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マクラーレン600LTスパイダーは最も硬派かつ最もナンパなマクラーレンだった

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マクラーレン600LTスパイダーは最も硬派かつ最もナンパなマクラーレンだった

いま最も硬派かつナンパかつお手軽というアンビバレンツなスーパーカーにアリゾナで乗ってきた。そう、マクラーレン 600LTスパイダーだ。

ベースは昨年発売の硬派スポーツ、600LT。コイツは小沢に言わせると、かつてないマクラーレン松竹梅の新“梅の辛口作戦”である。

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ご存じ現在マクラーレンは骨格やエンジンパワー別に、オーバー1億円の松クラス「アルティメットシリーズ」、3000万円以上の竹クラス「スーパーシリーズ」、2000万円以上の梅クラス「スポーツシリーズ」の松竹梅3シリーズに区分けされ、なかでも軽量スパルタンな硬派モデルである「LT」は、かつてスーパーシリーズより上でしか作られていなかった。要は限られたリッチマン向けだったのだ。

そもそもLTの原点はル・マン24時間レースでクラス優勝した1997年型マクラーレン F1 GTRロングテール、つまりLT。具体的には高速レースのル・マンで空力を稼ぐべく、テールエンドを伸ばしたスペシャル仕様を指していた。

よって、以後LTは簡単に作られず、2台目は4年前に登場したスーパーシリーズの675LTで、3台目はその後追加されたオープン仕様の675LTスパイダー。どちらも500台限定で価格も4000万円をラクに越えていた。

ところが昨年登場の600LTは明らかに狙いが違っていた。梅のエントリーモデル、スポーツシリーズ570Sをベースとし、日本正規価格は3000万円切りの2999万円。数も台数限定ではなく、発売から約1年の期間限定。

マクラーレンは明らかに、リーズナブルかつ本格的という新しい“梅の辛口”戦略を取ってきたのだ。その第2弾であり、トータル5台目のLTが今回の600LTスパイダーなのだ。

果たして砂漠とサボテンの地で見た600LTスパイダーは、やっぱりスパルタンだった。時速40kmまで15秒で素早く電動開閉するリトラクタブル・ハードトップを除いては。

それ以外は硬派な600LTと全く変わらない。見た目に分かりやすいのは、排気系を簡略化できる上方排気システムで、直後には耐熱加工が施された大型リアウィングが鎮座。ほとんどロケットかジェット戦闘機のようである。

同時に骨格にはスポーツシリーズのキモたるカーボン製のモノセルIIが使われ、ベースとなる同シリーズの570Sスパイダーより100kg軽くなって車重1297kg。これはライバルたるランボルギーニ・ウラカン・ペルフォルマンテ・スパイダーより210kgも軽く、フェラーリ488スパイダーより123kg軽い。明らかに屋根を空けても剛性が落ちないカーボンモノコックの恩恵を受けている。

また、570Sスパイダーでは570psだったマクラーレンオリジナルの3.8リッター V8ツインターボエンジンは、キャリブレーションのし直しで30馬力アップの600ps。最大トルクも20Nmアップの620Nmとなり、7速SSG(シームレスシフトギアボックス)もシフト時間が縮められている。

軽くしたうえにパワーアップしているから、パフォーマンスアップレベルはとんでもなく、0→100km/h加速は2.9秒。これはライバルより速いのはもちろん、マクラーレンの上級オープン、720Sスパイダーと完全同一。馬力が120psも低いのに、加速が同じとはいかに軽量化が効いているかわかる。

実際、570Sスパイダーに比べ、パーツの23%を新作。内訳は左右で21kg軽量化したカーボン製スーパーライトウェイトシート、17kg軽量化したホイールやチタン製ホイールボルト、10kg強軽量化したアルミサスペンション、4kg軽量化したカーボンブレーキ、12.6kg軽量化したエキゾーストなど。ほかにもハーネス、カーペット、ガラスが軽量化され、ルーフ、フロントフェンダー、サイドシル、リアウィングも軽量カーボンパーツに替えられ、エアコン、オーディオ、ドアポケット、グローブボックスをすべて取り外し。もっとも一部はオーダーで付けることは可能だ。

