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ランボルギーニ・ムルシエラゴ、フェラーリ575 M、アストン マーティン・ヴァンキッシュ V12気筒乗り比べ 中編

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ランボルギーニ・ムルシエラゴ、フェラーリ575 M、アストン マーティン・ヴァンキッシュ V12気筒乗り比べ 中編

豪奢で洗練されたグランドツアラー

ガンメタリックのアストン マーティン・ヴァンキッシュ Sは、ランボルギーニ・ムルシエラゴほど自在にV型12気筒のパワーを展開できない。そのかわり、洗練性と豪奢さではワンランク上だ。

【画像】V型12気筒の高性能モデル ヴァンキッシュ Sに575 M マラネロ、ムルシエラゴ 全49枚

つづら折りの道をスリリングに駆け抜けられる。だが、オプションで選べた+2のリアシートを装備せずとも、遠く離れた実家を目指すようなグランドツアラーだといえる。

アストン マーティンは、ヴァンキッシュの開発時期に親会社が変更。フォードに買収され、高級ブランドを握るプレミア・オートモーティブ・グループの傘下となった。

ヴァンキッシュは、英国中部、ニューポート・パグネルで生産された最後のアストン マーティンでもある。デザインのベースはDB7で、手掛けたのはイアン・カラム氏。肉体美ともいえる造形は、高温で溶けた金属のような滑らかさも湛える。

テール周りのふくよかさは、1990年代のヴァンテージとも重なる。1950年代から1960年代のブランド黄金期にも劣らない、タイムレスな美貌すらある。映画007ダイ・アナザー・デイのボンドカーとしての活躍を、ご記憶の読者もいらっしゃるだろう。

ドライビングポジションは、ランボルギーニより一般的。玉座のごとく快適なレザーシートが、ドライバーを優しく包む。センターコンソールやスイッチ類に、フォード車での既視感を持つ。

ロータスとともに開発した、アルミニウムの押出成形材とカーボンファイバー製バックボーンを採用する、新しいシャシーも特長。その後のブランドを支える、VHプラットフォームの前身となった。

フォード製V6がベースの5.9L V12

フォードの一般的なV型6気筒デュラテック・ユニットがベースだったとはいえ、アストン マーティンの5.9L V型12気筒は素晴らしい。雷鳴のような、湿り気のある低音の迫力がたまらない。回転域の上昇とともに、洗練されたトーンへ変化する。

車重1875kgのヴァンキッシュを、低回転域から鋭く加速させる。スーパーカーに相応しい、たくましさがほとばしる。

カー・アイコニクス社にお持ちいただいたヴァンキッシュは、より速いS。最高出力527ps/7000rpm、最大トルク58.7kg-m/5800rpmを発揮する。ノーマルでは466psだった。

シリンダーヘッドは、吸気ポートや燃焼室の形状が異なる専用品。強化コンロッドで高圧縮比を与え、インジェクターも新しい。ECUもマッピングし直されている。パフォーマンスは、フェラーリに迫る。

近年ではデュアルクラッチかトルクコンバーター式のATが一般化しているが、21世紀が始まった頃は、高性能モデルへのオートメーテッドMTの採用が人気だった。クラッチ操作を、油圧などで自動的にまかなうユニットだ。

フェラーリやランボルギーニでもオートメーテッドMTが提供されており、アストン マーティンも新しい技術開発に取り組んだ。だが、あまり評判は良くなかった。

そのため、同ブランドのヒストリックカーを専門とするアストン マーティン・ワークス社では、MTへのコンバージョンを実施している。英国での費用は、2万1000ポンド(約319万円)を超えるものの、望ましいアップグレードといえる。

単体で乗れば間違いなく息を呑むほど速い

ただし、ムルシエラゴの繊細なタッチには及ばない。このヴァンキッシュ Sにも施されているが、クラッチのつながるポイントがペダルストロークの手前側過ぎる。シフトレバーも不自然に重い。バランスでは、最新のトルクコンバーター式ATの方が良いだろう。

トランスミッション以外は、ニューポート・パグネルの工場を出た時のまま。フェラーリ575 Mへ対抗するべく、アップグレードされたシャシーを備えている。

この仕様のシャシーは、2004年からヴァンキッシュのオプションとしてスポーツダイナミック・パッケージとして提供されていた。ヴァンキッシュ Sでは、強化されたV12エンジンに合わせるように標準装備だ。

サスペンションのダンパーはアップグレードされ、スプリングもレートが高く5mm短い。ブレーキは、フロントに378mmのディスクと6ポッド・キャリパーを装備。ステアリングレシオも20%クイック化されている。

単体で乗れば間違いなく息を呑むほど速いヴァンキッシュでも、この3台では最も重さを感じる。ムルシエラゴは1650kg、575 Mは1730kgで、1割ほど重たいのだ。しかし、その車重を手懐けるシャシーが興味深い。反応が正確で乗り心地も良い。

表面変化が激しい舗装では、ホイールの重さを感じる。シャシー剛性も完璧とまではいえないが、荷重が掛かると確かなグリップ力が返ってくる。

軽快な回頭性と強力な制動力

大きなV型12気筒エンジンがフロントノーズに載っていても、回頭性は軽快。挙動も掴みやすい。ブレーキの質感も素晴らしく、制動力は強力。ペダルの踏力で加減しやすい。

ヴァンキッシュの回頭性とブレーキングを活かすことで、意欲的にコーナリングできる。徐々にアクセルペダルを踏み込み、オーバーステアを漸進的に引き出す。トラクションコントロールが、程々の遊びを許してくれる。

とはいえ、ヴァンキッシュ Sが最も輝くのはスーパー・グランドツアラーとして乗る時間。高速移動は安楽で、贅沢な車内は快適至極。車内空間にもゆとりがある。

シルバーストーン・サーキットのパドックより、フランス・サルテ・サーキットまでのロードトリップが向いている。カー・アイコニクス社が販売するヴァンキッシュ Sは、簡単に買い手が見つかりそうだ。

もう1台、フェラーリ575 M マラネロは、そのカー・アイコニクス社を創業したスティーブン・ガノン氏のプライベートカー。息子のダニエルと、共同オーナーだという。

1996年に550 マラネロを発売したフェラーリは、後継として2002年から2006年に575 Mを生産した。3台では1番登場年が新しいが、乗り味の違いも小さくない。シャシーのダイナミックスさではアストン マーティンに勝り、使い勝手も良い。

575のMは、550からの進化を示している。イタリア語でモディフィケートの頭文字だ。見た目としては、ヘッドライトの違いがわかりやすい。

この続きは後編にて。

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