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メルセデス、26年ぶりのル・マンに向けて「学びの最中」。AMGにそっくりと噂の新型GT3には「一緒に戦える日が待ち遠しい」

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メルセデス、26年ぶりのル・マンに向けて「学びの最中」。AMGにそっくりと噂の新型GT3には「一緒に戦える日が待ち遠しい」

 メルセデス・ベンツCLRが参戦した1999年を最後にル・マンを去ったメルセデス・ベンツ。ドイツのブランドは今季2025年、イタリアのレーシングチームであるアイアン・リンクスと組み、ル・マン24時間レースをシリーズのハイライトに掲げるWEC世界耐久選手権LMGT3クラスへの参戦を開始した。彼らにとって3戦目となるレースが行われたスパ・フランコルシャンで、メルセデスAMGカスタマーレーシング責任者のステファン・ウェンドルに現在の状況や6月に控える24時間レースの3連戦、そして気になるハイパーカークラスへ関心について聞いた。

――スリーポインテッドスターが26年ぶりにル・マンに戻るシーズンは、早くも3戦のスパを迎えました。前半戦を戦ってきてどんな感想を持っておられますか?

アイアン・リンクスとメルセデスAMGがル・マン24時間のスペシャルリバリーを発表。ザウバー・メルセデスC9をオマージュ

ステファン・ウェンドル:「WECは非常に激しい競争をともなう非常にハイレベルのプロフェッショナルなプラットフォームだと感じる。私たちはシリーズへ参戦するにあたって課題と学習段階を想定していたので苦戦は想定内だった。しかし、レースを重ねるにつれて着実に進歩しているといえるだろう」

ウェンドル「メルセデスがWEC/ル・マンに再挑戦するにあたり、アイアン・リンクスへ多大な賞賛を送るべきだろう。私たちは非常に優れたチーム組織と高レベルのプロフェッショナルなチームと出会い、開幕戦カタールからスパまでの着実な道のりを感じられているうえに、ELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズでは初めての表彰台を獲得するなど、よい方向へ向かっている」

ウェンドル「まだトップを争うレベルにまでは達していないが、レースを重ねるごとにそこへ到達するまでの距離が大幅に縮まっていることは明らかだ。今後も少しずつステップを重ねて行くと確信している。この先の短期間で真の競争力が備わって行くというのが、アイアン・リンクスとメルセデスAMGの明確な目標であり、それは表彰台を目指すとともに、そこへ向かう戦闘力を備えるようになるということだ」

――LMGT3クラスはプロとアマチュアがチームを組んで戦うレースですが、経済力と高いスキルの両方を備えるジェントルマンドライバーは残念ながらそう多くはありませんので、組み合わせも簡単ではありませんね。

ウェンドル「モータースポーツではそれはノーマルなことだ。まず、WEC/ル・マンのコンセプトの一部であり、カスタマースポーツの基礎となる。アイアン・リンクスを含め、このクラスへ参戦するチームは、ジェントルマンドライバーだけでなく、将来有望な若手ドライバーやプロドライバーのニーズも考慮し、そのうえハードな耐久レースにおいて戦闘力のあるマシンの必要性にも特化しながら、総合的なパッケージとしての全体から最大限の成果を引き出さなければならない」

ウェンドル「戦略的な選択肢はたくさんある。誰がどのタイヤをいつ使うか、レースのどの時点でスティントするか、フルコースイエローで多少のリスクを負うのかどうか……これらすべてがレースを構成し、完走や勝利へと導くのだ。ドライバーやチームがよく機能していないと、ギャップが少し大きくなることもあるが、私はこれもWECの一部であり、とくにこのLMGT3クラスではごく一般的なことだと信じている」

ウェンドル「メルセデスAMG GT3は、とくにジェントルマンドライバー向けに非常によく調整され、実証された車両でもあり、その強みは高いレベルのドライバビリティとドライバーがコクピットで可能な限りストレスが少なく快適に過ごせるように、必要なフィードバックを提供することにある」


