現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 岡崎五朗のクルマでいきたい Vol.191 日本企業よ、したたかであれ

ここから本文です

岡崎五朗のクルマでいきたい Vol.191 日本企業よ、したたかであれ

掲載
岡崎五朗のクルマでいきたい Vol.191 日本企業よ、したたかであれ

5月20日に開催された「ビジネスアップデート2025」で、ホンダは新たなパワートレーン戦略を発表した。

2030年のBEV販売目標を20%に引き下げ、関連投資も3兆円削減。2027年からは13車種のハイブリッド新モデルを投入する。現実に即した妥当な判断である。一方で、2040年にグローバルで内燃機関車(HEV含む)を全廃するという長期目標に関しては「一切見直さない」とした。この目標は、2021年の社長就任会見で三部社長が打ち出したもので、背景には「バックキャスト」の考え方がある。2050年にカーボンニュートラルを実現するには、車両の平均保有期間を10年前後と仮定した場合、2040年の時点で新たに販売されるクルマには内燃機関を載せられない、というロジックだ。

編集前記 Vol.30 片岡義男チルドレン

だが、その根拠である「1.5℃目標*」は達成困難だという声が世界的に高まり、2.0℃、あるいは2.5℃を前提に政策の現実化を図る動きが広がっている。もし国際合意が2.0℃となれば、CO₂削減の必要量は1.5℃の80~90%削減から60~70%に緩和され、2.5℃では40~50%に下がる。こうした水準であれば、再生可能燃料や高効率ハイブリッドを組み合わせることで、内燃機関の活用も選択肢として十分成立する。にもかかわらず、内燃機関の全廃を前提とする戦略に固執する姿勢には理念偏重の印象がある。現実に目をむけると、現場ではすでに、静かな構造劣化が進行しつつある。トランスミッションや燃料噴射系などの部品メーカーでは、新規開発の凍結や量産ラインの縮小が相次ぎ、若手の採用も止まりつつある。技能継承の断絶も深刻で、熟練工の退職に伴い、手作業の微調整を必要とする加工ノウハウが失われつつある。さらに、大学や専門学校の研究室も電動関連分野に予算が集中し、内燃機関関連の基礎研究が急速に萎縮している。こうした動きは表面化しにくいが、中長期的には国と企業の競争力をじわじわと浸食していく。

トヨタが採るマルチパスウェイ戦略のように、多様な技術選択肢を残す姿勢は、変化の時代において一つの強さでもある。掌返しとの批判を甘んじて受け止め、理念ではなく現実と向き合う。そして未来へのしたたかな道筋を描くことが、ホンダをはじめとする日本企業に求められていることだ。

※「1.5℃目標」とは、パリ協定で合意された、世界の平均気温上昇を抑えるための目標。産業革命以降の気温上昇幅を、1.5℃に近づける努力をするよう求めている。

Goro Okazaki

1966年生まれ。モータージャーナリスト。青山学院大学理工学部に在学中から執筆活動を開始し、数多くの雑誌やウェブサイト『Carview』などで活躍中。現在、テレビ神奈川にて自動車情報番組 『クルマでいこう!』に出演中。

文:ahead ahead_official
【キャンペーン】第2・4金土日は7円/L引き!ガソリン・軽油をお得に給油!(要マイカー登録&特定情報の入力)

