軽トラックのキャビンを広げ、フロントシートの居住性を広めた「スーパー軽トラ」(←当サイトが命名)、このカテゴリーは長く「ダイハツハイゼット ジャンボ」の独擅場だったが、ここにスズキが真っ向勝負を挑むべく、2018年5月16日に発売したのが「スーパーキャリイ」だ。
このスーパーキャリイは、2017年秋の東京モーターショーで初公開された軽トラックのコンセプトカー「キャリイ軽トラいちコンセプト」を商品化したもの。対するハイゼットは、昭和56年発売の6代目から拡張ボディの「ジャンボ」を設定し続けたパイオニア。
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先輩ハイゼット ジャンボと新参者スーパーキャリイの2台をガチで比較し、広々キャビン「スーパー軽トラ」カテゴリー双璧の魅力に迫った。
文:大音安弘 写真:平野学
■拡張されたキャビンが生むメリット
軽トラックのキャビンは、少々窮屈に感じるほど必要最小限のものだ。その理由は明快で、全長3.4mという軽自動車規格の中で最大限の荷台を確保する必要があるから。当然、キャビンよりも荷台が優先となる。
結果、軽トラックの荷台フロア長は、最大2030mmと、どのモデルも同じ寸法を確保している。この積載性のために最も影響を受けているのがドライビングポジションだ。
座面の前後調整のみでシートバックも直立なので、運転姿勢はどうしても制限される。
それを解決するのが、このハイルーフの拡張キャビンなのだ。
キャビンの後方に生まれたスペースは、安全性の高いラゲッジスペースの役目をもつが、シート調整幅の拡大も可能とした。
通常の軽トラと、このスーパー軽トラの最大の違いは、シートリクライニングが可能となること。たったそれだけのことだが、ドライビングポジションの自由度は一気に高まる。
また休憩時の乗員は楽な姿勢を取れるようになるので、快適性にもつながる。
このカテゴリーへのスズキ新規参入の背景には、昨今の軽自動車の性能向上とともに、割り切りのビジネスカーでもある軽トラックにもエアコン、パワステ、オートマが常識となり、活躍の場が広まっていることもあるのだろう。
■スーパーキャリイとハイゼットジャンボそれぞれの特徴
チャレンジャーであるスーパーキャリイの最大のポイントは、充実機能のキャビンにある。
与えられたシートバック部の広さは、長さ250mm×横幅1235mm×高さ920mm(カタログ値)を確保。さらに助手席前倒し機能よるデスクスペース、ハイルーフ化で生まれた頭上に収納ポケットを備えるなど使い勝手を高めた。
一方、ハイゼットジャンボも同じくハイルーフ仕様となるが、シートバックの広さは長さ175mm×横幅1345mm(高さは非公表)とスーパーキャリイに比べると、やや狭い。
ハイゼットジャンボはキャビンの広さ以外はノーマルのハイゼットと変わらず、割り切った仕様となる。ただしキャビンの拡大分を押さえたことで荷台は広い。その寸法は、スーパーキャリィと比較し、荷台長が+170mmの1650mm、荷台フロア長が+15mmの1990mmが確保されている。
両車の特徴をひと言でいえば、「拡張キャビンの機能性を追求したスーパーキャリィ」と「荷台とキャビンのバランスを重視したハイゼットジャンボ」となるだろう。ただどちらもキャビンの底面をくり抜くことで、荷台最大長をできるだけ確保しているところは共通する。
■では乗り比べてみると……
試乗してみると、リクライングシートが生む適正な運転姿勢の恩恵は想像以上に大きい。
シンプルにいえば、軽トラックらしさが薄まり、運転しやすくなった。
この点だけでも、(通常の軽トラではなく)このスーパーな2台を選ぶメリットは十分にある。
日常域での走りの良さでみると、断然ハイゼットだ。
ステアリング角度も乗用車ライクで、乗り心地も悪くない。また頭上に小物入れなどがない代わりに、キャビンの広さが感じられるのもメリットだ。
一方、キャリイの走りは、ひと言でいえばトラック感が強い。まあトラックだからトラック感が強いのは当たり前なのだが、ハイゼットと比べると乗り心地やハンドリングが雑。
ただドア開口部が大きく、乗降性に優れるなど、基本的な部分の作り込みに優れる。
贅沢を言えば、ハイゼットの走りとキャリィの機能性が組み合わされれば、最強となる。そういう意味ではこのスーパー軽トラカテゴリーにも、まだまだ伸びしろがあるのだ。
■ひっくるめて考えると、どっちがいい?
結論として、後発となるスズキスーパーキャリイは、昨今の顧客のニーズを受けて開発したというだけあって、キャビンの使い勝手は抜群だ。
ただハイゼットジャンボのキャビンと荷台のサイズバランス感には、長年の経験が生んだ黄金比のようなものも感じる。
やはり選ぶポイントは、車内にどれだけ荷物を収めたいかが焦点となる。
その点では、やはりラゲッジスペースを重視したスーパーキャリイに分がある、といえそうだ。
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