日本のセンチュリーは世界のロールスになれるか
──10月30日に東京ビッグサイトで始まったジャパンモビリティショー2025、略称モビショーを、自動車ジャーナリストの吉田 匠と今尾直樹、それにKURU KURA 編集部の秋月新一郎の3人で、クルマの未来に思いを馳せながら、ぶらぶら歩きまわった。まずはトヨタの最高級ブランドとして新たなスタートを切ったセンチュリーから。「ジャパン・プライド」を世界に発信するONE of ONE(唯一無二)の高級車、センチュリー初のクーペを仰ぎ見ながら、ふたりはこんな会話を交わした。
吉田 ロールス・ロイスのカリナンて、日本でいくらぐらいするんだっけ?
今尾 5000万~6000万じゃないですか。ただ、カリナンのクーペはないですもんね、いまのところ。このクーペのかたちは、ロールスのBEVのスペクターか、そのちょっと前のレイスに似ていますね。
吉田 ロールスのクーペね。モンテカルロなんかでリッチが乗っているやつ。モナコのオテルド・パリの前なんかにいると、そういうのがバンバン来て、ちゃらっとしたおっさんとおねえさんが降りてくる。それでキーを係のひとに預けて遊びに行く。ああいうひとたちが買ってるんだな、と思う。そういう世界があるんだ。
編集部秋月(以下秋月) 大阪の万博の跡地にカジノができたら、モナコばりにこれが走るようになるかもしれないですね。
吉田 あれはモナコだからであって、大阪ではどうかな。いずれにせよ、このセンチュリーで僕の古典的な頭が理解できないのは、キャビンの小さいラグジュアリーなクーペなのに車高、つまり地上高がかなり高いところ。ロールスのレイスは乗ったことあって、あれは普通に床が低いからクーペらしいプロフィールなんだけど。センチュリーはフロアの高さがSUVを連想させるので、僕は最初にカリナンの名前を出したわけで、これはSUVのクーペなのでしょうか? そこがいまいち判らないところでした。なので、かてつのハイドロニューマティックのシトロエンみたいに車高調整式にして、乗り降りするときにはシューって車高が下がると最高だと思うんだけど、どうだろう?
コンパクトカーの魅力をもう一度!──ジャパンモビリティショー2025でクルマの未来を語る<後編>【吉田 匠と今尾直樹のクルマ放浪記】
今尾 唯一無二だから、判りにくいのかも。グリルの鳳凰のマークはすごくいいと思います。
秋月 手塚プロダクションぽいです。
今尾 火の鳥だからね。叩かれても叩かれても炎のなかから復活してほしい。世界中で金持ちは増えているそうだから、成功するかも……。
FRのコペンはおいくらに?
──トヨタのブースはひとが多かったこともあってさらっと見ながら通過し、ダイハツ・ブースのK-OPEN(コペン)の前で吉田さんが足を止めた。ステージの上にシルバーグレーの、フロント・エンジン/後輪駆動、通称FRと思しきコンセプトカーが、手前に赤と黒の、2026年8月末の生産終了を公表している現行コペンの改造車が置いてある。現行コペンはフロントのボンネットが開けてあって、覗くと下のほうに小さなエンジンが見えた。ハイゼットの縦置きエンジンをフロントに搭載した、後輪駆動の走行実験車、ランニングプロトなのだった。
吉田 これで走っているんだね。ステージのスタイリッシュなほうは、現行の軽サイズだけど、あくまでデザイン・スタディで、中身は入ってないのかも。
今尾 これが今回のモビショーでいちばん夢が詰まっているんじゃないですか。現実性も含めて。
吉田 現実性というか、金銭的なことも含めた、購買者の夢の部分ね。
今尾 そうです。ぜひ実現して量産化してほしい。豊田章男会長も気に入っているみたいだから、可能性は高い。担当のひとはやる気十分。問題は側面衝突の要件、みたいなことを言っておられました。いずれにせよ、これが今回のモビショーのベストですね。
吉田 全部見ないで、言っちゃいますか?
今尾 これ以上のものがあるとは思えない。
吉田 いまのコペンて、おいくら?