■通常GT3車両とLMGT3仕様の違い

――プロドライバーがリードしてシルバーやブロンズドライバーのコーチ的な役割も担っていますね。

ウェンドル「プロのドライバーはある意味、何でもこなさなればならない。一方で、とくにジェントルマンドライバーにとっては、自分のポテンシャルを最大限に発揮し、プロのドライバーとのポテンシャルの差、ラップタイムの差を可能な限り小さく抑えることができるように、フィードバックがしっかりとあるマシンをドライブすることが重要で、とくに劣化したタイヤで走行する場合は、マシンの良し悪しが決め手となる」

ウェンドル「私たちはWECに参戦するうえで、他のチームのハイパーポールでの1周のパフォーマンスを観察・分析しているのだが、ギャップを縮めてきている。メルセデスAMGの分析によれば、決勝レースでは劣化したタイヤでのスティントを乗り越えて一歩前進し、さらにライバルに近づくことができるかもしれないと考えており、予選後に分析して、最後のちょっとしたセットアップ・トリックを試してみれば、決勝レースで状況は改善するのではないかという考えでいる」

ウェンドル「車両はLMGT3用のホモロゲーションを取得しており、そのために一般的なGT3レースとは別にいくつかの点を変更する必要があった。車両を救助する必要がある際にマーシャルがボタンを押すだけでクラッチが切れて、ギアを解除した状態でマシンを転がせるようにするクラッチリリースや、水温が一定レベル以下に下がらないようにするにするサーモスタットなどがそうだ」

ウェンドル「アイアン・リンクスのメルセデスAMG GT3には遅くともル・マンまでにはWECのチームのほとんどが使用しているような単一バルブシステムを搭載する予定をしている。他にもドアパネルの表示システムも今季から追加されるなど、実際にレースの活動をしているアイアン・リンクスには大変な作業の毎日で、ル・マンに向けて準備作業に勤しんでいる」

 後日メルセデスAMGは、26年ぶりの参戦となる2025年のル・マン24時間レースに向け、アイアン・リンクスの61、62、63号車にグループC時代の『メルセデス・ベンツC9』のオマージュリバリーを施すとアナウンスした。

――アイアン・リンクスと組んでWEC/ル・マンに参戦することが決定したのは非常に急で、12月にロールアウトやメカニックやエンジニアのテクニカル研修が行われるなど、非常に慌ただしく準備をされたようですね。

ウェンドル「メルセデスAMGだけではなく、このプロジェクトに関わるすべての人々にはとんでもなく慌ただしい時間だったことは間違いなく、それはいまも続いている状態だ。

ウェンドル「昨年、WEC/ル・マンにLMGT3クラスが導入にされるにあたり我々はFIA国際自動車連盟、ACOフランス西部自動車クラブと話し合いを重ねてきた。本来ならばちょうど良い記念の年となる“25年ぶりのル・マン復帰”を望んでいたものの、交渉はうまくいかず、諦めざるを得なかった」

ウェンドル「急展開を見せたのは今年の開幕まで約3カ月に迫ったころだった。シリーズとWECにエントリーできることとなった。このプロジェクトは非常に遅れてまったく予期せぬかたちで始まったが、私たちメルセデスAMGはアイアン・リンクスと一緒に挑戦してみようと決心した。確かに、すべてにおいて少し遅れており、もう少し準備段階や準備時間があれば良かった思うのが正直なところだ。しかし、私たちはシーズンを進みながら少しずつ学んでいるところであり、チームは素晴らしい仕事をしてくれていて、少しずつだが他のチームに追いついていると思う」

――メルセデス・ベンツがWECに身を置き、レースをすることの魅力はなんでしょうか?

ウェンドル「世界選手権としてトップレベルのレースは、非常に魅力的なプラットフォームだ。他のニュルブルクリンクやスパ24時間レースをはじめ、数多くのシリーズでは同じブランド間で激しい戦いを繰り広げるが、ここでは対他のブランドやチームとの戦いになるのも、他のレースにはない魅力のひとつだろう。また、ハイパーカーとLMGT3の2クラス制というのも特別なインセンティブであると私は考えており、ファンはもちろんのこと、世界のメディアからの関心の高さを感じているところだ」


■新型GT3の登場はレクサスが先か、メルセデスAMGが先か

――今年はヨーロッパ三大24時間レースがすべて6月に集結し、メルセデスAMGでは非常に大変なスケジュールになりますね。

ウェンドル「そのとおりだ。メルセデスAMGのカスタマーレーシングに携わる従業員の数は限られており、残念ながらこの機会に人員を増やすことは不可能で、ル・マンとスパ、ニュルブルクリンクとスパなど、組み合わせはさまざまだがレースごとに分担して担当者を分けることになった。カスタマーレーシングの代表者である私は3つのレースにすべて帯同する」

