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日産R35GT-R開発ドライバーが独自に追い求めるGT-Rの理想の姿とは

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日産R35GT-R開発ドライバーが独自に追い求めるGT-Rの理想の姿とは

グループAドライバーの鈴木利男氏が手掛けるGT-R

 グループAではGT-Rを駆り、フォーミュラ・ニッポンやル・マン24時間レースなど幅広いカテゴリーに参戦。『ノルドリンク』の鈴木利男代表は華やかなモータースポーツと共に「R35GT-R開発ドライバー」という裏方の仕事も見事にこなす。鈴木代表の愛車でありデモカーでもある2007年式のR35GT-Rは独自の進化を続けて、理想を追い求めている。クルマの成り立ちをこと細かく把握している人物が携わっているため、クルマの得意分野を伸ばし、欠点を上手に補う。よりハイレベルに磨き上げられたR35GT-Rと鈴木代表の関係に迫ってみたい。

「R32GT-Rの皮を被ったR35」生みの親! 破天荒すぎる「伝説のチューナー」が語る「R」の魅力とその半生

(初出:GT-R Magazine165号)

R32時代から高性能ゆえの危険性を危惧していた

 サーキットでクルマと極限状態で接することを生業としてきた鈴木利男代表。GT-Rに対しても同様に対峙してきた。しかもR35に関して言えば、レーシングドライバーとしての鋭い感性を買われて、真っ新な状態から開発に携わったという、選び抜かれた人物なのはご存じの通りだ。

 現在はGT-Rの専門ショップである『ノルドリンク』を立ち上げて活動している。そんな鈴木代表はプライベートではどのようにGT-Rと向き合ってきたのだろうか。

「私のGT-R初体験はR32です。当時はNISMOと契約していたのでR32だけでなく、Z32も支給されて交互に乗って楽しんでいました。とくにR32は市販車としてはズバ抜けて高い走行性能を発揮していたので痛快でした。一方で万が一限界を超えてしまったユーザーはどうなるだろう、という心配もありました。何を隠そう自分自身も公道で一線を超えたら、コントロールする絶対的な自信はありませんでしたからね」 

 だからすぐに鈴木代表はNISMOにドライビングテクニックのレクチャーを提案した。一人でも多くのユーザーにクルマを操るための高度な技術力を身につけてもらって、危険な状況に陥ったとしても回避できるようにする。そんな体験スクールの開講を熱望したが、残念ながら実現には至らなかった。

 30年以上経った現在、ノルドリンクを通して鈴木代表は当時の要望を具現化。サーキットでの走行会を開催し、ユーザーに高速走行時におけるドライビングの極意を伝えている。やっと想いが叶った。

R35の開発にゼロから携わり隅々まで知り尽くす

「ドライビングばかりでなく、メンテナンスについてもアドバイスしています。こちらはユーザーではなくディーラーのメカニックが対象です」

 R35GT-Rはそれまでの国産車には類を見ない高いポテンシャルを兼ね備えている。だからサーキット走行後のケアはディーラーのメカニックには荷が重い。今までにブレーキを酷使して、パッドやローターが極端に熱を帯びた状態などは見たこともないはずだ。サーキットを走れば当然の現象で十分に回復できる状態でも、初めてだと異常と感じて交換してしまう。そんな誤った判断をしないように適切に指南する。この取り組みはR35の生みの親で、GT-Rの開発責任者であった水野和敏氏に懇願されたそうだ。

「200km/hで走っていて振動が出たとしてもディーラーのメカニックはどこを診たらいいのか見当もつかないはずです。R35はそんな対応も増えるだろうから相談に乗ってほしいと水野さんに言われたんです。ノルドリンク誕生の背景にはそんな出来事もありました」

 そのような背景もあり、ノルドリンクはR35GT-R特約サービス工場として日産自動車からディーラーと同じ扱いを受ける認証工場となっている。 

 現在の鈴木代表の愛車はR35で、15年前のデビュー当時から乗り続けている。水野氏と開発に明け暮れていたのでR35のことなら隅々まで知っている。未完成の状態から気になる部分を一つずつ仕立てていったので、長所ばかりでなく弱点も把握しているのだ。 

