ロードスターオーナーにとっては「神様」的な存在の貴島孝雄氏。今回は、「日本カー・オブ・ザ・イヤー」の評議委員として多忙を極めるモータージャーナリストの山口京一さんを紹介する。
マツダ「技術開発本」の英語版を製作するほどの語学力
山口さんはモータージャーナリストになる前は、外資系の航空会社に勤めていた。その関係でとても英語が堪能だという。それもあり、ポールさん(ポール・フレール氏)とも親しくされていたようだ。クルマでは技術的なこと、とくにエンジンについて幅広い知識を有している。そんな山口さんと貴島さんの接点は、マツダ勤務時代に製作した英語版の技術解説書から始まる。
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「マツダの技術開発を発表する本を英語で作成する際に、山口さんにお願いしたんです。それこそ初代RX-7のころですね。ポールさんと同じタイミングでしょうか。ポールさんと同行されることも多かったので、通訳的なこともしてましたね。とにかく英語での表現力がすごいと、ネイティブからも一目置かれるほどでした。いつだったか成田空港で偶然お会いしたら、関係者に口をきいてくれ、シートをグレードアップしてもらったことがありました(笑)。顔の広さに驚きました」
「ご本人はその場でいろいろ言いませんが、記事のなかで評価してくれます。それらの記事は、あら探しはせずに良いと思った部分を強調してくれるんです。気になるところもあるはずなんですが、それよりも優れた部分を引き出してくれます。考えてみると、一流のジャーナリストはみんなそうだと感じますね。いろんなジャーナリストがいますが、その表現力には本当に舌を巻きます。温厚で話していてとても心地よく、自分の情報量も増えていきます」
会話の中で生まれる、さりげない「宿題」は、自分なりに調べて次の機会で話題に盛り込む。これが自分の中の情報量を増やすことにつながっていく。細やかな気使いが人脈を広げ、長く深い付き合いへと成熟していったのだ。
「2代目ロードスター(NB)の技術開発本の作成時に、広島でインタビューを受けていろいろ話しました。古いエンジンのことをよく知っていると思えば、新しい技術を否定することなく受け入れる。さすがですね」対モータージャーナリストの人間ではなく、人としての付き合いが深まる。
対モータージャーナリストではなく、人としての付き合いが深まる
印象に残っているのは、RX-7(FD3S)の完成間際にアメリカで試乗を行ったときのこと。
「当時テストドライバーだった小田さんが運転席に、となりに山口さんが乗って、真夜中のワインディングを走行したんです。テスト走行ですから、それなりの走りをするわけです。翌日の昼間に同じ場所を走行したら、ガードレールもろくにない崖地で『昼間だったらとなりに乗りません』って笑ってました。山口さんも運転は好きだと思いますが、レーシングドライバーではありませんから、一般ドライバーと同じ目線の評価もできる。これがすごく参考になるんです」
テストコースがサーキットだと、どうしても速いクルマが優れていると評価される。しかし、実際は路面が悪かったり高速道の継ぎ目があったりするものだ。それらを加味して評価できるのが、モータージャーナリストとしての魅力を広げている。
「九州で他社の試乗会があった時に、すぐに訪ねてきてくれて、ともに楽しい時間を過ごしました。以前はエンジニアとモータージャーナリストの関係でしたが、今は知人として付き合いを深めています」
貴島さんがマツダを退社し、大学の教授として学生フォーミュラに参加するようになった。すると、山口さんとは毎年顔を合わせることになり、ますます親交が深まっていった。
「うちの学生を自動車雑誌に載せてくれたことがあって、それを見てようやく学生たちは山口さんのすごさに気づいたみたいです(笑)。海外の0→100km/hが1.5秒なんてEVフォーミュラマシンの画像を見せてもらったり、学生たちもいい刺激になったと思います」
毎年学生フォーミュラの会場でお会いする楽しみも加わり、学生たちの成果を見てもらうことも、ひとつの課題となっている。貴島さんと山口さんは、これからも濃い付き合いが続いていくのだろう。
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みんなのコメント
アメリカの「Motortrend」「Road &Track」誌等海外の自動車専門誌に
レポートを寄稿される、日本のモータージャーナリストの中でも大変希有な存在の方ですね。
マツダご出身ということで同社のクルマが多いのですが、「RX-7」「RX-8」「MX-5」等
英文での著書も出されています。