いまやSUVやミニバンは、日本の新車販売の多くを占める人気カテゴリー。セダンを追いやり、主役の座を掴んだといっても過言ではない。
ただ、いまに続く乗用ミニバンが出始めたのは1990年代に入ってからで、SUVが人気カテゴリーに成長したのも2010年代に入ってからだ。
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言い換えれば、今のSUVやミニバンの発展・確立は、派手さはなくとも黎明期に尽力した名車のおかげともいえるだろう。
本稿では、そんな「功労車」たちを、2名のジャーナリストが3台ずつ選出。どれも後世に影響を与えた偉大な影の名車といえるだろう。
文:片岡英明、渡辺陽一郎
写真:SUBARU、MITSUBISHI、HONDA、TOYOTA
ベストカー 2019年12月10日号
【画像ギャラリー】初代RAV4、エルグランドなど全ての功労SUV&ミニバンを見る
偉大な功労SUV【1】「影の功労車は初代フォレスター」
初代フォレスター(1997-2002)/クロスオーバーSUVの先駆けとして20世紀末に登場。現在では5代目に突入した同車の礎を築く
バブルが弾け、販売が大きく落ち込んだ1990年代に誕生し、セダンに取って代わったのが乗用車をベースにしたクロスオーバーSUVだ。先駆けとなったのはトヨタのRAV4である。だが、最初は3ドアだけだったので評価は今一歩にとどまった。
これ以降、多くのメーカーがクロスオーバーSUVを送り込んでくる。渋いヒットを飛ばしたのがスバルのフォレスターだ。インプレッサをベースに開発されたクロスオーバーSUVで、最初はDOHCターボだけだった。
エンジンはパワフルだし、4WDもいい仕上がりだから山岳路でも悪路でも痛快な走りを見せつける。初代モデルに今も乗り続けている人がいるなど、影の功労者だ。
プレミアムSUVの市場を開拓し、ジャンルを確立したハリアーも高く評価できる。4気筒だけでなく3LのV型6気筒エンジンを設定し、ステーションワゴンのように上質な走りを披露した。
スポーツステアシフトマチックの採用により、山岳路も気持ちよく駆け抜けられる。海外ではレクサスブランドで売られ、多くのファンを獲得した。
ホンダのCR─Vはスペアタイヤを背負っている。が、悪路の走破性は平凡で、得意とするのはオンロード。誰もが気軽に非日常の世界を体験できる、ワゴン感覚のライトクロカンだった。
【片岡英明氏が選ぶベスト3】
・スバル 初代フォレスター
・トヨタ 初代ハリアー
・ホンダ 初代CR-V
偉大な功労SUV【2】「シティ派の先駆けは初代RVR」
初代RVR(1991-1997)/バブル期のRVブームを牽引したモデルのひとつ。スライドドアの採用など実用的なシティ派SUVのパイオニア的存在
1982年に初代パジェロが発売されると、後輪駆動ベースの悪路向け4WDが乗用車感覚を強めた。ハイラックスサーフやテラノも加わり、1991年登場の2代目パジェロは、1992年に1カ月平均で7000台を登録した。今のRAV4を上回る物凄い売れゆきだ。
しかし、オフロードSUVの多くは、小回りが利かず価格も高い。景気の悪化もあって人気が下降した。
この時期に普及しはじめたのが、前輪駆動ベースのシティ派SUVだ。まずは1991年登場の初代RVRが個性的な商品として注目された。後席ドアの左側はスライドドアで、SUVながらミニバンのような機能も備えていた。
本格的な前輪駆動ベースのSUVとしては、1994年に発売された初代RAV4が話題となった。全長が3695mmの3ドアボディで発売され、外観と運転感覚が特徴。舗装路での安定性と悪路走破力を両立させ、若いクルマ好きに歓迎された。
2000年には本命ともいえる初代エクストレイルが登場して人気に。前輪駆動ベースの4WDを搭載するが、ウィンドウ面積の広い直線基調のボディは、後輪駆動ベースのオフロードSUV風だ。悪路走破力も相応に優れ、シートには溌水加工を施す。
