シリーズ初となるハイブリッドモデルとなった新型911 カレラGTS。その公道試乗の機会がようやく訪れた。ドイツ車として、ポルシェとして、911として革新的な技術を織り込んだ同車の走りはどのような仕上がりとなったのだろうか。(Motor Magazine2025年8月号より。文:渡辺敏史/写真:永元秀和)
可能性の扉をまたひとつ開けてくれる存在
2024年、ポルシェ911の世界販売台数は5万941台。ポルシェ全体の販売台数のほぼ1/6を占めている。さすがにカイエンやマカンには及ばないが、パナメーラやタイカンを抑えてブランド内でトップ3に位置づけているのだから大したものだ。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
ちなみに世界的に見ても、純然たるスポーツカーでこれほどの数を売る例は他にはない。売価を鑑みればシボレーコルベットやマツダロードスターさえ置き去りにすること自体が尋常ではない状況だ。売れすぎて注文枠が押さえられないという販売店の言い分もわかるような気がする。
しかもこれは、2019年に登場した992型の前期モデルが達成した数字でもある。992型の後期モデルのリリース直前にしてこの勢いなのだから、それでなくても911のモデルチェンジという大役を担う担当者は、結構なプレッシャーだったことだろう。
その992型の後期モデルにおいて、現時点でもっとも大きなトピックとなっているのが「T-ハイブリッド」と銘打つパワートレーンの電動化だ。911もいよいよCO2削減の波には抗えず・・・と思われるかもしれないが、そこは話が少し異なっている。
モータースポーツの知見が活かされたハイブリッド技術
このシステムはふたつのモーターで構成されるが、うちひとつは8速DCTと組み合わせる駆動用モーターとなる。そしてもうひとつのモーターが搭載されるのはターボチャージャーの中だ。排気慣性を用いて回すタービンにモーターを組み合わせることで、低回転域からの過給の立ち上がりを増速化させる一方で、排出ガスによって得られるエネルギーを駆動用バッテリーの充電側にも割り当て・・・といえば、思い出すのはF1やWECなどのトップカテゴリーで用いられるMGU-Hだ。
すなわちT-ハイブリッドの技術的源泉は、2015~2017年に3年連続コンストラクターズタイトルを獲得したLMP1車両の919ハイブリッドにあると見て間違いない。モータースポーツを通じて磨き上げたテクノロジーを市販車にフィードバックする。蓋を開けてみればT-ハイブリッドはポルシェの王道たるエンジニアリングの産物だ。
搭載されるフラット6は992・1型に搭載される9A2型の流れを汲む9A3型となり、排気量は3.6L。カレラ系が搭載するライトサイジングコンセプトの3Lとはボア・ストローク共に異なり、97.0×81.0mmの設定は、振り返ってみると997後期型のカレラに用意された3.6Lのそれとほぼ同じだ。これに組み合わせられるのが件の電動ターボで、エネルギーのバッファに用意されるリチウムイオンバッテリーは前軸側に搭載しており、その容量は1.9kWhとなっている。
エンジン本体のアウトプットは485ps/570Nmと、ベーシックなカレラに対しては91ps/120Nm大きい。レッドゾーンも7500rpmと、つまりエンジン単体でも十分GTSとして成り立つチューニングが施されている。そこに加わる駆動モーターは56ps/150Nm。モーター単独での電動走行はなく、あくまでアシストのために組み込まれる。
T-ハイブリッドの少なからぬ副産物は小型・軽量化だ。電動化に伴うアーキテクチャーは400Vの高圧仕様となりスターターは廃止、コンプレッサーも電動化されるなど補機類の構成も一新されている。補機駆動のためのプーリーやベルトを持たない構造のおかげでエンジン全長や全高も短縮、そしてハイブリッドシステムに伴う重量増も50kgに抑えられた。ちなみに次期911ターボは、このT-ハイブリッドを電動ツインターボ化し、700psの大台に乗せてくるのではないかと噂されているが、詳細は不明だ。
選んでおいて間違いないと思わせるGTSの立ち位置
911では997型後期から設定されてきたGTSは、従来モデルライフの末期に登場し、カレラS系の高性能エンジンを搭載、PASMやスポーツクロノなどの主要オプションをパッケージした、とりあえずこれを選んでおけば間違いないというお寿司屋さんの「おまかせ」的なグレードだった。
