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キャッチコピーが印象的だった80年代の日本車5選

掲載 更新 11
キャッチコピーが印象的だった80年代の日本車5選

小川フミオがセレクトした、思い出深いキャッチコピーと5台の日本車とは?

クルマにまつわる広告のキャッチコピーを眼にするだけで、それがうたわれていた時代に引き戻される気になる。1980年代には、まだまだ”力”のある宣伝文句が多かった。

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1990年代後半になってから、広告は、キャッチコピーよりもビジュアルが優先されるようになった。「クライアントである企業に対し、デザイナー出身のひとたちが“力”を持ってきた結果」という話をかつて聞いたこともある。

本当かどうかはわからないけれど、どきっとするような文字が、新車の橫に並べてあるのを見たときの、あの嬉しい驚きよ、ふたたび。という気分はいまも強い。

「広告は商品を“売る”のが目的なので、ターゲットの心を揺さぶり、売りにつなげたコピーが1番優れたものです。とはいえ、売れなかったとしても、(CM映像とセットで)気持ちがよい、面白いと、生活者の記憶に残るコピーも優れています」

大手広告代理店でプランナーを務める知人は、制作サイドで、キャッチコピーがどうとらえられているかについて、解説する。

「また、評論家等に”時代を先取りしている・時代をあらわしている・今までなかった・言葉の使い方が秀逸”などと評価されるコピーも優れていると言われます」

1980年代は日本のクルマづくりに(もっとも)活気があった時代だ。送り出される広告は多く、楽曲や、キャッチコピーも、極端にいえば、おぼえきれないほど現出した。

なかで強く記憶に残っている広告のひとつは、いすゞが1985年に発売した「FFジェミニ」のものだ。ゼネラルモーターズとの関係を持ついすゞが開発を担当した前輪駆動車で、シボレーブランドとして米国でも販売された。

ジェミニのキャッチコピーは「街の遊撃手」。遊撃手は野球において守りの要といえるショートのことだ。このコピーがよく記憶されているのは、スタントを使ってパリの街中で撮影した動画の出来のよさゆえ。

あちらのスタントの会社が、2台のジェミニが舞踏会におけるすぐれたペアのように片輪走行をさせたり、ジャンプをさせたり。メトロの中に降りていって構内を走る、なんていうバージョンもあったように記憶している。

暴力的なスタントになっていないのは、楽曲の選択ゆえだ。チャイコフスキーの『くるみ割り人形』中の『花のワルツ』など、軽やかな名曲を使いこなしている。制作を担当したマッキャンエリクソン博報堂、エラい。

1980年代といえば、1983年登場の3代目ホンダ「シビック」もかなり強いインパクトを持っていた。冒頭に、ルイ・アームストロングが唄う楽曲『What A Wonderful World』のタイトルが現れ、最後に「ワンダーシビック誕生」と出る。

英語に頼ったことでIQが高めのコマーシャルともいえるけれど、これがウケて、楽曲は日本人の心の歌としてアーカイブ入り。クルマも、別に“ワンダーシビック”という車名ではないのに、ワンダーシビックというだけで、コマーシャルのすべてが記憶によみがえるのだった。

どうして、このようなコピーが出てくるのだろう。

「会社の体質に合わせたプレゼンの“説得力”としか言い様がありません。(担当した広告代理店では)会社のDNAや、宣伝担当役員や部長の好みを探って、それに合わせていきます」

さきの広告代理店のプランナーが説明する。

「たとえば……”ともかく調査データ(事前コピー評価調査)重視””競合がやってないこと重視””ともかく目立つこと重視””先進的に思われること重視”などクライアントが優先することはさまざまです」

すべてが合致すると、消費者の印象に強く残る広告が生まれるのだ。

「しかしだいたいにおいて、テクニックとして、捨て案である第2案と第3案をまず出して、最後に第1案を提出します。それによって、私たちのイチオシを選んでもらうよう仕向けます。ときどき、捨て案が選ばれたりしますが(笑)」

話がそれました。このへんで、1980年代の記憶に残るクルマ広告のキャッチコピーから、代表的なものを含めて5つ選び出してみよう。

(1)「名車の予感」~トヨタ「マークII」(6代目)

