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2030年に電動化? 新型フェアレディZはなぜV6ターボの純エンジン車で発売するのか

掲載 更新 12
2030年に電動化? 新型フェアレディZはなぜV6ターボの純エンジン車で発売するのか

 2021年8月18日、日産のスポーツカー、新型フェアレディZの市販モデルが米国にて世界初公開された。自動車ファンにとっては待望のニューモデルといえるが、いっぽうで気になるのは、電動化が叫ばれるなか、V6ターボという純エンジンを搭載すること。

 なぜ純エンジン車として発売されるのか。そして将来的な電動化の道筋はどうなるのか? 日本を代表するスポーツカーの心臓部を巡る事情に迫る。

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文/高根英幸、写真/NISSAN

【画像ギャラリー】純エンジン搭載が話題の新型フェアレディZ北米仕様の内外装をみる

新型Zに搭載されるエンジンの詳細は?

2021年8月18日、新型フェアレディZ 北米仕様が世界初披露された

 ついに発表された新型フェアレディZ。スタイリングやインテリアは、すでにプロトタイプとして発表されていたから驚きはないが、そのパワーユニットにはちょっと驚いたヒトも多かったのではないだろうか。

 何しろ電動化が急がれる自動車業界において、3Lツインターボはちょっとイマドキのパワーユニットとは思えないほど、排気量が大きくパワフルなものだ。

 それだけに、さぞかし環境性能を追求したパワーユニットに仕上がっているのだろう、と想像してしまうヒトも多いだろう。

 日産が長年研究してきて、近年ついに実用化したVC(可変圧縮)を採用したり、気筒休止など、多気筒大排気量を効率良く利用する技術が満載であれば、この3L、V6ターボも納得がいくというものだ。

 しかし実際には、現行スカイラインの限定モデル、400Rとほぼ同一のスペック。異なるのは吸気系にリサーキュレーティングバルブを採用していることだ。

 シフトアップの際にスロットルが閉じることによってタービンのコンプレッサーホイールに対して吸気側から圧力が高まると、タービンの回転をドロップさせる抵抗になってしまう。

 リサーキュレーティングバルブは、スロットルバルブが閉じることで吸気系の圧力が高まると吸気系の圧力をタービンの上流へと逃がすもので、チューニングパーツではブローオフバルブと呼ばれるものと、ほぼ同じ機能をもつものだ。

 違うのは、ブローオフは圧力を外気に放出することで独特のサウンドを放つのに対し、リサーキュレーティングバルブ(VW系はディバーターバルブと呼ぶ)は上流の吸気系へと放出することでコンプレッサーホイールを回す力へと利用すること。

 これはVW ゴルフGTIやアウディ S3などが得意技としてきたもので、ジェントルな雰囲気のまま、スポーツ感溢れる走りを実現するために必要なデバイスとも言えるものだ。

なぜ新型Zは純エンジン車としてデビュー?

新型フェアレディZには新開発の3L、V6ツインターボエンジンが搭載される。吸気系にリサーキュレーティングバルブを採用(最高出力405ps、最大トルク475Nm/5600rpm)

 ところでどうして、新型Zはこれほどまでに男気のあるパワーユニットを搭載することになったのかというと、そもそも電動化が大きく注目されるようになったのは、ここ1~2年のことだ。

 つまり、すでにプロトタイプを発表していた新型Zは、基本構成がほぼ完成していた時期にあたる。

 そしてZの主戦場は北米だ。V8エンジンを搭載したアメ車などが人気を博してきたマーケットだけに、大排気量の人気が根強いという土壌がある地域なのである。

 米国でも排ガス規制(=燃費規制)が厳しいのは現時点ではカリフォルニア州だけだから、その他の地域ではそれほど燃費が販売に影響を受けることはないのが現状だ。

 実際、現在の北米市場で売れているのは、SUVやSUT(スポーツ・ユーティリティ・トラック)を含めた大排気量車であり、自動車メーカーはそうしたクルマで利益を上げている。

 売れている限りはそのカテゴリーに力を入れるのは当然のことで、薄利多売の大衆車とは異なるプロセスで自動車メーカーは収益を上げるのだ。

 Zのようなスポーツカーは大きな販売台数が見込めないぶん、全体としては環境負荷は小さく、リーフやノートなどのエコカーが総量規制では貢献するために、現時点ではそれほど問題となることはなさそうだ。

フェアレディZが電動化されるとしたらどんなレイアウトになる?

