「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、トヨタ ヴィッツだ。
トヨタ ヴィッツ(2010年:フルモデルチェンジ)
40~50歳代に入り、子どもの手が離れた(親と遊んでくれなくなった)世代になると、フル乗車の遠出はめっきり減り、大きいクルマに乗る必然性は薄まる。ならばコンパクトな方が小回りも利き、燃費も良いはず。そこで家のクルマをダウンサイズしようと考える人は少なくない。だが、真剣に候補を考えると、これがかなり悩ましい。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
人生経験もそれなりに積んでいるから、小さい=価格が手頃=質感もそれなり、となるのはわかっている。過剰な豪華さや、いたれり尽くせりのホスピタリティをコンパクトカーに望む気持ちはない。けれど、やはりオヤジの美意識にそれなりに応えてくれるクルマでなくては食指が動かないのも事実。要するにダウンサイズに納得できる魅力を備えているかどうかが重要だ。
カテゴリー的には、Bセグメントの王道を行く5ドアハッチバックになるだろう。ハイト系も悪くはないが、ひとりふたりで乗る機会が圧倒的だから広さは優先事項ではない。デビューしたばかりの新型ヴィッツは、まさに格好の1台と言えるわけで、1.3F スマートストップパッケージに試乗してみた。
スタイリングは、V字のノーズや前傾したキャラクターラインなどでかなり精悍な雰囲気になった。ちょいとモッコリしていた先代に比べると男性志向は強くなったようだ。どっしりした安定感も感じさせてくれる。インテリアでは、先代までのセンターメーターをやめて、オーソドックスなレイアウトとなった。グレードごとに内装色は違うので、雰囲気はけっこう変わる。
アイドリングストップの出来は最良といえる
前席の頭上や足下の余裕は、さほど広くないが、落ち着きのある空間だ。収納スペースも助手席側に多いが多彩だし、買い物アシストシートはかなり便利でオススメ。後席の広さもまずまずだが、前後席ともピラーが頭に近くてやや圧迫感があるが、旧型よりは居住性は向上している。99%UVカットのガラスや快適温熱シートなど、快適装備は充実しており、かっこが良くて居住性も向上したのだからポイントは高いといえるだろう。
走ってみると、新開発の1.3Lエンジンは低速トルクがキッチリ出ていて、CVTが低い回転域を重点的に使う。なので特に高速巡航で燃費は伸びた。加速フィールや静粛性もクラストップレベルにある。加減速の激しい市街地では燃費は伸びにくかったが、これは車両重量やアイドルストップの頻度などによるものだろう。エアコンの温度設定などによって、ヴィッツはエンジンが止まらないこともけっこう多かった。
だが、ワンウエイクラッチを使って再始動のレスポンスと低振動を実現したこのシステムは、現時点でクラス最良の出来と言っていい。ただ、今のところベースモデルの「F」にしか設定されていないのが辛いところ。タコメーターなしのワンメーターで、インテリアもシンプルに徹してしまう。
乗り心地の面は、やや期待外れだった。路面の継ぎ目に敏感なプルプルした乗り心地が少し気になった。とはいえ、街中での運転のしやすさは文句なしだし、全体的な完成度は高く、最新の5ドアハッチバックとしては十分に満足できる1台に仕上がっていた。
■トヨタ ヴィッツ 1.3F スマートストップパッケージ 主要諸元
●全長×全幅×全高:3885×1695×1500mm
●ホイールベース:2510mm
●車両重量:1000kg
●エンジン種類:直4 DOHC
●排気量:1329cc
●最高出力:70kW<95ps>/6000rpm
●最大トルク:121Nm<12.3kgm>/4000rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:横置きFF
●10・15モード燃費:21.8km/L
●タイヤ:165/70R14
●当時の車両価格(税込):135万円
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みんなのコメント
評論家の言う事など微塵も信用できない。
なお、その後マイナーチェンジでデザインだけ逆方向に暴走した