5ナンバー枠ぎりぎりまで全幅を拡大し、ホイールベースも2680mmまで伸ばした1988年登場の6代目トヨタ「マークII」。エンジンも2.0リッター直列6気筒「ツインカム・ツインターボ」をはじめ、なんと7種が用意された。

スタイリングは加飾が控えめで、エレガント。1984年登場で“ハイソカー”というある種のブームを牽引した5代目からすると、だいぶ地味な雰囲気であるものの、完成度は高い。プロポーションを含めて、マークIIの頂点といってもいいかもしれない。

「名車の予感」という、ちょっとアンダーステイテッド(控えめ)な表現をよく使ったものだと思うけれど、逆に、放っておいても、販売店に客が来た時代ならではともいえる。

テレビコマーシャルのキャラクターは、5代目に引き続き松本幸四郎。楽曲は、米映画『ザ・ライトスタッフ』のオーケストラによるテーマ。すべてにおいて、はなやかさと重厚さをミックスしていたと思う。

クルマは、リアのサスペンション形式がセミトレーリングアームからダブルウィッシュボーンになるなど、欧州車志向を採り入れていたのが印象的だった。操縦性が従来に比べうんと向上し、トヨタのプロダクトが新しい時代に入ったなあと思わせられたものだ。

(2)「ブルーバード、お前はスーパージェネレーション」~日産「ブルーバード」(7代目)

ブルーバードは初代が1959年に登場し、1996年から2001年まで作られた10代目までモデルチェンジを重ねた。長い歴史のなかで、もっとも印象に残るキャッチコピーといえば、1979年の「910型」で沢田研二が口にする「ブルーバード、お前の時代だ」だろう。

続いて1983年に出た7代目「U11型」でも、ジュリーが登場。ダンスを含んだにぎやかな映像の最後に、「ブルーバード、お前はスーパージェネレーション」と口にする。

このU11型、じつはブルーバード史のなかでも画期的なモデルだ。なにしろここから前輪駆動方式が採用されたのだ。くわえて、V型6気筒エンジン搭載の「ブルーバード・マキシマ」も設定された。バブル経済を背景に車種拡張路線のとば口に立った日産自動車の、ターニングポイントに登場したモデルとしても記憶に残る。

ただし、U11型は、ホイールベースこそ910型より25mm延びたが、サイズ的にはほぼ変更なく、スタイリングも強いキープコンセプトで、本当に自信をもってモデルチェンジしたのか? と、ちょっとがっかりした。

当時の日産車の技術力は日進月歩というかんじだったので、乗れば、楽しめる操縦性を備えていたのが、救いである。スーパージェネレーションの真意は知らないのだが、”世代が新しくなっても本質は変わらない(だからついてきてください)”とのファンへのメッセージだろうか。

(3)「ワンダーシビック」~ホンダ「シビック」(3代目)

1980年代、ホンダの広告は冴えていた。なかでも「シビック」、「クイント」あたりから下の、当時、若者をメインターゲットにしたプロダクトのコマーシャルは楽しかった(遠い目)。

1981年登場の「シティ」はマッドネスを起用しての「ホンダホンダ……シティシティ」だった。いっぽう1983年のシビックは、ジャズボーカルによりしっとり。平原のようなところに赤いシビックが置かれた映像も美しかった。

先代にあたる2代目シビックは、大ヒットした初代のアップデート版というぐらいキープコンセプトのスタイリングだったこともあり、3代目は衝撃的なモデルチェンジであったのだ。

キャッチコピーの「ワンダーシビック」もユニークだった。言語的なメッセージはなにもない。それでいて、なんとなく、メーカーの言いたいことが伝わってくる。

2代目が「スーパーシビック」と呼ばれ、1987年の4代目が「グランドシビック」とされたが、意味を感じたのはやっぱり驚きのあった「ワンダーシビック」(のみ)。

クルマとしては、足まわりのストロークが足りなかったり、パワーがもうすこし欲しかったり、当時のホンダの生産設備の事情で2380mmしかないホイールベースによるやや窮屈な室内など、いろいろ不足ぎみなところもあったけれど、クルマの評価を超越した人気ぶりだった。広告による力だ。