2019年11月に発売されたマスタング マッハE。ピュアEVであり、マスタング車における高性能モデルの称号「マッハ」を持つモデル

 しかし、スポーツカーであるZとて、いつまでも大排気量の純エンジン車として作り続けられることはない。いずれ電動化か絶版かの判断を迫られることになるだろう。

 それも北米市場での人気ぶり次第ということになる。例えば次世代フェアレディZがフォードのマッハEのようにEVとなったとしても、それ自体は何ら不思議ではないことだ。

 問題は、電動化したフェアレディZが人気を得て、ある程度の販売台数が見込めなければ、開発費も回収できないから、販売する意味がなくなってしまう(それでもブランドイメージとして意義はあるのかもしれないが)ことだ。

 それを踏まえてフェアレディZが電動化するとしたら、どういうレイアウトになるのか予測してみよう。

 スポーツカーとしてリア駆動にこだわるのであれば、フロントタイヤにモーターを追加する、それも補助的なものになるだろう。この場合はインホイールモーターでフロントタイヤを駆動するパラレルハイブリッドとするのが合理的じゃないだろうか。

 エンジンによるリア駆動に加え、さらにモーターでリアタイヤを駆動するレイアウトもあり得る。普段は加速時にモーターが大きくアシストして燃費を高め、豪快に加速するようなシーンではエンジンとモーターが力を合わせてドリフト走行もできるような、パフォーマンスを発揮することもできるだろう。

 そうなった場合、エンジンは3Lも排気量は要らず、2Lターボにモーターという組み合せのハイブリッドでも、充分に速いスポーツカーに仕立て上げることはできるハズだ(スカイラインハイブリッドが良い例だ)。

 いやマッハEがマーケットに定着すれば、ZもEV化への道を辿るかもしれない。すべては市場が決めること、と言ってもいい。

 いくら画期的で魅力的なクルマであっても、マーケットやリリースのタイミングを見誤れば、ヒット作とならないことは、これまでの歴史で証明されているではないか。

初代Zを彷彿させる新型Zのパッケージ

新型フェアレディZは、先代モデルから正常進化しつつも、1969年発売された初代フェアレディZのコンセプトを受け継いだモデルだ

 今回の新型Z、シャーシは先代も使ったFR-Lプラットフォームをリファインしたもので、意地の悪い言い方をすれば焼き直しといったものだ。

 しかしFRのスポーツカーということを考えた時、フロント:ダブルウィッシュボーン/リア:マルチリンクというサスペンションはほぼベストと言えるものであり、成熟の域に達した技術だけに完成度が高く、細部の煮詰めと電子制御の高度化で、充分に要求した性能を実現できているだろう。

 この内容で440万円という米国での価格は、ドイツ車やアメ車と比べて、かなりリーズナブルと言える。それはパワーユニットもプラットフォームも有り物を上手く利用しているからこそ、実現できたものだ。

 思えば初代フェアレディZのS30Zは、セドリック/グロリアやスカイラインなど既存車種のコンポーネンツを利用して、安く充分に高性能なスポーツカーを作り上げることで北米市場で大ヒットとなったクルマだった。

 新しいZは、Z33、34からの正常進化とも呼べる構成だが、その成り立ちはS30Zに近付いた、まさに初代Zの再来と言っても良いコンセプトから生まれたモデルだ。

 今回のモデルが2030年近くまで作られ続けて、次のモデルから電動化となるか、それともビッグマイナーチェンジで電動化を果たすかはまだわからない。

 新型Zの販売台数の推移をみて、モデルチェンジのタイミングを日産が判断することになるだろうし、2035年もスポーツカーを作り続けることができるかは、まったく見通せない。

 しかしZが存続し続けるのであれば、2030年あるいは35年には電動化を果たしていることは確実だ。それがEVになるのかハイブリッドになるのかも現時点では予測不可能。今は、新しいZをどうやって手に入れるか算段する方が、建設的ではないだろうか。

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みんなのコメント

12件
  • エンジンを出せる期間は限られるんだから
    出した方がいいだろう。
    EVなんて急がなくてもいずれ選択するしかなくなる。
    排ガス環境規制なんてなければ誰もEVや水素なんか作らず
    ガソリン車をバンバン作り、消費者だって喜んで買うよ。
  • なぜ?電動でないのか?って記事のほうが???です。v6 ツインターボで当然ですよ!
    電動化なんて、無理に急ぐ事では無いと、思いますが!
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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