BMW MチームWRTのドライバーであるロビン・フラインスは、ル・マン24時間レースでの最後のセーフティカー(SC)ピリオドは「苦痛だった」と語った。とくにトヨタTR010ハイブリッド勢に対してかなりのリードを築いていたにもかかわらず、勝利のチャンスを消し去ることになったためだ。
■セーフティカーが「すべてを狂わせた」
「愚かな故障」でル・マンの優勝争いから脱落したキャデラック「みんなの努力が台無し」と地元出身ブルデー
フラインスと彼のチームメイトであるシェルドン・ファン・デル・リンデ、レネ・ラストは、6月13~14日にフランスで行われたWEC世界耐久選手権第3戦で総合2位となり、1999年にBMWが最後にル・マンで勝利して以来、このフランスの伝統ある耐久レースにおいて、同ブランド初となる総合表彰台をもたらした。
しかし、それは20号車BMW MハイブリッドV8がハイパーカークラスで2番目に多い周回数をリードし、歴史的な勝利に向けて絶好のポジションにいると思われたレースの中での出来事だった。
残り6時間を切ったところで発生した、91号車ポルシェ911 GT3 Rエボ(マンタイDKエンジニアリング)のクラッシュは、当時フラインスが築いていた、2番手を走る12号車キャデラックVシリーズ.R(キャデラック・ハーツ・チーム・JOTA)に対する30秒のリードと、3番手の7号車トヨタTR010ハイブリッドに対する45秒のタイムギャップを消失させた。
小林可夢偉、マイク・コンウェイ、ニック・デ・フリースは、このアクシデントで導入されたSCを利用し、トヨタにとって通算6度目となる総合優勝を飾ることになった。
SCピリオドについて感想を尋ねられたフラインスは、「ああ、辛かったよ」と答えた。
「トヨタ(の8号車)は、その1時間ほど前にピットインしたか、あるいはブレーキ関係のトラブルを抱えていた。彼らが優勝争いから脱落したとは言わないが、順位を落としていたんだ」
「あの時点では少し差が開いていたが、その後、彼らは勝負に戻ってきた。でも、僕たちはトヨタが非常に強力であることを分かっていた。彼らは、とくにレース序盤でアンダーカットを仕掛けてきた際などに良いペースを見せていたからね」
「それ(最後のSC)は我々にとって大きな失望だった」
僚友のファン・デル・リンデは、「SCがすべてを狂わせた」と付け加えた。
「あの時点では僕たちがリードしていて、コース上のポジションを確保していたが、エネルギーを最大限に補充しなければならなかったため、ある時点でリードを失った」
「ル・マンでオーバーテイクをするのは本当に難しい。とくにトヨタがあのようなペースで走っているときは、トラフィックの中で多大なリスクを負う必要がある。また、マシンのケアも必要だった。シケインを間違った方法でカットすれば、マシンやフロアを傷つけ、完走すらできなくなる可能性があるからだ」
残り47分でポルシェ・カーブのアウト側からセバスチャン・ブエミの8号車を抜くという大胆な動きを見せて2番手に浮上したフラインスは、予選14番手と15番手からスタートしたトヨタ2台のペースに驚きはなかったと述べた。
「トヨタのことはつねに警戒していた。なぜなら、彼らは良いレースペースを見せていたからだ」と彼は語った。「予選はひとつの要素に過ぎない。もちろん前方からスタートしたいし、ポールポジションからスタートできるのはつねに素晴らしいことだ」
「しかし、結局のところ、これは24時間のレースだ。2時間も経てば、すべてが変わってしまう」
WRTのチーム代表であるヴァンサン・ボッセはレース後、勝利を目指して「すべてを出し切った」と記者団に語った。
フラインスは可夢偉からわずか10.913秒差の2位でチェッカーフラッグを受けた。これは、長い歴史を持つル・マンでのレース史上稀に見る僅差のフィニッシュのひとつとなっている。
「後悔することはは何もない」と語ったボッセ。「非常に力強いレースだった。ドライバー、チーム、マシン、すべてが完璧だったと言える。持っているものすべてを出し切った」
「フリー走行中に我々がすべてを出し切っているか確信が持てなかった(メーカーの)者たちも、今や分かったはずだ」
「私が以前から言っていたように、適切な時に適切な場所にいなければならないだけだ。2度のSC中、我々はかなり不運だった。しかし、これ以上完璧なレースは考えられなかった」
■「勝てたとは言い切れない」とルース
一方、BMW Mモータースポーツ・ディレクターのアンドレアス・ルースは、20号車のクルーがエネルギー戦略の変更を余儀なくされ、レース終盤に向けてふたつの面で「劣勢」に立たされていたことを明かした。
彼は次のように説明した。「終盤のSCの少し前、コース上のポジションという点では我々にかなりのアドバンテージがあり、ライバルたちを先行していた。しかし、エネルギーの面ではわずかな不利だった」
「SCはコース上でのポジションのアドバンテージを完全なゼロにしてしまい、我々にはエネルギー面のディスアドバンテージだけが残った」
「この瞬間から、我々は明らかに劣勢となった。それから、エネルギーの面で他車と同じリズムに戻れるかを確認しなければならなかった。そのため、13ラップのスティントなどを開始することになった」
SCが出なければ勝てていたと思うかと問われると、ルースは次のように答えた。「いいや、そうは言えない。それは言いすぎだ」
「確かに、それがなければ我々を異なる地点、異なる状況に置いていただろう。しかし、だからといって私たちが勝てたとは言い切れない。私は決してそうは言わない」
ファン・デル・リンデとラストの両ドライバーは、フラインスも加わった1月のデイトナ24時間レースでの3位入賞に続き、ドイツのメーカーを今季の24時間レースで2度目となる表彰台へと導いた後、複雑な心境を抱えていた。
「笑うべきか泣くべきか分からない」とファン・デル・リンデは語った。ポジティブな面に目を向ければ、このプログラムにとって素晴らしいマイルストーンとなった。BMWがひとつのレースで強いだけでなく、一貫して上位に食い込み、結果を残していることを示すのは、僕たちにとって重要だと思う」
ラストが次のように付け加えた。「それがレースであり、ル・マンだ。知ってのとおり、ル・マンでは何でも起こり得る。運が良い時もあれば、悪い時もあるんだ」
「『ル・マンが勝者を選ぶ』。よく耳にする言葉だが、まさにそのとおりだ」
[オートスポーツweb 2026年06月15日]
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みんなのコメント
トヨタも今まで辛酸をなめてきたこともあるので、今回はトヨタに勝利の女神がほほ笑んだといえるのではないかな。
ただトヨタも運だけで勝ったのではなく、最後まで2台が残っているということがいかに大切かということを再認識した。今回はトヨタの“強さ”が光ったレースだった。