ピックアップトラックのジープグラデュエーターが2021年11月30日から日本で発売された。また、後部が荷台になっている新型アトレーデッキバン、新型ハイゼットデッキバンも12月20日に発売された。
これらは少し風変わりな外観だ。しかし世の中にはもっと面白い、前半分がワゴンまたはセダン、後部がトラックになっているような珍車があった!?
日本だけでも世界トップ!? 巨人トヨタとその仲間たち 「トヨタ・ダイハツ・日野グループ」【自動車メーカーのビッグバンを探る】
文/伊達軍曹
写真/ダイハツ、フォード、GM、スバル、ステランティス、スズキ、トヨタ
[gallink]
■風変わりな見た目のピックアップトラック
ジープグラディエーター。JL型ラングラーをベースとしたピックアップトラックだ
FCAジャパンから2021年11月30日、ちょっとギョッとするニューモデルが発売された。前から見ると現行型ジープラングラー アンリミテッドそのものなのだが、横から見ると、実はピックアップトラックであることがわかる「ジープグラディエーター」だ。
グラディエーターは、まさに現行型(JL型)ジープラングラーアンリミテッドをベースとした新型車。ボディサイズは全長5600×全幅1930×全高1850mmで、ホイールベースは3490mm。ラングラーアンリミテッドと比べて全長は730mm長く、車高が35mm高く、そしてホイールベースは480mm長いというディメンションになっている。
車体骨格は伝統的なボディ・オン・フレーム構造で、キャビンは5名乗車が可能な4ドアのダブルキャブ。デッキ(荷台)の最大積載量は250kgであるらしい。搭載エンジンは最高出力284psの3.6L、V6自然吸気でトランスミッションは8速ATだ。
超低速走行を可能にする専用ローギア付き「ロックトラックフルタイム4×4システム」等々の超本格的な悪路向けデバイス各種を採用し、最大渡河水深は762mmと発表されている。
ジープグラディエーターを最初に見た際に思わずギョッとしたのは、クルマの前半分があまりにもラングラーアンリミテッドそのものだったからで、その後半部分にデッキ(荷台)がセットされているということに、脳と目が今ひとつ追いつかなかったのだ。
キャビン後部のリアガラスは、スライド機構が備わる。荷台サイズは、荷台長1531mm、荷台幅1137mm(最小)~1442mm(最大)、荷台高861mm、総容量1082立方メートルを備える。機能面では、カバー付きの外部給電機能や照明、3段階で固定可能なテールゲートなど様々なニーズを想定した作り込みが図られている
だがあらためて冷静に見てみれば、ジープグラディエーターは北米における一大人気カテゴリーである「ピックアップトラック」であるに過ぎない。
これが日本でどう使われるのかは知らないが、アメリカでは後部のデッキに狩猟した鹿をドーンと積んだりするのだろう。あとはサーフボードとか。とにかく、ジープ グラディエーターの「使用目的と存在意義」は普通に理解できる。
■日本にもあった前半分ワゴン/セダン/クーペ、後半分ピックアップトラックの世界
アトレーデッキバン。こういった軽商用車(と、それをベースにした車両)は、メーカーがユーザーの要望に応えて生み出されることが多い
だが、世の中にはその使用目的と存在意義が今ひとつよくわからない「前半分が普通のクルマで、後ろ半分が唐突に荷台になっているクルマ」がある。
例えばダイハツの「アトレーデッキバン」。2021年12月、17年ぶりのフルモデルチェンジを受けたダイハツハイゼットの乗用モデルであるアトレーは、モデルチェンジを機に4ナンバー(商用車)化されたわけだが、それと同時に「デッキバン」もラインナップされるようになったのだ。
ダイハツアトレーデッキバンとは、というか昔からあるダイハツハイゼットデッキバンとは、ハイゼットカーゴのCピラー以降のルーフをカットし、本来であれば荷室に相当する箇所を「オープンエアな荷台」とした配送用のモデルだ。
傍から見ると「……なんでわざわざ狭い荷台を作るんだ? 普通の軽バンか、または軽トラを使えばいいのに」と思うわけだが、これが一部の業界では意外と重宝されるボディ形状であるらしい。
もともとは「冷蔵庫を立てた状態で配送したい」という電気屋さんの声に応えて、ダイハツが松下電器産業(現Panasonic)と共同で開発したものだという。
