スープラ勢を押しのけてきたNSX勢
8月8、9日、富士スピードウェイではSUPER GT第2戦となる『たかのこのホテル FUJI GT 300km RACE』が開催された。
無観客でも激熱のバトルが開始! コロナ時代のSUPER GTはスープラがデビューウイン
3週間前に、舞台も同じ富士スピードウェイで開催された開幕戦では今年がデビューシーズンとなるGRスープラがライバルを一蹴、GT500ではトップ5を独占するとともに、No.37 KeePer TOM’S GR Supraの平川亮/ニック・キャシディ組が見事なポールtoウィン。さらに彼らはレース中のベストラップもマークするパーフェクトウィンだった。
加えてGT300に出場していたNo.52 埼玉トヨペットGB GR Supra GTの吉田広樹/川合孝汰組が、こちらもGRスープラのデビューレースウィンを飾っていた。因みに チーム(埼玉トヨペット Green Brave)にとってはこれが嬉しい初優勝で、まさにGRスープラ一色に染め上げられていた感があった。
そんな開幕戦を受けての第2戦だったから、大方のファン、そして関係者も含めて、このレースの最大の焦点は、GRスープラの独走が続くのか、はたまたNSXやGT-Rの反撃はなるのか? という一点に絞られていた。
フロントローを独占したNSX。気になる課題も…
だが、公式予選ではNo.8 ARTA NSX-GTの野尻智紀/福住仁嶺組とNo.17 KEIHIN NSX-GTの塚越広大/ベルトラン・バゲット組、2台のNSXがフロントローを奪い反撃の狼煙を上げて見せた。ポール会見で野尻は「決勝重視のセットでポールを獲れたのは大きい」とコメントしていたが、それは日曜日の決勝レースできっちり証明されることになった。
フロントローから飛び出した2台のNSXは、GRスープラが主体となってポジション争いを続ける3位以下の集団を着実に引き離していったのだ。もっとも、デリケートな性格が影響したか、8号車の後半スティントを担当した野尻が、ピットアウト直後、まだタイヤが温まりきっていない状況で、早めにルーティンピットを行っていた(当然、この時点でタイヤは充分に温まっていた)17号車に猛チャージを掛けられ、ダンロップコーナーの2つ目で痛恨のスピン。勝負権を失ったことは若干皮肉な結果でもあった。
これで楽になった17号車は、その後も快走を続けトップチェッカー。FRにコンバートされたNSXに初優勝をもたらしている。17号車の勝ちっぷりは、まさに横綱相撲。レース終盤になってNo.36 au TOM’S GR Supraの関口雄飛が後方から追い上げてきたが、関口がペースを上げれば塚越もペースを上げ、という展開で付け入るスキを与えなかった。もっともだからといってオールマイティの強さを手に入れたかというと、そうでない部分も散見された。
同じブリヂストンタイヤを装着する3台目のNSX、No.100 RAYBRIG NSX-GTの山本尚貴/牧野任祐組が予選から苦しんでいたのだ。公式練習と公式予選のQ1ではトップタイムをマークしながらもQ2で7位に沈んでしまった。
責任感の強い山本尚貴は「自分の力が足りなかった」とだけコメントしたようだが、トラフィックや急激に低下した路面温度の影響も見逃せない。デリケートな(デリケート過ぎる)性格は、まだ未解決のようだ。
不調を極めたGT-R。解決の兆しは見えたのか…
開幕戦でライバルを一蹴したGRスープラに対して、NSXは予選だけは速いけど決勝で遅くなる、と酷評されていた。さらに、予選でも決勝でも速くない、と揶揄されたGT-R。技術的な話になるがSUPER GTで採用されているNRE(Nippon Racing Engine:トヨタとホンダ、日産が共通の規定で開発した2ℓ直4直噴ターボの競技用エンジン)ではトヨタが最初にプレチャンバーと呼ばれる副燃焼室をトライ。かつてCVCCでもトライしていた本家とも言うべきホンダもこれに続いたが、日産では今シーズンから採用した、らしい。
各メーカーの関係者と話していると、世間話のレベルではヒントも漏らしてくれるのだが、公式なインタビューとなるとなかなか口が堅いのが現状。ともかく、このエンジン開発で最新技術の投入に出遅れた日産は、開幕前の公式テストから厳しい戦いを強いられていた。
開幕戦ではすべてのセッションでトップ6に入れず(公式予選のQ1でNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rの平手晃平が3番手タイムをマークして気を吐いたが…)、レース中のベストラップでもトップから1秒以上も遅れてしまうほどだった。
しかし今回は公式練習でNo.12 カルソニック IMPUL GT-Rの佐々木大樹/平峰一貴組が3番手につけて好調な滑り出しを見せると公式予選でも佐々木組が4番手につけ、直後にNo.23 MOTUL AUTECH GT-Rの松田次生/ロニー・クインタレッリ組が並ぶなど、上昇気流に転じた気配を漂わせていた。
