初代の人気の影にあった2代目GTI
text:John Evans(ジョン・エバンス)
translation:KENJI Nakajima(中嶋健治)
読者の年齢にもよると思うが、ビッグバンパーのMk2 GTI 16vと聞いて、ワクワクするだろうか。まったく響かない、という人もいるだろう。
当時としては、最も速いホットハッチではなかったし、魅力的なデザインには見えなかったかもしれない。だが初代ゴルフGTIを上品にし、角を丸めた仕上がりを狙っていた。
フォルクスワーゲン製のホットハッチを運転したいと思っても、新車当時はお金がなく、手にすることが叶わなかったドライバーもいるはず。もし少しの余裕があるのなら、今こそ思いを叶えるチャンスだ。
長年、2代目ゴルフは初代ゴルフの影に隠れてきた。しばらくして好機が訪れるかと思いきや、偉大な5代目ゴルフGTIが2003年に登場。同時にプジョー205 GTiの人気が先行した。
近頃は初代ゴルフGTIとプジョー205 GTiの中古車価格はうなぎのぼり。ついていけないドライバーが、2代目GTIへ目を向けるようになった。極上車の価格が高いことは確かだが、それは以前からも同様だ。
かなり走行距離が多くても、悪くないクルマが中には残っている。ほどほどの信頼性があり、ノーマルに近い過走行車なら、英国では1800ポンド(24万円)程度から見つかる。個人売買の中には、価格を500ポンド(7万円)くらい上乗せしている場合もある。
しっかりクルマを見て選びたい。多くの人はまだ価値に気付いていない。中古車が売れ残り、焦っている可能性もある。
定期的にメンテナンスを受けていれば、過走行車でも必要以上に恐れる必要はない。そのかわり、サビの進行はいかんともしがたい。
より速く、快適で、モダン
2代目ゴルフGTIが発表されたのは1984年。1.8Lの8バルブエンジンから111psを絞り出した。1985年モデルからは、油圧タペットが採用される。タペット音が冷間時にうるさいが、オイルが充分に回れば静になる。
その1年後には16バルブのGTIが登場。139psを獲得した。速く低く、高回転型で訴求力は高いが、8バルブ・モデルの方が運転はしやすい。とはいえ中古車の場合、何よりも状態を優先するべきだろう。
1987年にはマイナーチェンジを受ける。フロントの三角窓がなくなり、車内のスイッチ類のレイアウトが変更となり、フロントグリルのフィンが5本になった。
ゴルフ・ファンの間では、1987年以前のゴルフはタイプ19ゴルフと呼ばれている。そうすることで、より車の価値も実感できる。
1989年になるとさらにフェイスリフトを受け、話題となったビッグバンパーが採用される。スモークレンズのフォグライトが一体となったスポイラーも追加された。オークグリーンかブラックのボディに、BBS製のアルミホイールを履いたビッグバンパーが、最も2代目ゴルフGTIっぽいと思う。
驚くなかれ、パワーステアリングが全車に標準装備となったのは1990年から。1991年になると、8バルブ・エンジンのクルマも16バルブ・エンジンと同じサスペンションと、パワーウィンドウが与えられた。
何より重要なのは、整備記録とクルマの現状。初代の引き立て役にまわってきた2代目GTIだが、多くの点で初代より良くはなっている。より速く、快適で、モダン。手頃なクルマがある内に、手にしておくことをオススメしたい。
不具合を起こしやすいポイント
エンジン
ロッカーカバー・ガスケットとカムシャフト・オイルシールからのオイルのにじみを確認。ガスケットの不具合に伴う、クーラントとオイルが混ざることで起きる乳化や、点火系とインジェクションの状態もチェックポイント。
不安定なアイドリングは、アイドル・コントロールバルブの不具合が原因かもしれない。タイミングベルトの交換歴は確認したいが、購入後はとりあえず新調した方が無難だ。
電気系統
長期間放置されていたクルマなどの場合、水が車内に侵入し、湿気で電気系統が痛む。すべての電気系統が正常に動くか確認したい。パワーウィンドウやエアブロワー、ライトや計器類など。