今尾 200万円ぐらいじゃないですか。
吉田 いまのはエンジン横置きのFWDで、メカニズムを流用してるからその値段だけど、縦置きのFRにしたら、独自につくらないといけないから、多分かなり高くなる。
今尾 あんまり高いと、トヨタの86とかマツダ・ロードスターとの絡みが出てきます……。
吉田 となると、ボディがオープンであることと、軽自動車であることの強みを発揮するしかないですね。
今尾 軽というのは魅力です。なんせ1万円ですからね、自動車税。
吉田 セヴン160Sで助かってますよ、わたしも。
誰の真似もしないレクサス
──レクサスでは「スポーツ・コンセプト」に足が止まった。今年8月、米国カリフォルニア州のモントレー・カー・ウィークで発表された、LFAの後継車となる……と噂されているグラントゥーリズモである。
今尾 これは出すんでしょ。ニュルブルクリンクでテストしてるみたいだし。モビショーの直前に公開された「トヨタイムズ」でエンジン音を聴かせてましたよ。トヨタ2000GTとレクサスLFAのあとで。レクサス最後の内燃機関のスポーツカーになる……のかもしれない。
吉田 LFAの再来ということであれば、初代LFAに積まれたV10の、ふぉおおおおんッという、あの音も再現してほしいね。LFAでなにがいちばん魅力的かというと、エンジンだったから。人工音ではなくて、本物のエンジンの快音が聴きたい。
今尾 年末に豊田会長がワールド・プレミアをやるらしい。
吉田 どういう音が出てくるか、期待しましょう。
今尾 6輪の「LSコンセプト」はどうですか。後輪を小径にすることで、広い居住空間が実現できた、というのがウリです。たぶんBEVでしょうけれど、本気で開発に取り組むらしい。「誰の真似もしない」という意気込みやよし、ですよね。
吉田 そのとおりですね。で、隣の観音開きの4ドアクーペはなんだろう? このボディサイドの大きなエアアウトレットはなんのためだろう?
レクサスの担当者 これはホイールハウス内の空気を抜くためのものです。サーキットとかも走ることを想定して、ブレーキの冷却のために。
吉田 これでEVみたいだけど、サーキット走行を想定しているんですか?
レクサスの担当者 そうです。今回LSのコンセプトカーを3タイプ提示しています。
──すなわち、6輪の3列高級ミニバンの「LSコンセプト」、こちらの4ドア観音開きのクロスオーバー「LSクーペ・コンセプト」、そしてパーソナル・モビリティの「LSマイクロ・コンセプト」の3タイプである。
吉田 じゃあセダンはなくなるの?
レクサスの担当者 今回のテーマではないということです。
吉田 このプロポーションだと、これ(LSクーペ・コンセプト)も電動車ですよね。
レクサスの担当者 お客様の期待するパワートレインを検討中である、と。もちろん、電動化の技術にも真剣に取り組んでおります。
吉田 エンジン車だとすると、ボンネットがそうとう短いから、コンパクトなエンジンをつくる必要がありますね。観音開きというところでは、1955年の初代クラウンへのオマージュかな、と思ったんだけど……、関係ないのかな。
レクサスの担当者 そうですね、ラグジュアリーな体験をしていただこうということで。
今尾 ロールス・ロイスが観音開きですからね。
吉田 なるほど。
レクサスの担当者 後席は乗り降りしやすいようにベンチシートになってます。ゆったりとした空間を体験していただこうと。
吉田 いずれにしても、うまくパワーユニットを詰めて走れるようにしてください。ところで、あのLFAはエンジンはなにを想定しているんですか?
レクサスの担当者 あれは……言えないです。
吉田 実は今回のレクサスのコンセプトカーの中で、デザイン的に僕が一番気に入ったのはこのLSクーペ・コンセプトなのですよ。まず全体のプロフィールがいいし、例のボディサイドのエア抜き穴を含んで、なんか雰囲気があるんだよなぁ。
──「レクサスの担当者」は、LSクーペ・コンセプトのエクステリアを担当した女性デザイナーなのだった。レクサスでは最後に「LSマイクロ・コンセプト」をチラッと見た。
今尾 なんかに似てますね。なんだろう。
吉田 浅草あたりの人力車を思い出すね。
今尾 完全自動運転のプライベートな移動空間だそうですから、コンセプトは同じかも……。
>>>>後編へつづく
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