ただし決勝では6番手でゴールした佐々木組が他車との接触で40秒加算のペナルティを科せられポイント圏外に後退してしまった。そして速さではGT-R勢のトップだった彼らも、ベストラップで比べるとNSXの8号車にはコンマ7秒も後れを取っている。そしてミシュランを履く2台の苦戦も気になるところ。コロナ禍で、フランスから空輸してくる関係で厳しい面もあるようだが彼らの復調が待たれるところだ。
次回の第3戦鈴鹿で、その真価が問われるGRスープラ
開幕戦でトップ5を独占と、とびっきり派手なデビューを演じたGRスープラは、今回の第2戦でも2~4位、そして6,7位と安定した強さを見せている。特に2~4位の3台はそれぞれ30kg、22kg、42kgのウェイトを搭載しての成績だけに、その基本のパフォーマンスの高いことが改めて証明された格好だ。
レースに携わっているエンジニアは、もちろん彼らの知識と経験からウェイトとタイムの関係を事細かく分析しているだろうが、エンジニアリングに関しては門外漢のジャーナリストとしては、10kgで約0.1秒。そして50kgを超えたところで係数が上がる、つまり影響がより顕著になる、ということを経験則として理解している。
そう考えるなら、36号車は優勝した17号車よりもレースタイムが速くなり、ベストラップも“ウェイト補正”を掛けてみれば、2台のNSX(8号車と17号車)には後れを取ったものの、それに近いレベルの速さで走ったことになる。そしてトップスピードの差にも驚かされる。富士スピードウェイでは、長いストレートエンドの手前にスピードガンが設置されているから、ウェイトはあまり関係ない、ということかもしれないがGRスープラ勢では何台もが300km/h超えを果たしているのに対してNSXは300km/hの大台には一歩届いていないのだ。
因みにGT-Rは290km/h足らずといったところだったが、このあたりにも現状でのパフォーマンスの優劣が見て取れる。それでは、今後もGRスープラの天下が続くのかといえば、そう判断するのは早計だろう。
開幕戦と今回は富士スピードウェイが舞台だったが、次回は鈴鹿サーキットが舞台となっている。富士は超高速コースで鈴鹿はテクニカルはハイスピードコース、と評する向きもあるが、実は現在の富士は、低速から高速まで、速度域が最も広いサーキットの一つ。だからクルマのセットも予想するほど簡単ではないのだが、鈴鹿は最高速が富士よりは低く、また低速コーナーから中高速コーナーまでバラエティに富んでいるからこれまたセットアップが難しい。
さらにブレーキングとコーナリング、そしてコーナーからの立ち上がり加速。そのすべてにおいてウェイトがボディブローのように効いてくるはずだ。何よりもトムスの2台(36号車=60kg、37号車59kg)はハンディウェイトが50kgを超え、燃料リストリクターが絞られる領域になってくる。こうした厳しい条件で充分なパフォーマンスを発揮できるかどうか、つまり次の鈴鹿ではGRスープラ勢は真価が問われることになる。
GT500は文字通り、市販車のカウルを被せた純レーシングカー
最後になったが、GT500の競技車両(規則)についても少し紹介しておこう。現在、SUPER GTのGT500クラスには国内3メーカー、トヨタのGRスープラと日産のGT-R、そしてホンダのNSXという屈指のスポーツカーが参戦している。ただし3車種ともに、市販車のシルエット(似たシルエット)をしているが、カウルを外してみればカーボンファイバーで成形された専用のモノコックを持ったレース専用マシンであることが分かる。つまり羊の皮を被った狼ならぬ、市販車のカウルを被せた純レーシングカーなのだ。
しかも近年、ドイツを中心に欧州を転戦しているドイツ・ツーリングカー選手権(DTM)とレギュレーションの共通化を図った結果、今シーズンは“クラス1”と呼ばれる規定に、ほぼ準拠したマシンで戦われることになり、3メーカーがそろって新型車輌を投入している。つまり、より正確に言うならGRスープラだけでなくGT-RもNSXも、今年新型がデビューしたというわけだ。
ちなみに、NSXは市販モデルのミッドシップ後輪駆動(MR)からエンジンをフロントに搭載するFRにコンバートされているのはよく知られたところだ。そしてモノコックもサスペンションも、共通部品として3車が同じパーツを使っているから、3車の違いはカウルとエンジンのみ。よりスポーツカールックなGRスープラやNSXに対して2ドアクーペのボディ形状を持つGT-Rが不利と言われる所以でもある。
モノコックとサスペンションが同じなら、シャシー性能としても似たようなものとなるはずだが、セッティングの範囲内でクルマの性格もガラリと変わるようで、そこはエンジニアの腕の見せ所。これにタイヤの開発競争が加わるから話はより複雑化するのだが、最後の最後、ドライバーがパッケージ(クルマとタイヤ)に合わせたドライビングで、いかにそのパッケージが本来持っているパフォーマンスを引き出すのか、という勝負が繰り広げられているのだ。また若手ドライバーの活躍も要注目。ということで2週間後の鈴鹿が待ち遠しい。
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頑張れ日産