が、デッキバンは「軽トラと違って4人乗って現場へ行ける」「軽バンと違って縦に超絶長いモノも載せられる」「荷室ではなく荷台なので、汚れ物も気兼ねなくデッキ(荷台)に放り込める」など、一部の業界では「これじゃないとイカンのだ! 」というぐらいに重宝するボディタイプであるとのこと。
そんなハイゼットデッキバンが、フルモデルチェンジを機に(4ナンバーになったとはいえ)乗用グレードである「アトレー」にもラインナップされたわけだ。これの使用目的や存在意義も、普通に理解できる。
地元からそう遠くない海で波乗りをするなら「サーフボードの積載」にかなり便利であろうし、釣り人であれば「生臭い釣果やタックル(釣り道具)をとりあえず放り込む場所」として重宝するだろう。荷室と違って“荷台”なので、ホースで水をぶっかければカンタンに洗えるというのも嬉しいポイントである。
ということで、ジープグラディエーターとダイハツアトレーデッキバンについては、最初だけはギョッとしたものの、冷静になれば「あぁ、なるほど」と、すぐに存在意義が理解できた。
荷台には釣り道具や清掃道具など、汚れたものでも気軽に積める点がいい
2022年1月の東京オートサロンで公開されたアトレーデッキバンキャンパーwer.。Cピラー以降は荷台になっている
なんと荷台スペースはあひるのおもちゃが泳ぐお風呂。このお風呂は外で遊んだ時に体をきれいにするだけでなく、災害時に手助けできることがないか? という発想から付けることにしたという
■昼間は土仕事、夜はパーティへ
1957年に登場したフォードランチェロ。当時のカタログには日中はカウボーイの横に、夜はパーティ会場の前にランチェロの姿があった。ランチェロはフェアレーンやファルコン、トリノなどをベースにしており、まさにセダン&クーペとピックアップトラックの使い方のいいとこどりだった
1969年式のシボレーエルカミーノ。まさに写真のような外回りの営業マンにピッタリ。初代はランチェロの発売から2年後の1959年に登場。初代はインパラ、2代目はシェベル、3代目~5代目はマリブ/モンテカルロがベース。この1969年式や1970年式、1982~1987年式あたりのエルカミーノが1990年代、日本でも人気となった
……だが、これはどうなのだろうか?
シボレーエルカミーノやフォードランチェロなどの「前半分は2ドアクーペ的な2ドアのゴージャス系乗用車なのだが、後ろ半分がトラック的な荷台になっている」というモデルだ。
こればっかりは本当によくわからない。なぜわざわざ、2ドアクーペとピックアップトラック的な何かを融合させるのだ?
2ドア車として優雅に使いたいなら後ろの荷台が邪魔であるし、後ろの荷台に(狩猟した鹿を載せるなどして)本格的に活用したいなら、前半分のゴージャスな部分が邪魔になる。「なぜなんだ、エルカミーノまたはランチェロよ! 」と苦悶しながら10分ほど長考してみたら、とりあえずの暫定的な答えは出た。
これは「ドレスダウン趣味」の、ある種の到達点なのだ。
■崩しの美学が生み出したもの
ロングボードを積んだ1969年式エルカミーノSS
1979年式エルカミーノ。ドライバーの若者はジャケットを着ていてヨットに乗るため、道具をガールフレンドと一緒に荷台から積み下ろしている
1982年式エルカミーノのインテリア。豪華なモケットでセダンと同じ内装だ
例えばタキシードを上下ビシッと揃えるのではなく、ボトムスはあえてビンテージ物のデニムとスニーカーにする、みたいな。高度なドレスダウンテクなのである。
タキシード的な上着にジーパンを合わせている人が鉱山で働いているわけではないのと同様に、この種のゴージャス系ピックアップの荷台は、狩猟した鹿や切り倒した木材を載せるためにあるわけではない。たぶん、エルカミーノなどのオーナー各位がそのデッキに汚れモノを載せることは、ほとんどないのだろう。
だが「そこに荷台がある」ということ自体が、ドレスダウンあるいはミスマッチとして絶大な「カッコよさ」を生むのである……という仮説ではいかがだろうか。
1970年式ランチェロ。この時代、トリノウッディワゴンやグラントリノの人気も高かった
1978年式ランチェロ。豪華なクーペやセダン感覚でピックアップの使い方もしたい人にはピッタリだったのだろう
■納豆スパゲッティ?
