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回顧録 スモールクーペ対決 ミニ・クーペJCWとライバルたち 前編

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回顧録 スモールクーペ対決 ミニ・クーペJCWとライバルたち 前編

もくじ

ー コンパクトスポーツを比較
ー TTやロードスターも参戦
ー 主役はミニ・クーペJCW
ー 剛性の高いボディ
ー TTやシロッコの際立つ乗り心地

ミニ・ジョン・クーパー・ワークス WLTP対応、2019年型JCWが英国発表

コンパクトスポーツを比較

(AUTOCAR JAPAN誌105号の再録)

自動車業界の基準でいう「そこそこの価格」でクーペを買おうとすると選択肢が限られてしまう、という時代が最近まで続いてきた。たとえばフォード・ピューマやトヨタ・セリカといったクーペはそこに当てはまっていたが、もう消え去ってしまった。

BMWの1シリーズは欧州なら約300万円、日本でも395万円からの価格でまだ生き残っているが、しばしば売れ残ることがあった。結果、多くのメーカーは、生産台数の少ないコンパクトなスポーツカーで利益を上げるのはむずかしいと悟ってしまい、クーペよりホットハッチがより安全な投資対象になったのである。

しかし、現在の状況は明らかに、そして幸いなことに、まったく違っている。そんなうれしい一例がシロッコだ。VWはゴルフ/イオスのコンポーネンツを注意深く活用し、ポルトガル工場の空いていた生産ラインを使って、スモールクーペの市場に参入してきた。

日本仕様なら160psのTSIが350万円、今回のテスト車である2.0ℓTSIを積むGTグレードでも邦貨換算で約400万円だ。これがよくできたクルマなのはわかっていたから、ほぼ同等なコンセプトで造られたプジョーRCZはテストに加える必要はないと考えた。

TTやロードスターも参戦

その代わりに連れ出したのが、アウディTTの2.0TFSIである。世界的に見ればTTの販売数はこれ以上のグレードが大半を占めており、おかげでアウディにとって利益の出るモデルになっているわけだが、211psのこのモデルのプライスタグは440万円である。

欧州仕様にはそれより安い160ps仕様の1.8TFSIもあるが、今回の比較テストにはまさに力不足だろう。

格納式ハードトップを備えたマツダ・ロードスターRHTもまた2.0ℓで170psにすぎないが、このクルマは後輪駆動という生来の優位性を持ち、しかも運動性能を高める工夫を連綿と積み重ねてきた。しかも今回のテスト車は286万円(欧州では邦貨換算約400万円)のRSで、リミテッドスリップデフさえ標準装備した一台だ。

この3台で、われわれはこれからロンドン南西のサリーにあるいつものテストコースを経て、サウザンプトン郊外のニューフォレストへと向かう。なぜ? 理由はミニ・クーペだ。まだ本当の実力はよくわからないが、わたしの中ではその存在感がだんだん大きくなってきているし、そういうクルマがあるというだけでなんだか元気が出てくる。

主役はミニ・クーペJCW

過去の断片を寄せ集めた現在のミニというブランドが製品ラインナップを拡大してきたなかで、このクーペは間違いなく、もっとも皮肉な1台だろう。何しろオリジナル・ミニの精神にはまったくふさわしくない。

かつてのミニはクーパーSでさえ、あえてスポーツカーにはしなかったのに、このミニ・クーペはルーフを風変わりなデザインに変え、後席を取り払って、スポーツカーとして生まれてきたのだ。

インターネットを検索してわかったのだが、いわゆる「正しい」エンスージアストとおぼしき人たちは、ミニ・クーペがあまりお好みではないらしい。しかし、このテストの結果次第では、そんな風評を乗り越えられるかもしれない。BMWは批判を覚悟でこれを売ろうとしているはずだし、ドライブして価格の半分の満足感しか得られないミニもあるが、この新型はどうなのか? そこをこれから検証していこう。

テストに借り出したのは、最上級グレードとなる211psエンジンを搭載したジョン・クーパー・ワークス(JCW)である。何もオプションを選択しない状態での価格は、ハッチバックのJCWより36万円高い426万円だ。

剛性の高いボディ

クーペのルーフがもたらす最大の潜在的恩恵はボディ剛性の向上である(ちなみにボディシェルはハッチバックより25kg軽くなっている)。となれば、ハッチバックJCWと同じサスペンションが、よりうまく働いてくれるに違いない。

スプリングは驚くほど硬いが、それゆえミニ・クーペのボディ剛性を感じ取りやすい。最近乗ったクルマのなかでは、BMW M3 GTSあたりと似た感覚である。剛性の低いクルマはルームミラーの振動やステアリングのキックバックでわかる。

つまり逆にいえば、不要な振動や介在物の存在を感じさせず、路面の感覚をドライバーに伝えてくれるのが剛性の高いボディなのだ。M3 GTSもミニ・クーペもそうだ。

だからといってこんなに乗り心地を硬くしなくてもよさそうなものだが、ミニ・クーペは本当に硬い。誰がこんな硬さを求めているのか不思議でならない。おかげでボディの落ち着きは同セグメントのベンチマークであるルノー・ルーテシア・カップを比較に持ち出しても最高レベルだが、反面、路面の凹凸を踏み越えるときのショックはまるでおよばず最悪である。

TTやシロッコの際立つ乗り心地

今回の比較テストの4台のなかで、ロンドンから郊外へと向かう荒れた路面でベストな乗り心地だったのは、TTとシロッコの2台だ。ミニ・クーペはそれに次ぐ。

この2台はミニよりもコンプライアンスをたっぷり取ったサスペンションのセッティングで、路面の凹凸をうまく吸収してくれる(両車のタイヤがミニと違ってランフラットではないことも考慮すべきだろう)。また、シロッコの乗り味はTTよりさらに洗練されており、アーバンクルーザーとして最適だ。

ロードスターは? まず感じるのは、もはや少し古びてきたということだ。もともとオープンボディだから仕方ないのだが、ミニではボディ剛性の高さを感じる場面で、ロードスターは弱点をさらけ出してしまう。

格納式ハードットップを開けていても閉じていてもボディのわずかな震えを気づかされるし、ミニより多少は乗り心地がいいとはいえ、そのぶんボディの揺動が大きい。

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