス
近藤真彦率いるKONDO RACINGを応援する2名の「リアライズガールズ」はだれ? 王道のコスチュームをカッコ可愛く着こなす2人にも注目です
近藤真彦率いるKONDO RACINGを応援する2名の「リアライズガールズ」はだれ? 王道のコスチュームをカッコ可愛く着こなす2人にも注目です
Auto Messe Web
ラリージャパンでアルピーヌA110RGTに同乗試乗! まったく別モノかと思ったら量産モデルに通じる走りだった
ラリージャパンでアルピーヌA110RGTに同乗試乗! まったく別モノかと思ったら量産モデルに通じる走りだった
WEB CARTOP

みんなのコメント

14件
  • トヨタが残してるのではない、
    世界で一番売れてる電動車であるHVによりCo2総量が稼げるので、
    トヨタだけが販売可能なだけ。
  • そうでは無くて、
    他に燃費が良い車種を豊富に抱えているので、メーカーとしての平均燃費が高止まりし、イメージが悪くならない程度に燃費の悪いクルマをラインナップ出来る。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

509.9575.9万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

48.0890.0万円

中古車を検索
クラウンの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

509.9575.9万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

48.0890.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村