「今でも開発車両のような感覚です。経年変化でパーツがどうなるか、どう対処すべきか、自然とそんなことを考えながら走っています」

常にボディがフラットで走行できるよう知恵を絞る

 R35に施したセッティングの方向性は、姿勢変化を極力抑えたフラットな体勢を維持することだ。加速、制動、旋回とどんなときにもボディが水平状態を保てるようにすることが、クルマの理想的な動きであると認識している。タイヤの接地荷重を常に4輪で同じ状態にするメリットはとてつもなく大きい。

 鈴木代表にそれを気付かせたのが油圧アクティブサスペンションの開発だ。その昔、古いCカーをベースに常に油圧の制御でボディを水平状態に保てるシステムに取り組んでいた。富士スピードウェイでのテスト走行では、異次元のフィーリングでコーナーを駆け抜けた。当時のBコーナーで高性能なタイヤを履いた現役のレーシングマシンよりも速かったほどだ。しかし富士を3周しただけで不具合が生じてテストは終了。その開発車両をドライビングしたのは鈴木代表だけで、衝撃的な走りを体験した唯一の人物となった。今でもクルマを仕立てる基本的な味付けは、そのときの体感を思い出して活用している。

 平成25(2013)年にR35の開発からは手を引いたが、愛車には相変わらず自分なりに手を入れて進化させている。もちろん合法でのモディファイが大前提で、そのノウハウは惜しみなくユーザーのR35にもフィードバックする。

開発当時は叶わなかった理想のRを具現化する

「どうすれば乗りやすくなるかを、常に自分への課題にしています。このクルマもフロントとリヤのメンバーを細工してアームの取り付け位置を変えているんです。それで随分とクルマの動きは好転しました」 

 オイルやブレーキパッドは純正品を使っている。開発時に徹底的に使い込んでいるので、どこの領域までなら耐えられるかを把握しているからだ。走行会レベルならば十分に対応できる。高性能を謳っている製品はメリットと引き換えにデメリットもある。純正品はそれらよりも確実にバランスに優れている。

「自信を持って推奨できるほど真剣に開発したという自負があります。当時、水野さんに指摘したのに『時間と予算がない』と却下された懸案は、今少しずつ具現化しています」

 サブタンク付きで純正の電子制御にも対応する、リバウンド側を重視したビルシュタインのダンパーをはじめ、より大きなダウンフォースを稼ぐためのアンダーパネル、さらにはオリジナルのレカロシートなど、今だからなし得る製品で果敢に理想型に近付けている。

 R35を知り尽くしている鈴木代表のモディファイには説得力があり、多くのヒントが隠されている。

鈴木利男代表 GT-R PROFILE

■所有車両:R35GT-R

■年式:2007年式

■乗り始め時期:2007年12月

■現在の総走行距離:3万9,014km

■現在の車両スペック

エンジン:強化ピストン/コンロッド/NordRingエンジンルームシュラウド/エンジンカバー/スペックV純正マフラーテール

電子パーツ:NordRing ECM

足まわり:NordRingビルシュタインダンパー/フロントメンバー/リヤメンバー取り付け位置変更

エクステリア:NordRingボンネットフード/フロントリップスポイラーセット/フロントマスクカバー/フロントバンパーフィニッシャー/ヘッドライトフィニッシャー/フロントフェンダー/アウトレットカバー/ドアミラーカバー/ピラーカバー/リヤバンパーアンダーセット/トランクリッド/リヤウイングセット

インテリア:NordRingレカロ/パネル/サイドシルカバーセット

ホイール:スペックV純正(F 9.5J×20+45 R 10.5J×20+25)

タイヤ:BSポテンザRE-71R(F 255/40R20 R 285/35R20)

パワー:約600ps

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みんなのコメント

3件
  • やはり日本車と言えば GT-R
    世界に誇る名車です。

    スカイラインの名前からが外れてしまったのは悲しかったケド、
    これだけのパフォーマンスなら仕方ないよね
  • モリゾーやトヨタには絶対に真似できない車造りだな
    今の仏産もそうだが
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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