思い出の詰まった愛車と長くよりよい時間を過ごせるように
0スープラに2000万円の値がついた。2019年、アメリカで開催された『RMオークション』での出来事は、国産旧車が世界的な人気を集めていることを広く一般に伝えるニュースとなった。そうした熱気に後押しされるかのように、国内メーカー各社も旧車向けパーツの復刻やレストアを行うヘリテージ事業に力を入れ始めている。
トヨタのクルマ好きへの味方っぷりに感動しかない! A80スープラのオーナー歓喜の純正パーツがついに復刻決定
そのなかで、もっともスピード感を持って取り組んでいるのがトヨタだ。2019年、現行GRスープラの発表会場で「GRヘリテージパーツプロジェクト」を電撃発表。AE86、A70/80スープラ、トヨタ2000GT、ランドクルーザー40/60/70/80系を対象に純正部品を復刻し続け、約7年で300点超のパーツをリリース。2026年にはプロジェクト史上最大級とも言える”大物”の投入も控えている。なぜトヨタはこの活動を続けるのか。GRマーケティング部の担当者に、このプロジェクトを立ち上げたきっかけを聞いた。
「GR初の専用車であるGRスープラの発表時、末永く乗っていただけるクルマに育てていきたいという強い思いがありました。GRスープラの祖先にあたるA70/80スープラを対象にこのGRヘリテージパーツプロジェクトを立ち上げることで、GR(TOYOTA)のクルマに永く乗っていただける土壌を作りたかったからです」
現在の対象車両は多岐にわたる。スープラなど世界的な人気車種に加え、希少車であるトヨタ2000GTも対象車両になっている。
「GRスープラ発売時にA70/80スープラを、GR86発売時にAE86を対象車種として追加しました。トヨタ2000GTは弊社のスポーツカーの源流的な車種であるため、プロジェクト立ち上げ当初より対象車種としています。ランドクルーザーは耐久性の高さを背景に長期保有の実態があることから、対象車種に追加いたしました」
公式WEBの『復刻リクエストフォーム』には日々さまざまな声が届く。とくに多い要望と、要望が高くても「さすがに難しい」という部品について、現場の本音を聞いた。
「さまざまな部品の復刻リクエストをいただいておりますが、とくに車検を通すことが必要であり、しかしながら販売がストップしている部品については多くのお声があります。現状復刻が難しい部品は『シートベルト』です。材料や設備の不足、衝突試験など、復刻までのハードルが非常に高く、いまだに復刻の目途は立っておりません」
残存台数の多いAE86は海外からも要望が多い
今年5月発売予定のAE86用4A-GEのシリンダーヘッド/ブロックは最新技術で『現代化』が図られている。
「一度生産終了した部品の復刻に際し、当時とまったく同じ環境は残っておりません。部品によって異なりますが、設備や材料などがないものは現代のものへ置き換えますし、現代の工法での生産であれば精度も向上します。明確な線引きはありませんが、シリンダーヘッド/ブロックはお客さまの声を基に、さまざまな目的に使用できる汎用性も加味して『現代化』しました」
復刻部品は『赤字にならないギリギリの価格』と聞く。
「このプロジェクトを継続していくために、プロジェクト全体として赤字を出さないということを基本としています。当時の部品価格や物価上昇、市場の状況などさまざまな要素を検討し、価格の妥当性を検証したうえで値付けを行っていますが、お客さまのご要望が多い部品については、単体では赤字となる価格に設定したケースもあります」
AE86用部品は品目数こそ全体の約2割だが、売上の半数以上を占めるという。このAE86人気の背景をどう分析しているのか。海外からの引き合いについても聞いた。
「要因のひとつに、AE86はほかの復刻対象車種と比較し、残存台数が非常に多いことが挙げられます。長く乗り続けていただいているお客さまの需要はもちろんのこと、新規に若いお客さまも増えており、市場に流通している中古車はカスタムされた車両が多いため、購入した中古車を新車の状態へ戻したいというご意向のお客さまもおられます。海外のお客さまからも、AE86に限らず対象車種についての問い合わせや復刻リクエストを多数いただいております」
技術が進化したからこその復刻することの難しさ
AE86用4A-GEのシリンダーヘッド/ブロックに加え、2026年は80系スープラのインストルメントパネル(右ハンドル用)という”大物”の復刻が予定されているが、やはり復刻はひと筋縄ではいかないようだ。
「部品復刻の難しさは、材料と図面をいかに現代化するのかということです。現代に当時とまったく同じ材料は存在しませんが、要求性能を満たす同種材料は数多く存在します。そのなかからどれを選択すれば、よりお客さまの期待に沿ったものになるのかを考慮し、必要に応じて物性評価や加工テストなどを行います。これらの評価・テストの費用も販売価格に影響しますので、材料の選定には知識と知恵、適切な判断が必要となり非常に難しいです」
「もうひとつは図面です。当時の図面は残存していますが、3Dデータでの現代のもの作りには情報不足です。当時は紙の図面から木型を職人が仕上げていたように、現存しているオリジナル部品を基に3Dデータを仕上げました。このたび復刻するインストルメントパネルは、木型を使っていた時代を知る社員から若手の社員へと技術継承もしながら復刻を進めました」
GRヘリテージパーツはサードパーティ製ではなく「トヨタ純正部品」として供給されている。あえて「純正」の言葉にこだわる理由は?
「まず、トヨタが部品の生産をやめたあとも、そのクルマを守るために部品を生産し続けていただいたサードパーティのみなさまへのリスペクトを込め、GRヘリテージパーツプロジェクトにおいては原則として、メーカーでなければ生産・販売が難しい部品を優先して復刻・販売を行っています。そのうえで、GRヘリテージパーツはメーカーが生産する純正部品である以上、お客さまに安心して使っていただけるよう、高い品質を確保できるよう努めています」
プロジェクト発足から約7年、300点超の部品を復刻してきたGRヘリテージパーツ。最後にオーナーへのメッセージを聞いた。
「お客さまからいただく『復刻してくれてありがとう』『このプロジェクトがあるから、いまのクルマに安心して乗り続けられる』といった嬉しいお言葉が、我々の背中を押しています。今後も思い出の詰まった愛車と長く、よりよい時間を過ごしていただけるよう、新たな部品復刻にチャレンジし、お客様にお届けし続けます」
GR HERITAGE PARTS
TOYOTA GAZOO Racing(GR)が手がける「GRヘリテージパーツ」は、生産が終了し入手困難となった純正部品を復刻・再供給する取り組みだ。長年愛用してきた旧車を「これからも乗り続けたい」というオーナーの想いに寄り添い、修理・維持に必要なパーツを再び届けることを目的としている。
※本記事は雑誌CARトップの記事を再構成して掲載しております
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安全運転して大切にしてるのに。