足回りも570Sスパイダーに比べ、フロントが13%、リアが34%、アンチロールバーもフロントが50%、リアが25%も固められ、ブレーキはスーパーシリーズ用の軽量カーボンタイプを使い、タイヤはセミレーシングのピレリPゼロ・トロフォRの600LT特注。

要は屋根が開くこと以外、クーペと全く同じというのが600LTスパイダーで最も重要な事実なのである。ちなみにテールエンドは570Sスパイダーより47mm長くなっている。

試乗日にホテルから出発、100km以上離れたアリゾナモータースポーツパークに向かったが、まず驚いたのは乗り心地だ。実は去年、600LTのクーペモデルに乗ったがサーキット走行だけで公道を走ったことはなかった。

だから普段はよっぽど固くてスパルタンなのだろうと勝手に決めつけていた。足回りが2~5割程度固められているだけでなく、シートは板の間にざぶとんを敷いた程度のカーボンむき出しタイプで、マクラーレン自体が「LTはサーキットで最高の性能を発揮するために作られた」と証言する硬派野郎。長時間乗ったら腰痛のひとつぐらい出ることは覚悟していた。

ところが硬いは硬いが、意外に疲れない。なんでだ? それどころか以前乗ったよりパワフルでゴージャスな720Sスパイダーより部分的には安定している部分もある。

というか、そこで初めて現代マクラーレンのカーボン骨格たるスーパーシリーズのモノケージIIと、スポーツシリーズのモノセルIIの本質を理解した気がする。スーパーシリーズの方が味わいが全体にヴィヴィッドで繊細なのだ。

ステアリングフィールはもちろん乗り心地も繊細。720Sのほうが敏感に路面に反応し、足が固められた600LTのほうが良い意味でダルにショックを吸収してしまう部分がある。

さらに予想外だったのがスーパーライトウェイトシートの良さ。もちろん腰の角度すら変えられないので絶対的には窮屈。しかし、元々のポジションがいいのか、腰の骨盤をしっかり支えてくれるからか予想以上に疲れない。公道を1時間以上、結構なペースで走ったが腰痛は一切でなかった。逆にヘンに柔らかいシートの方が痛くなった可能性すらある。

同時にエンジンは720Sスパイダーの方が根本的に上質なのも理解した。120psの違いだけじゃない。より高らかに滑らかにトップエンドまで回りきる。ドラマティックさではスーパーシリーズにやはり敵わないのだ。

肝心のオープンエア感覚だが、ずっと屋根を空けて走ったが時速100km近くなると意外に風を巻き込む。とはいえ、だからどうした! だ。走りには全く影響はなく、少々日焼けしそうだな? 程度。天気がいいアメリカではやはり気持ちいい。

いよいよ本番のアリゾナモータースポーツパークだが、コースそのものは短く道幅もタイトだが、逆に3速程度で回れるコーナーも多くてある意味エントリー向き。

まずはパワートレインと足回りをトラックモードに変更。隣にプロドライバーを乗せて走ったが、クーペとの違いは全く感じなかった。どれだけコーナーを攻めてもボディがよれたり、不安定になる気配はなく、まさに実寸大レーシングカート。

ボディがしっかりしているのはもちろん、特注タイヤのピレリトロフォRのグリップが物凄く、晴れた日に十分タイヤを暖めるとリアがスライドしても全然恐くない。絶対スピードは高いので容易にその領域に持ち込めないが、慣れればドリフトコントロールも可能。

600LTはまさにお金持ち向けの走るスポーツギアであり、スパイダーはそれをより華やかに楽しめ、ヘンな話女性のエスコートにも使えそうなモデル。もちろん相手は選ばなければいけないが。

それからお値段3226万8000円は実は安い。ペルフォルマンテ・スパイダーが3800万円超で488スパイダーが3400万円超。しかも600LTは走りのスペシャルパーツ山盛りなのだ。

まさに硬派とナンパが不思議に共存した今までにないスーパースポーツであり、見栄だけではなく、本物のサーキット体験を試したい世界のリッチマン向け。そういう人が実際どれほどいるのか? というマクラーレンの自動車エンスーを睨んだビジネス的挑戦なのである。

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