顔つきの変化によって兄弟車の人気が入れ替わるほど影響を与えた
クルマのモデルサイクルが長期化するなか、モデルサイクルの途中で行うのがマイナーチェンジ。初めから決められていたり(新車導入時に間に合わなかったものを展開)、販売促進のためのテコ入れのために行うなど、理由はさまざまだが、それまでの人気、不人気にかかわらず、マイナーチェンジで見た目や機能、性能が激変、人気が復活、どころか、さらに人気が高まったりしたモデルも少なくない。
前のほうがイケメン? マイナーチェンジで理解しがたい見た目になった国産車トップ5
1)トヨタ・アルファード
その筆頭が、トヨタ・アルファード。現行モデルの3代目のデビューは2015年1月。そのころは兄弟車のヴェルファイアの人気が高かった。ノア&ヴォクシーの関係のように、ヴェルファイアのほうが迫力ある”ワル”な顔つきで、それがもてはやされた時代だったのである。しかし、2017年12月のビッグマイナ―チェンジ以降、様相は一変。アルファードにもヴェルファイアに匹敵するほどの大きく、品格と迫力を備えた顔つきが与えられた結果、人気は逆転。2020年1-6月の新車販売台数を見ても、アルファードの10位、3万6597台に対して、ヴェルファイアは33位の1万697台に沈んでいるのだ。
そのビッグマイナーチェンジでは第二世代のトヨタ・セーフティセンスを全車に標準装備。ガソリン車のトップグレードに積まれる3.5リッターV6エンジン、301馬力、36.8kg-mの新ユニットを国内初搭載し、VIPユーザーの要望に応えてマイナーチェンジ前にはなかった、乗り心地重視の専用サスペンションを採用した最上級のエグゼクティブラウンジのエアロ仕様を追加するなどの大改良が行われている。
さらに走行面でも進化し、全車のダンパーに微低速から高減衰を出せる新バルブを採用。操縦安定性を高めフラつきやビリビリした振動を低減するとともに、Aピラー、スライドドアまわりに構造接着剤を追加して剛性を高め、トヨタ最上級ミニバンにふさわしい静粛性を確保するためダッシュボード、フェンダーライナー、スライドドアステップ内部などに吸音材を張りめぐらし、ドアミラーベースの形状を変更するなどして約4%の静粛性向上(具体的には1-3列目席の会話が容易になった)を果たしている。
つまり、ヴェファイアとともに、とくにアルファードの商品力が高まったのである。リセールバリューの高さとともに、人気が出ないわけがないのが、ビッグマイナーチェンジ後のアルファードなのである。
2)トヨタ・プリウス(4代目)
続いてもトヨタ車だが、2015年にデビューした4代目プリウスは、ハイブリッド性能を大きく高め、走行性能、それまでのウィークポイントのひとつだった乗り心地面でも大きく進化したのだが、未来感を強めたというか、エグさのあるエクステリアデザインについては世界的に大歓迎……とはいかなかった。それでも販売台数において絶対王者だったことには変わりはないが……。
そこでデビューから約3年後の2018年にエクステリアデザインを変更。より親しみやすいデザインとしたのである。また、つながるクルマの先駆けとして、専用通信機DCMを全車に標準装備し、T-Connectサービスの3年間の無償提供を付与。T-コネクトナビによるオペレーターサービスやSOSコールなどにも対応。商品力を高めている。プリウス人気が再燃したことは言うまでもない。2018年にはノート、アクア、シエンタ、カローラの追撃もあったのだが、販売台数そのものよりも、違和感のないプリウスになったのは、歓迎すべきことだろう。
マイナーチェンジで使い勝手や装備が飛躍的に向上したものも
3)日産ノート
日産ノートもマイナーチェンジで劇的に販売台数を伸ばし、人気を得たモデルの象徴と言っていい。現行型、2代目ノートのデビューは2012年と、もう8年も前。しかしそれでも新車販売台数のトップにランキングされ続けているのは、かなりのレアケースと言っていい。そのきっかけは、もちろん、2016年のビッグマイナーチェンジでシリーズ式ハイブリッドのe-Powerモデルを加えたことだ。
