渋滞予測のプロ
渋滞予報士という言葉を聞いたことはあるだろうか。NEXCO東日本における渋滞予測に従事する担当者の愛称であり、NEXCO中日本では「高速道路ドライブアドバイザー」、NEXCO西日本では「渋滞予測士」という愛称で知られている。
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各高速道路会社の地域特性を熟知した
「渋滞予測のプロ」
がその役割を担っており、渋滞の予測や渋滞対策の立案・検証などが主な仕事だ。渋滞予報士は過去3年分のデータを基に、渋滞時間のピークや長さを分析し予想。
・曜日
・天候
・高速道路の割引サービスの変化
といった要素も考慮しつつ、より近い状況をシミュレーションできると思われる年を3年分抽出し予測するのである。
膨大な情報を精査・分析し渋滞予測を立てるため、大型連休などは通常より長い半年以上の期間をかけるという。多くの時間と労力を割かなくても、人工知能(AI)に予測させればよさそうなものだが、渋滞予報士は今の時代に必要なのだろうか。
ペースメーカー効果で渋滞64%減少
渋滞予報士のAI時代における必要性について考えるにあたり、まずは渋滞予測について正しく理解しておきたい。渋滞予測の目的は渋滞を予測することに加え、予測した渋滞を周知し、利用者に渋滞を回避してもらって予測した渋滞を緩和させることにある。
渋滞予報士はそのための「広告塔」としての役割も担っており、情報周知のためにメディアに登場することもある。渋滞回避を促し、ドライバーが安全に走行できるようサポートするのだ。さらに、渋滞を緩和させる対策を企画したりもする。
実際に、渋滞発生ポイントである東京湾アクアラインの川崎浮島ジャンクション付近の上り坂を例に挙げてみよう。アクアトンネル内で勾配が変化し、速度低下による渋滞が発生した際、渋滞予報士は企画・検討に携わり「ペースメーカーライト」を設置。トンネル内でライトが進行方向に流れるように点滅し、運転手はライトの流れる速度に合わせようとすることで、速度回復を図った。
「東京湾アクアラインにおけるペースメーカーライトの運用と効果検証について」と題する論文によれば、ピーク15分間の交通流率は平均値で3.2%増加。さらに渋滞時所要時間は5分程度短縮されたという。平均日交通量が5%ほど増加したにも関わらず、渋滞量が64%減少し、路線全体の渋滞量も21%減少する結果となり、渋滞緩和に一定の効果があることを確認できたと報告している。
このように、渋滞予報士が行う広範な渋滞予測の仕事をAIがすべて担うのは難しいといえるだろう。つまり、渋滞予報士は必要なのだ。
人口解析で数時間先予測実現
とはいえ、AIが渋滞予測に活用されているのも事実。NEXCO東日本とNTTドコモは「AI渋滞予知」というサービスを一部路線で展開。NTTドコモのAI技術で人口と渋滞の関係性を学習しパターン化した渋滞予知モデルを作成し、当日の人口分布を元に渋滞予知モデルが渋滞を予測する仕組みだ。渋滞予測の精度も高く、人口に着目した予測は数時間先の予測を可能にしている。
AI渋滞予知では予測される交通情報をドライバーに配信し、交通分散を促して渋滞緩和を狙っている。ちなみに、東京湾アクアラインもAI渋滞予知サービスが提供されている路線だ。NEXCO東日本が2019年に実施したアンケートによれば、アクアライン利用者の
「92.7%」
がAI渋滞予知に大変満足もしくは満足していると回答した。また75.6%の人が、AI渋滞予知閲覧後に利用する時間やルートを変更したと回答しており、行動変容効果があったことがわかる。
ただ、AI渋滞予知は今のところ約12時間先までの予測に留まっている。1か月以上先の予測が可能な渋滞予報士の経験や知見に基づく予測とうまく棲み分けされているのだ。また渋滞予知モデルの開発にもNEXCO東日本の持つ渋滞実績のデータや交通流に関する技術的知見が利用されており、AIが渋滞予報士を淘汰するとまではいかないようである。
専門知識が支える渋滞対策
AIによる渋滞予測は各所で開発が進められている。京都大学と住友電工システムソリューションの研究グループは、警視庁のビッグデータを学習させ、都内幹線道路の1時間後の渋滞長を40m以下の誤差で予測するシステムを開発。
またジオテクノロジーズ(東京都文京区)は、最新のAI技術である深層学習をビッグデータと組み合わせ、一般道でも5分単位で予測できるAI渋滞予測モデルの開発に成功したと発表した。
いよいよ、AI時代に渋滞予報士不要論が持ち上がりそうな状況だが、やはり渋滞予報士は必要であることには変わりない。AIが勝手に予測してくれるように感じられるものの、どのシステムもビッグデータに加え、
・交通工学
・土木工学
といったいわゆる技術的知見をAIに学習させてシステムを構築している。この技術的知見こそが渋滞予報士が持っている専門知識なのだ。
過去のデータを分析・比較して渋滞予測を行う渋滞予報士。AIの発達とともにその存在意義が問われるかと思いきや、かえって
「渋滞予報士の奥深さ」
を知る機会になった。専門知識や経験を活かし渋滞を予測するだけでなく、渋滞を緩和するために対策を企画したり、情報発信の広告塔までこなす多才ぶりには頭が下がる。
ちなみに渋滞予測のプロたちは、2024年時点で日本に13人しかいないとされている。彼らの働きによって、快適な運転が実現できていることを改めて認識しなければならないだろう。(喜多崇由(フリーライター))
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