■オークションで、フェラーリ「275GTB」が2億円割れ
やはり、新型コロナウイルスによる経済の先行き不安の影響なのか。それともクラシック・フェラーリ自身のバリューがすでに頂点を超えてしまったのか。
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2020年7月22日開催されたRMサザビーズの、「オープンロード・ヨーロピアン・サマー・オークション」での、あるロットのリザルトを見て、世界中の多くのオークション・ウォッチャーは愕然としたのではないだろうか。
●人気モデルのロングノーズ、アロイボディ仕様でも応札が減少
RMサザビーズが、事前に予想落札価格を170-190万ユーロ(邦貨換算約2億108万円-2億3560万円)と発表していた、人気のクラシック・フェラーリ「275GTB」が、その数字には大きく届かず143万ユーロ(同1億7732万円)で入札を終了したのである。
予想落札価格に届かなかった理由は、いくつか考えられる。
今回のオークションは、コロナ禍ということで、これまで同様にオンラインでおこなわれたこともあり、詳しく出品車のコンディションを調べることができなかった。まず、これは大きな理由のひとつだろう。
そして実際に落札した場合、車両をスイスまでピックアップに行かなければならないことも理由に挙げられる。
また、会場で開催されるオークションの場合は、独特の熱気にのまれて落札価格が釣り上がるケースもあるが、オンラインのオークションでは冷静に入札できるということも理由にあるだろう。もちろん、コロナ禍によって、クラシックカーの価値そのものが今後も維持されるのか否か、不安に感じていることも落札価格に影響しているだろう。
このように、さまざまな理由が重なったという事情はあったにせよ、275GTB、しかもコレクターには人気のロングノーズ&アロイボディ仕様に、これだけの応札しかなかったのには、改めて驚かされるところだ。
クラシックフェラーリの価格は、クラシックカー業界全体の指標にもなることもあるため、275GTBの落札価格が想定以上に低かったことは、大きなショックである。
■2億円超えは当たり前だったフェラーリ「275GTB」とは
それまでの「250GT」の後継車として、1964年のパリ・サロンで275GTBは誕生した。
スタンダードなボディのほかに、いわゆるロングノーズ仕様も1965年には登場し、それによって空力も大幅に改善されている。
●FRを貫いたフェラーリ
ライバルのランボルギーニは、すでにV型12気筒ミッドシップの時代を迎えようとしていたが、フェラーリは頑なにフロントエンジンに固執。実際にはこの275シリーズの後継である「365GTB/4」(デイトナ)まで、フロントエンジンの時代は継続することになる。
とはいえ、275GTBに技術的な革新がなかったわけではない。例えば出品車の3.3リッターV型12気筒エンジンは3キャブレター仕様で280psを絞り出していた。
さらにカスタマーが6キャブレター仕様を望めば、20psアップの300psというパワーを275GTBに与えることもできた。
このエンジンに組み合わされる5速MTは、デファレンシャルとともにリアに搭載するトランスアクスル方式だが、今回出品されたS/N:08193には、後に4カムのGTB/4で採用されたトルクチューブとCVジョイントが与えられている。
実際にオンラインで見るS/N:08193のコンディションは、いわゆるコンクール・コンディションというものではないが、適度な走行感があって逆にそのままドライブを楽しむにも、これからレストアを始めるにも、最適といえるコンディションのようにも思える。
しかしながらオークションの結果は、前で報告したとおり最低落札価格に大きく届かなかった。
ちなみにRMサザビーズの次回のビッグ・セールである8月のペブルビーチ・オークションも、今年はオンラインでの開催となる。フェラーリの相場はこのまま下がり続けるのか、あるいは一時的な落ち込みで止まるのか。その結果に大いに注目したい。
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