R380やハコスカのDNAを受け継いだ期待の2代目GT-Rだった
国産車でプレミアム・ヒストリックカーというと、337台しか生産されなかったトヨタ2000GTが真っ先に思い浮かぶかもしれないが、その希少性でいえば、2代目スカイラインGT-R、いわゆるケンメリGT-Rも負けてはいない。
【大阪オートメッセ2017】ケンメリの価値は10億円!? 希少なクルマが大集結!
ケンメリGT-Rの生産台数は、197台。トヨタ2000GTは国内販売が218台で、いまでも国内に現存しているのは100台前後といわれている。ケンメリGT-Rは国内専用車で、現存台数は同じく100台前後。希少性という意味では立派なライバルだ。
そもそも「スカイライン」は、日産に吸収合併されたプリンス自動車のブランドで、プリンス自動車は、モータースポーツに非常に力を入れていたメーカー。2代目スカイラインのS54Bは、第2回日本グランプリを制するため、1.5リッター直4のベース車にグロリアの2L直6を押し込んだ元祖「羊の皮をかぶった狼」。
同時にプリンス自動車ではミッドシップの本格的なレーシングカー=R380を開発し、1966年の日本GPを制している。しかし、同年プリンス自動車は日産自動車に吸収され、3代目スカイライン、いわゆるハコスカは「日産スカイライン」として1968年に登場する。
その翌年、ハコスカのハイパフォーマンスバージョンとして登場したのが、最初のスカイラインGT-R、PGC10(4ドア)。このクルマに搭載されたのが、R380のために開発された、レーシングエンジン=GR8型をデチューンした、DOHC4バルブ、160馬力のS20エンジン。
ほとんどレースに勝つことを目的に開発されたハコスカは、ツーリングカーレース49連勝の大記録を打ち立て、1972年のモデルチェンジで生産終了。そのハコスカGT-Rのバトンを受け継いだのが、2代目GT-RのケンメリGT-R=KPGC110だ。
レースで勝利した名機を搭載してもオイルショックには勝てず
エンジンは日産珠玉のDOHC、S20をそのまま引き継ぎ搭載。1973年の東京モーターショーには、そのレーシングバージョンも参考出展されていたが、その年の9月、リーマンショックやバブル崩壊以上の衝撃で、第一次オイルショックに見舞われる。ガソリンスタンドは土日営業停止となり、マイカー運転自粛の“ステイホーム”が始まる。
ガス喰い虫で、排気ガスのクリーンさとも無縁、昭和48年排出ガス規制をクリアできる見込みもないS20エンジンを作り続ける大義名分はなく、憐れなKPGC110は、1973年の1月にデビューしたものの4月には生産終了……。生産台数197台、生産期間4カ月の短命で終わってしまった。
日産でも、排ガス規制はある程度覚悟していて、ケンメリGT-RはS20エンジンの在庫限り、と計算していた節はあるが、排ガス規制+オイルショックのダブルパンチまでは予測していなかったはず。
ワークスカーのようなワイルドな金網タイプの専用ラジエターグリル、ビス止めの前後オーバーフェンダー、リヤスポイラー……で、カッコはメチャクチャよかったケンメリGT-R。当時の新車価格は、クラウンの上級モデルもビックリの160万円。レースでハコスカの連勝記録にストップをかけた、GT-Rの天敵、マツダ サバンナGT(RX-3)が、81万円なので、お値段およそ2倍。
憧れた人は多かったが、おいそれと手が出る価格ではなく、しかもハコスカGT-Rよりも車重が45kgも重かった。いくら当時の高性能といっても、160馬力のS20エンジンのまま45kgも重くなったら、そのパフォーマンスは容易に察しが付くはず。
結局レースに出場することもなかったが、スカイラインファンにとっては特別な一台であることには変わりなく、いまでも人気は衰えない。その希少性から、中古車市場に出てくることも非常に稀で、出てきてもほとんどが価格応談。取引価格は1000万円級になってしまうが、投機や転売の対象にならず、本当に好きな人が所有して、いつまでも走らせ続けてほしいものだ。
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