1977年に登場した初代ブラットはレオーネ2ドアセダンをベースにしたピックアップ。BRATは英語でやんちゃ坊主、悪ガキを意味するが、由来は「Bi-drive Recreational All-terrain Transporter」から来ている。欧州にはスバルMVという名で販売された
この2トーンカラーといい、BRATというロゴといいなんともいえない雰囲気を醸し出している
1981年に登場した2代目スバルブラットはレオーネ2ドアハードトップをベースにしていた
2代目ブラットのデッキ部分。荷台から落ちないように2つのグリップが設けられたシート
シボレーエルカミーノとフォードランチェロはアメリカのクルマだが、日本のメーカーもかつて、エルカミーノ的な「前半分は普通の乗用車で、後ろ半分は荷台」というクルマを作っていた。
例えばスバルブラットである。スバルブラットは、富士重工(現SUBARU)が1970年代から1980年代にかけて北米で販売していた、レオーネベースのピックアップトラック。
いやモノコックボディであるレオーネに荷台を付けたクルマなので「トラック」と呼ぶのはちょっと違うのかもしれないが、いずれにせよピックアップトラックの人気と需要が高いアメリカ市場向けに当時の富士重工が作った「レオーネのピックアップトラック」だ。
これも基本的には「ファッションアイテム」あるいは「レジャーアイテム」として市場に求められたのだろうが、ハードに使うこともできるレオーネがベースだけに、狩猟した鹿などをスバル ブラットの荷台に放り込んでいたアメリカ人青年も、決して少なくはなかったのではないかと推測する。
ブラットが2代作られたのちにいったんは消滅したスバルのピックアップトラックだが、2003年にはレガシィランカスターをピックアップトラック状に仕立てた「スバルBAJA(バハ)」が誕生し、2006年まで北米で販売された。
2代目(BH系)アウトバックをベースに製作された4ドアピックアップトラック。2003年に登場し2006年に販売終了。日本では販売されなかった
バハのエンジンは2.5L水平対向4気筒のEJ25型で、駆動方式はレガシィ ランカスターと同じシンメトリカルAWD。2004年からはターボエンジンも追加されたなどの話を聞くと、「……そのまま屋根付きのランカスター(北米名アウトバック)に乗ってればよかったのでは? 」などと思うわけだが、とにかくアメリカの人というのはピックアップトラックが大好きなのだろう。
イタリアのパスタも日本に入ってくると「納豆スパゲティ」などに変身してしまうのと同様に、スバル車も、北米に行くとピックアップトラックに変身してしまうのだ。
4WDの使い方として今販売していても需要はありそうなのだが……
リアシートを倒すとトランクスルー機構を使って長尺物を積むことができる
■着崩しへの挑戦者は意外と多い
1983年2月に登場したマイティボーイは前半分をセルボ、Bピラー以降を荷台にした2シーターのピックアップ。車名のマイティは英語で力強い、少年や少年っぽいという意味のBOYを組みわせた
荷台長は200mm、最大積載量は200kg
そのほか、日本国内でも販売された「前半分が普通の乗用車だが後ろはアレ」というモデルは、スズキマイティボーイ(1983~1988年)とトヨタbBオープンデッキ(2001~2003年)だろうか。
スズキマイティボーイは2代目セルボのBピラー以降のルーフを切り取ってピックアップトラック的にした軽自動車であり、トヨタ bBオープンデッキは、初代bBの荷室部分の上半分を切り取った感じのモデルだった。
2001年6月に発売されたbBオープンデッキ。トヨタの意気込みとは裏腹に売れずに2003年3月に販売終了
リアウィンドウを跳ね上げ、その下のデッキスルードアを倒すと、キャビンと荷台をつなぐことができる
こちらはマイティボーイの後継として2015年のモーターショーで参考出品された「マイティデッキ」。量産車としては市場に現れなかった
まぁマイティボーイのチャレンジ精神と歴史的な価値は大いに認めたいところであり(CMも好きでした)、bBオープンデッキも、実はかなりコストがかけられたクルマであったそうなのだが。
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みんなのコメント
アメリカじゃ当たり前だけどな?
記事書いたヤツがモノ知らなすぎるだけだろ?