その後もたび重なるマイナーチェンジが施され、人気を維持。ワンペダルによる、ブレーキを踏まなくても停止状態までもっていける機能など、その作動に好みは分かれるものの、古い設計のノートに新たな生命が与えられたことは間違いなく、それが多くのユーザーに受け入れられというわけだ。なにしろ2019年1-3月期では、乗用車販売台数No.1の座に輝いているのである。
4)トヨタ・シエンタ
同じように、マイナーチェンジでバカ売れしたクルマがある。それはトヨタ・シエンタ。なんと2019年8-9月には、ノートやプリウスを退けて乗用車販売台数No.1を記録。これはトヨタとしても想定外のことだったはずだ。デビューは2015年。ホンダ・フリードとしのぎを削るライバル合戦を繰り広げていたが、2018年9月にビッグマイナーチェンジ。都市を泳ぐ熱帯魚のようだった派手なボディのトリムカラーが廃止されたのと同時に、それまではフリードにしかなかった(フリード+)2列シートモデルのFUNBASEを追加。
シックなボディカラーも加わり、クロスオーバーSUVブームの後押しもあり、大流行していたアウトドアや車中泊にもぴったりな大容量コンパクトワゴンとして一気にブレーク。現在ではヤリスやライズに押されているものの、人気は安定。ここだけの話、2列目席のかけ心地はシートアレンジ性の違いもあってフレーム、クッションが異なり、3列シートモデルよりもよかったりする!!
5)三菱デリカD:5
最後に紹介するのは、芸歴、じゃなかった、デビューから13年経っても作り続けられているロングセラーモデルの三菱デリカD:5だ。なにしろ発売開始は2007年。アウトランダーをベースにミニバン化されたモデルであり、しかし本格AWD機能、余裕ある最低地上高と3列シートをコラボした、世界での例のない走破性最強ミニバンなのである。
そんなデリカD:5が、トヨタ、日産、ホンダのミニバンたちに、販売台数で敵うはずもないのだが、いまでも売れ続けている大きな理由が、2019年2月のD:5最大のマイナーチェンジ。エクステリアに三菱最新の顔つきとなるダイナミックシールドが採用されるとともに、マイナーチェンジモデルは2.2リッタークリーンディーゼルモデルに統一。エンジンのトルクアップ、8速AT、新サスペンション、フロントウインドウの遮音ガラス、先進安全予防技術のe-Assistをついに採用するなど、中身はフルモデルチェンジ版と言えるほどの進化を遂げたのである。
走っても、マイナーチェンジ前のモデルとは別物。ステップ式8速AT、トルクアップしたエンジンの効果もあって、加速は文句なくスムースだ。とくに変速の速さ、スムースさは前型の6速ATとは大きく違う。前型とは絶対的加速性能に大きな差はないのだが、感覚的に「速い」「軽い」。たとえばタイトなコーナーが連続する山道を走行しても、ステアリングは正確で応答遅れなく、思いのままに進路を変えてくれる。コーナリング時のトレース性、安定感は、重心がずいぶん下がったかのような錯覚を覚えさせてくれるほど。
タイヤの接地感がつかみやすくなったため、自信を持ってカーブに飛び込め、グラリとせず、リヤがねばりにねばるコーナリングを軽快に披露してくれるのだから驚きを隠せない。このあたりは新エンジンの豊かなトルク、パワーステアリングのスムースさ、新チューニングのサスペンションに加え、フロントまわりの剛性アップも貢献しているはずだ。これでサマータイヤでなく、M&Sタイヤなのだから、びっくりである。
しかも、前型ではステアリングを取られるような悪路(今回のシーンでは路面の大きな突起、穴の走破)に遭遇しても、何事もないようにサラリと走り抜けてしまうのだ。オールロード性能の高さもまた、確実に向上している。そうした大いなる進化が、デビュー13年を経ても、”マニア”人気を維持し続けている理由だろう。月500-600台の販売台数も、デリカD:5としては立派、と断言したい。
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