今回、992型後期の口火を切るかたちで設定されたGTSもその立ち位置を踏襲、新たにリアアクスルステアリングも標準化されている。オプションの選択肢として走ることにまつわるものはPCCBやフロントリフターくらいだが、一方でコスメティックにも事細かに値札が下げられているあたりがポルシェの商売上手なところだ。
GTSはクーペ・カブリオレ・タルガとすべてのボディバリエーションに設定されたおり、クーペとカブリオレではRRの選択も可能だ。取材車はそのRRのクーペなわけだが、興味深いというかちょっと身構えてしまうのが、541psという強力なシステム出力を果たして後輪だけで受け止めきれるのかという点だ。
走り出しのフィーリングは大トルクに任せた軽やかなものを想像していたがむしろ逆で、ドシッとお尻が据わったいかにも昔日からの911的なものを感じさせる。イニシャルのトルクもクルマを押し出すに十分なもので、タウンライドはフラット6が2000rpmも回れば十分事足りるほどで、ここに駆動モーターが著しく寄与している兆候はない。
そこから緩やかな加速を試みると、モーターのアシストが加わっていることがはっきりとわかる。例えが適切か否かはさておき、それは電動アシスト自転車で坂道に差し掛かった時のような感触だろうか。内燃機ならば賢いPDKがササッとシフトダウンして補おうとする推進力を、ギアを変えずにモーターでググッと押していく、そんな感触に近い。
そういう副次的な効果もありながら、やはりT-ハイブリッドの本質はアクティブなドライビングに現れる。フル加速に間髪入れず応答するそのレスポンスの良さは駆動モーターに加えてターボラグを埋める電気タービンによるところが大きい。
モーターが時に緩衝材の役割を果たしている実感
全開加速では変速時の回転数のドロップによるGの谷を埋めるように駆動モーターが機能し、段付きを感じさせない直線的な加速度を維持し続ける。高回転域を担うのはエンジンのアウトプットのみとなるが、モーターの加勢が終わったことはまったく感じさせない。慣性のラグを補填する電動タービンだから実現した低中回転域の図太いトルクと、大径シングルターボならではのモリモリと盛り上がる高回転域のビッグパワーとの仲を、駆動モーターが時には緩衝材のような役割も果たしながらうまく取り持っている。
RRのカレラGTSでさえ0→100km/h加速は3秒フラット、最高速は312km/hというから、その速さが余すことなく存分に引き出せる場所といえば富士スピードウェイのような場所ということになるだろうか。日本の山道くらいでは踏むことさえままならず・・・かと思いきや、意外や不安感なく楽しめてしまうのは、どこからでも間髪入れずクルマを押し出すトルクバンドの広さに加えて、回頭性のみならずスタビリティにも寄与するリアステアの効果が大きいのだろう。
T-ハイブリッドによって作り込まれたそのフィーリングは、911の小さなエンジンベイに収まるものから生み出されているとはにわかに信じ難い。今までさまざまな高性能バージョンの911に乗る機会があったが、そのどれにも似ていない不思議な感触だ。電動化に伴って削がれざるを得ないと思われていた動的パフォーマンスが、むしろ見事なまでに、そしてこれまでとは異なる質感をもって新たにデザインされている。
ポルシェエンジニアリングの可能性の扉をまたひとつ開けて見せてくれた、新しいGTSシリーズはそんな1台だと思う。
ポルシェ 911カレラ GTS 主要諸元
●全長×全幅×全高:4553×1852×1296mm
●ホイールベース:2450mm
●車両重量:1670kg
●エンジン:対6 DOHCターボ+モーター
●総排気量:3591cc
●最高出力:357kW(485ps)/6500rpm
●最大トルク:570Nm(58.1kgm)/2000-5500rpm
●モーター最高出力:41kW(56ps)
●モーター最大トルク:150Nm(16.2kgm)
●システム最高出力:398kW(541ps)/6500rpm
●システム最大トルク:610Nm(62.2kgm)/1950-6000rpm
●トランスミッション:8速DCT
●駆動方式:RR
●燃料・タンク容量:プレミアム・63L
●WLTPモード燃費:9.0-9.5km/L
●タイヤサイズ:前245/35R20、後315/30R21
●車両価格(税込):2379万円
[ アルバム : ポルシェ 911カレラ GTS はオリジナルサイトでご覧ください ]
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みんなのコメント
もはや大きな一発狙いしか無いように思えます。
個人的にいちばん所有してみたいクルマなのですがなかなか難しい領域です。