荷室も水洗いが可能だから、アウトドアでも使いやすい。SUVの価値観を確立させた。200万円のグレードがあったのが印象に残る。
【渡辺陽一郎氏が選ぶベスト3】
・三菱 初代RVR
・トヨタ 初代RAV4
・日産 初代エクストレイル
偉大な功労ミニバン【1】「驚異的だった初代オデッセイのバランス」
初代オデッセイ(1994-1999)/いわずと知れた乗用ミニバンのパイオニアであり、ホンダの救世主となった
3列シートのミニバンというジャンルは1980年代に誕生したが、3列目の広さは1ボックスワゴンに遠く及ばなかった。
今につながるミニバンが登場するのは平成になってからである。北米市場を見据え、トヨタはエスティマを、マツダはV6エンジンを積むMPVを送り込んだ。
MPVはワゴン的で快適だったが、ブームにはならなかった。ミニバンの魅力をわかりやすく伝え、人々に目を向けさせたのは、1994年に誕生したホンダの初代オデッセイである。
アコードのメカを用いたヒンジ式ドアのミニバンで、ワゴンのように安心感のある走りを売りにした。ハンドリングと乗り心地のバランスは、当時としては驚異のレベル。
また、快適なキャビンと多彩なシートアレンジもチャームポイントだ。アウトドアレジャーが楽しい。だからオデッセイは3ナンバー乗用車の販売トップになり、ミニバンの代表になっている。
エスティマが切り開いたスライドドアのプレミアムミニバン市場を不動のポジションに押し上げた功労車が日産のエルグランドだ。
押しの強いアメ車的なフロントマスクときらびやかなキャビンを定着させた。走りのメカに関しても積極的に新しい提案を打ち出し、成功している。エスティマと違う日産流の豪華さと走りのよさでミニバン市場に風穴を開けたのだ。
【片岡英明氏が選ぶベスト3】
・トヨタ 初代エスティマ
・ホンダ 初代オデッセイ
・日産 初代エルグランド
偉大な功労ミニバン【2】「新時代の乗用車と認識させた初代エスティマ」
初代エスティマ(1990-2000)/ミニバンの地位を確変させた画期的なモデル。2019年でエスティマは消滅するが、そのコンセプトは現代のミニバンに多大な影響を及ぼした
3列シートの乗用車は、クラウンやセドリックのワゴン、初代ハイエースワゴンなどが1960年代に普及していた。しかし、今に通じるミニバンの発祥は、1982年登場の初代プレーリーや1983年の初代シャリオだ。
そして、ミニバンを新時代の乗用車と認識させたのは、1990年に発売された初代エスティマであった。
卵型の3ナンバーボディは斬新で、2.4Lエンジンを前席の下に75度傾けて搭載した。内装は上質で、価格は最も安いグレードでも300万円弱だから、クラウン「2・0ロイヤルサルーン」と同等であった。
初代エスティマが定着した1992年には、5ナンバーサイズのエスティマルシーダ&エミーナを加えた。「X」などはリアサスペンションを車軸式に簡素化して、価格を200万円前後に抑えた。
憧れのエスティマが100万円安く買えるとあって好調に売れた。この戦略は見事のひと言。
1996年にはミドルサイズのタウンエースノア&ライトエースノアも登場する。全高が1900mmを超えるボディで車内は広く、エスティマルシーダ&エミーナよりも実用的で価格は安い。ファミリーユーザーを中心に好調に売れた。
三菱からはデリカスペースギア、これも功労車だ。4WDモデルの最低地上高は195mmで、今のデリカD:5が備えない副変速機も装着。悪路走破力を一層高めていた。ミニバンなのにこの強み。その個性も今のミニバンを支えている。
【片岡英明氏が選ぶベスト3】
・トヨタ 初代エスティマ
・トヨタ 初代タウンエースノア
・三菱 デリカスペースギア
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