トランスミッション
5速目のギアはトランスミッション内の高い位置にあり、オイル量が減ると潤滑不良で故障を引き起こす。リンケージロッドの磨耗で、変速フィールが悪くなることがある。
サスペンションとブレーキ
ステアリングに伝わる異常振動がないか、試乗で確かめたい。ドライブシャフトの劣化や、ホイールバランスなどが原因。ステアリングに伝わるコツコツという感覚やダルいフィーリングは、ブッシュ類の磨耗。
ダンパーやドライブシャフト・ブーツの状態も確認しておきたい。
ボディ
サイドシルやサブフレーム、フロント・バルクヘッド下部やフロントシャシー周り、バッテリートレイ付近などのサビに注意。ホイールアーチや給油口カバー、ドアの下部、サンルーフやフロントガラスの周辺も錆びやすい。ドアハンドルの動きがスムーズかも確かめたいところ。
インテリア
ひどく傷んでいるクルマは避けたい。天井の内張りが垂れてくるのは珍しくない。イーベイなどのウェブサイトを探せば、状態の良いシートやダッシュボードが安価に手に入る。
オーナーの意見を聞いてみる
ライアン・ジョーンズ
「6カ月ほど楽しんだゴルフGTIを手放しました。1989年式で18万9900kmくらいの走行距離です。当初3000ポンド(40万円)で個人売買するつもりでしたが、2300ポンド(31万円)に値下げ。最終的に1800ポンド(24万円)で手放しました」
「決して最上級の状態ではありませんでしたが、信頼性は良かったです。燃料ポンプが詰まったことくらいでしょうか。サンルーフからの水をクルマ後方へ流すドレインが錆びて詰まり、天井の内張りやフロアを湿らせていました」
「整備は難しくなく、大変なことは大きなボルトを外すことくらい。購入するなら整備記録を見て、定期的に走ってきたのか見ておくと良いでしょう」
知っておくべきこと
英国編集部の周りに2代目ゴルフGTIを所有したことのある人はいないようだが、英国にはファン同士が集まる専門ウェブサイトがいくつかある。整備内容や技術的な知識は役に立つはず。入手困難な部品についての情報も得られるだろう。
いくら払うべき?
500ポンド(6万円)~1799ポンド(24万円)
重大なメカニズムの不具合はなくても、整備前提のクルマ。
1800ポンド(25万円)~2499ポンド(33万円)
状態は程々の、過走行車が中心。
2500ポンド(35万円)~3699ポンド(49万円)
状態の悪くないクルマが増えてくる。英国では、25万kmくらい走っているが、整備記録が整った状態の1988年式が3500ポンド(47万円)ほど。
3700ポンド(50万円)~4999ポンド(66万円)
1990年式の状態の良いクルマが混ざってくる。後期型、ビッグバンパーの8vも。
5000ポンド(67万円)~7499ポンド(100万円)
状態の良いビッグバンパーの8vや16vが出てくる。20万kmほど走ったオークグリーンの1991年式16vが、6995ポンド(94万円)で見つかった。
7500ポンド(101万円)~1万ポンド(135万円)
ほぼ完璧な、状態の良い低走行距離の車両が見つかる。1987年式で9万6000kmほど走ったGTIが8995ポンド(121万円)だった。
英国で掘り出し物を発見
フォルクスワーゲン・ゴルフ1.8 GTI Mk2 登録:1990年 走行:27万3587km 価格:2995ポンド(40万円)
もとオーナーのライアンも売買で苦戦したようだが、このクルマは悪くなさそうだ。サビが少なく、新しい部品に交換されているカ所も多い。走行距離は無視しても良いだろう。
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みんなのコメント
ヨーロッパではまだ記事の中の値段で確かに買えるみたいだけど、日本では下の中くらいのレストアベースで100万〜、上だと200半ばって感じになっちゃったし、海外でも国内でもここ数年でかなり値上がりしてきてるから、欲しい人は今のうちに買っとかないと、Mk1GTIみたいに遊び車としては手が出しにくい値段になりそうですよ。