こんな記事も読まれています

「中国版オスプレイ」誕生か!? 実現なら“快挙”だし最強? スペックは超最先端…初飛行も迫る
「中国版オスプレイ」誕生か!? 実現なら“快挙”だし最強? スペックは超最先端…初飛行も迫る
乗りものニュース
ダイハツ「“新”タント」登場! 160万円台で「両側電動スライド」×全車速クルコンまで付いて十分です! 「キング・オブ・ハイト軽」に設定された「リミテッド」特別仕様車の中身とは
ダイハツ「“新”タント」登場! 160万円台で「両側電動スライド」×全車速クルコンまで付いて十分です! 「キング・オブ・ハイト軽」に設定された「リミテッド」特別仕様車の中身とは
くるまのニュース
夏休みに行きたい“旅の目的地”が満載! 「『じゃらん』全国道の駅グランプリ2025」で1位に輝いた“自然・グルメ・遊び”が揃う話題スポットとは
夏休みに行きたい“旅の目的地”が満載! 「『じゃらん』全国道の駅グランプリ2025」で1位に輝いた“自然・グルメ・遊び”が揃う話題スポットとは
VAGUE
「これが“世界最良” 」「二輪史上に輝く不朽の名機」カワサキZ1/Z2【1973】
「これが“世界最良” 」「二輪史上に輝く不朽の名機」カワサキZ1/Z2【1973】
WEBヤングマシン
【キャラバンに設定】日産『SOTOASOBI パッケージ』発売、アウトドア仕様の新提案
【キャラバンに設定】日産『SOTOASOBI パッケージ』発売、アウトドア仕様の新提案
AUTOCAR JAPAN
まさに超未来系! セルスターのデジタルインナーミラー「CS-2000SM」が「用品大賞2025・安全部門」を受賞!
まさに超未来系! セルスターのデジタルインナーミラー「CS-2000SM」が「用品大賞2025・安全部門」を受賞!
ベストカーWeb
ブラックのアクセントを纏ってシックに決めたポルシェ・タイカン/カイエン/カイエン クーペの特別仕様車「ブラックエディション」が日本デビュー
ブラックのアクセントを纏ってシックに決めたポルシェ・タイカン/カイエン/カイエン クーペの特別仕様車「ブラックエディション」が日本デビュー
カー・アンド・ドライバー
【トヨタ】現行アルファードやハリアーなど21車種でリコール メーターパネルに不具合
【トヨタ】現行アルファードやハリアーなど21車種でリコール メーターパネルに不具合
Auto Prove
常磐道谷和原ICから10分!! 「ファンが急増中」の絶品ハンバーガー店「ブルックスタンドグリル」で筑波サーキット観戦後の「食事問題」が解決!? 「アボカドバナナシェイクだけは絶対に飲んでおけ」
常磐道谷和原ICから10分!! 「ファンが急増中」の絶品ハンバーガー店「ブルックスタンドグリル」で筑波サーキット観戦後の「食事問題」が解決!? 「アボカドバナナシェイクだけは絶対に飲んでおけ」
バイクのニュース
より大きく、より高級感があり、よりモダンに生まれ変わった新型「マツダ CX-5」の全情報をお届け!
より大きく、より高級感があり、よりモダンに生まれ変わった新型「マツダ CX-5」の全情報をお届け!
AutoBild Japan
「天空の高速」4車線化へ! 東海北陸道の豪雪山岳区間で“新トンネル”使用開始 怪しく光るトンネル!?
「天空の高速」4車線化へ! 東海北陸道の豪雪山岳区間で“新トンネル”使用開始 怪しく光るトンネル!?
乗りものニュース
【安心・安全・快適機能が充実】日産「キャラバン」一部仕様向上で2025年8月発売、カスタマイズ用グレードも新設定
【安心・安全・快適機能が充実】日産「キャラバン」一部仕様向上で2025年8月発売、カスタマイズ用グレードも新設定
LEVOLANT
レッドブル育成リンドブラッドには「F1で活躍できる十二分の才能がある」10年以上見守ってきたFE王者が太鼓判
レッドブル育成リンドブラッドには「F1で活躍できる十二分の才能がある」10年以上見守ってきたFE王者が太鼓判
AUTOSPORT web
バイクと音楽の危険な関係??「安全運転義務違反」で反則金7000円のリスクも
バイクと音楽の危険な関係??「安全運転義務違反」で反則金7000円のリスクも
バイクのニュース
ハミルトンの影響力は唯一無二! 元ハースF1代表のシュタイナー「チーム以上の存在なのは彼だけ」
ハミルトンの影響力は唯一無二! 元ハースF1代表のシュタイナー「チーム以上の存在なのは彼だけ」
motorsport.com 日本版
[ハーレーダビッドソンカスタム] 厳選・パフォーマンスアップパーツ〈スズキ&アソシエイツ〉
[ハーレーダビッドソンカスタム] 厳選・パフォーマンスアップパーツ〈スズキ&アソシエイツ〉
WEBヤングマシン
真剣さと好奇心に溢れたブラッド・ピットのF1初走行「自分のデータを見たがっていた」とマクラーレンのブラウンが明かす
真剣さと好奇心に溢れたブラッド・ピットのF1初走行「自分のデータを見たがっていた」とマクラーレンのブラウンが明かす
AUTOSPORT web
「歴史上最も美しいデザインの旅客機」どんなもの? フツーとは明らか違うルックス 機齢は“75年超”…復活経て空の祭典に降臨へ
「歴史上最も美しいデザインの旅客機」どんなもの? フツーとは明らか違うルックス 機齢は“75年超”…復活経て空の祭典に降臨へ
乗りものニュース

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村