(4)「インテリアイズム」~マツダ「ペルソナ」

デザインのマツダは、昨日今日はじまったイメージでない。1988年に発売されたピラーレス4ドアハードトップの「ペルソナ」の、冒険的なデザインには驚いた。

「インテリアイズム Interior-ism」がキャッチコピー。それほどインテリアの造型に注力したモデルだった。とりわけ、ダッシュボードから後席までパッドでぐるりと囲んだテーマは斬新。いわゆるアンコの詰まったぶ厚いクッションの革張りシートのデザインとともに、一目見たら忘れられないものだ。

後席はとくに“ラウンジ”などと評された。テレビコマーシャルで流されたのは、西独(当時)と米国合作による映画『バグダッドカフェ』(1987年)で使われて大ヒットした楽曲『コーリングユー』で、その静謐なメロディもよく合致していた。

特筆すべきは、この映画の日本公開(1989年)より前に、『コーリングユー』を流したセンスだ。通常は、楽曲が持つイメージ想起性にも頼るものだが、それもなく、トンガッたコマーシャルだった。リアシートの映像を観ながら、あそこに座ったらいい気分になれそうだなあと思わせたのだ。

あいにく、デザインの面では、外観があの洒落た内装のイメージについていけてなかった。運動性能も、速くもなく遅くもなくで、印象に強く残るものがない。最大の欠点は、リアシートの狭さだ。

丸く囲むというイメージが先行しすぎた結果、乗員の身体のホールド性は悪いし、座面は短く、大腿部の接触がいまひとつで、橫Gがかかると、後席乗員はふんばりが効かなかった。

コンセプトはおもしろいけれど、十全なかたちで実現するなら、ホイールベースは2575mmよりももっと長くして、ボディ全長も4550mmよりもっと余裕をもたせられればよかったのだろう。

(5)「街の遊撃手」~いすゞ「ジェミニ」(2代目)

モデルチェンジでイメージががらりと変わったのが、1985年登場の2代目いすゞ・ジェミニだ。そのあと1990年のフルモデルチェンジでまた大きくイメージが変わる。

1974年登場の初代は、オペル「カデット」の設計をベースにしたものだったとはいえ、味のあるいいクルマだった。後期にはスポーティな後輪駆動の「ZZ/R」が設定されるなど、スポーティなクルマ好きに支持されていた。それだけに、前輪駆動化されて(ある意味)都会的になった2代目は、物足りなさを感じさせた。

それを払拭するような、衝撃的なコマーシャルだった。ワルツに合わせて踊るような2台のジェミニ。ぶつからないの? と、驚きながら、パリの街中を縦横無尽に走るまわるさまを凝視したものだ。今度はメトロの構内に入れちゃうの! とか、豊かなアイディアにも感心させられた。

いまなら、CGだと思われるのが関の山かもしれない。これを当時はスタントチームが担当していた。そこに出てくる「街の遊撃手」のキャッチコピー。野球の守備におけるショートのことだ。その意味を知らなくても、アクティブなイメージが伝わるだけのインパクトはあったのである。

「”街の遊撃手”は、ターゲットの心を揺さぶり、生活者の記憶に残り、さらに今までなかった、という、すぐれたコピーです。奇跡的な運転テクニック映像にワルツとういう組み合わせ。さらに、遊撃手という非日常的なコトバで、CMが流れると、テレビに釘付けでした」

広告代理店のプランナーは当時を振り返って、そう語った。もういちどこのコマーシャルのようなものを作ってもらえないだろうか。「CGを使っていません」という文言を添えて。

文・小川フミオ

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みんなのコメント

11件
  • キャッチコピーが「FFスーパーボルテージ」という意味不明気味だった2代目ホンダプレリュードのCM、それよりもCMに使われていたクラシック曲、ラヴェルのボレロの印象がとても強かったですね。
    以降、クルマのCMにクラシックを使う例が結構増えましたから。
  • 「背中には ふたりを酔わせる ハートがある」

    初代・トヨタMR2のキャッチフレーズですね。

    シビレました…
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