ウェンドル「ただ、カスタマーチームたちにも私たちワークスから注意を払い気に掛ける必要があるだろう。とくに数多く存在するニュルブルクリンクとスパに連続参戦するチーム関係者にとっては、睡眠時間が著しく少なく体力的に非常に厳しいに違いない。クラッシュした際には夜通し修復作業を行う可能性もあり、さらに体力を消耗することになり集中力を継続させるのも厳しいため、クルーたちの仕事中の事故にも繋がりかねないからだ」

――とくに今年の欧州三大24時間レースは、メルセデスAMGにとっても非常に意義のある重要な三戦になりそうですね。

ウェンドル「私も含めて初めてル・マン24時間レースに参加するスタッフも多い。それだからこそ、今年はとても特別な6月になるだろう。26年目の時を超えてル・マンへ挑んだ後はニュルブルクリンク24時間レースだ。。メルセデスAMGのホームレースであり、この9年間はその頂点に立ててはいないだけに、今年こそは王座を奪回したいと願っている。そして、『24時間』を戦えることを切に願っている」(※編注:2024年のレースは悪天候のため短縮レースとなった)

ウェンドル「もちろん、多少のウエットコンディションはレースにより緊張感を与えて、レースを面白くする要素のひとつでもあるが、長時間に渡って雨や霧でレースをレッドフラッグが出るようなレースはもう誰も望んでいない。昨年はニュル、スパ、そしてル・マンのすべてのレースで悪天候が襲った。チーム関係者はもちろんのこと、サーキットへ足を運び、年に一度のレースを楽しみにしていてくれるファンのためにも天候に恵まれることを切に望んでいる」

ウェンドル「スパ24時間レースへは日本からGOODSMILE RACINGがふたたび参戦表明し、ドイツの強豪チームのラントグラーフ・モータースポーツとタッグを組んでカムバックしてくれたことを祝福すると同時に、TOYOTA GAZOO Racingドライバーである山中雄一と小高一斗の両選手がメルセデスAMG GT3を駆り、ノルディック・レーシングからスパへ挑戦してくれるというのも嬉しく思っている。スーパー耐久シリーズでもROOKIE RACINGが弊社のGT3カーで参戦しておりメーカーを超えたモータースポーツの縁に感謝している」

ウェンドル「パパラッチ写真やうわさによると、レクサスの新しいGT3マシンがメルセデスAMGとそっくりだと言われているだけに、それと一日も早く対面できることを願い、楽しみに待っている。レクサスが先なのか、メルセデスの方が先にデビューするのかは、まだ分からないが、両車が世界のレースで一緒に戦える日が待ち遠しい」

――ハイパーカークラスは新設された当初は非常に小さかったフィールドですが、近年非常に大きくなりました。さらにジェネシスやフォード、マクラーレンが新たに参入を発表していますが、シルバーアローはいかがでしょうか?

ウェンドル「もちろん興味があるし、とくにハイパーポールのパフォーマンスも観察している。もしも、あのフィールドにメルセデスAMGが並ぶとしたら……そんなことを私個人としても考えてしまうし、『モータースポーツ』という観点としても非常に興味を搔き立てるカテゴリーで、自動車メーカーが次々とそこへ参入するのもよく分かる。ただし、メルセデスAMGモータースポーツセクションの活動としては、F1とカスタマーレーシングにフォーカスしているため、この先の数年間でハイパーカークラスに参戦する予定は残念ながら、ない」

ウェンドル「メルセデスAMGのカスタマーレーシングでは、現在は新GT3の開発に精力を注いでおり、並行して新しいモータースポーツの開発部門を担う会社『アッファルターバッハ・レーシング』を立ち上げることから、現時点ではそれに多大なリソースが費やされている。現在は既存のビジネスとスポーツモデルを維持できるように全力を注いでいるんだ」

[オートスポーツweb 2025年05月16日]

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  • そにー製パスタ
    ハイパーカークラスへの参戦発表、楽しみに待ってます。
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