PHVが抱える選択の壁
自動車の電動化が世界的に進むなか、日本でも電気自動車(EV)への期待が高まっている。だが、充電インフラの整備状況は都市部と地方、戸建てと集合住宅といった居住環境によって大きく異なる。EVが「誰にでも使えるクルマ」になるには、まだ多くの課題が残っている。
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それにもかかわらず、電気とガソリンの両方を使えるプラグインハイブリッド車(PHV)は、消費者の選択肢としてあまり注目されていない。EVやハイブリッド車(HV)の陰に隠れた存在となっているのが現状だ。
理屈のうえでは万能ともいえるPHVが、なぜ
「中途半端」
と見なされてしまうのか。その背景には、構造的な矛盾が潜んでいる。
日本市場特有の防災価値
EVはゼロエミッションであるため、環境対応車の理想形とされることが多い。しかし、航続距離の短さや充電時間の長さ、インフラ整備の遅れなど、実用面で多くの課題が残る。一方、PHVは家庭で普通充電ができ、電力がなくなってもガソリンで走行可能だ。遠出もでき、普段はEVのように使える「二刀流」の柔軟性が最大の強みである。
実際、トヨタや三菱はPHVを電動化戦略の重要な軸としている。トヨタはプリウスPHEVやRAV4 PHVを、三菱はアウトランダーPHEVを主力に日本市場だけでなくグローバルでも展開している。バッテリー電気自動車(BEV)一辺倒ではなく、PHVを含めた多様な選択肢を用意し、移行期の需要を広く取り込もうとしているのだ。
日本市場では、こうしたグローバル戦略とは別に、
・災害リスク
・住宅事情
がPHVの存在意義を支えている。停電時にも走行と給電が可能なPHVは、防災性能の高い車として一定の評価を得ている。単なるエコカーの枠にとどまらない役割を持つのだ。
充電環境の未整備による課題
理論上は万能に見えるPHVだが、実際にはその特性を十分に活かせていないユーザーが多い。欧州委員会が2024年3月に発表した調査によると、欧州連合(EU)で販売されたPHVの実走行CO2排出量は試験値の約3.5倍に達した。これは充電頻度が低く、電気モードでの走行が想定よりも少ないことが主因とされている。つまり、理論上の「EV的運用」が現実には実現されていないことを示すデータだ。
日本でもPHVの運用には同様の課題があると考えられる。最大の理由は充電環境の不整備にある。特に都市部や集合住宅では自宅に充電設備を設けることが難しいケースが多い。また、外部充電スタンドは台数や稼働率、料金設定にばらつきがあり、「わざわざ充電するより給油したほうが楽だ」という行動につながりやすい。
その結果、PHVでありながらガソリン走行のみで使われる車両も多い。ユーザーによっては
「ただの重いHV」
となってしまっている。メーカーが想定したEV的な運用は、現状ではまだ広く浸透していない。
制度面でもPHVはEVやHVに比べて中途半端な立ち位置にある。例えば、国の補助金制度ではEVに比べ対象範囲が狭く、補助金額も限定的だ。自治体によっては支援対象外となる場合もあり、ユーザーには分かりづらい。
メーカーのプロモーションも一貫性に欠ける。PHVを「EVのように使える」とアピールする一方、実際は従来のガソリン車と共通のグレード体系や装備、価格帯で販売されていることが多い。そのため消費者にはEVらしい革新性や特別感が伝わりにくく、期待とのギャップが混乱を招いている。さらに、
「EVと何が違うのか」
「なぜPHVを選ぶべきか」
といった訴求が不足している。PHVの強みが十分に伝わっていない点も無視できない。このようなミスマッチがPHVを「分かりにくい」「中途半端」と感じさせ、市場での印象を弱めている。
その結果、「あえてPHVを選ぶ」という動きが出にくくなっている印象が強い。実際にPHVを購入したユーザーの一部は充電せずHVのように使用し、本来想定された使い方がされていない現状がある。
PHVの給電力と実績
PHVの真価は非常時に発揮される。電気とガソリンの両方が使えるため、災害でどちらかの供給が途絶えても走行手段を確保しやすい。大規模災害では電力インフラが断たれることもあるし、ガソリンスタンドの営業停止や供給制限が起きることもある。EVは電気がなければ充電も走行もできないが、PHVは電気かガソリンのどちらかが確保できれば走り続けられる。この「二重の備え」が非常時のPHVの実用性を支えている。
給電機能はEVにもあるが、PHVはバッテリーがなくなった後もエンジンを使った発電で給電を続けられる。これは停電時の冷蔵庫や通信機器の維持、避難生活での照明や暖房に役立つ。移動手段と電源供給を両立できる点で優位性を持つ。
実際に三菱のアウトランダーPHEVは過去の震災時に自治体や医療施設で電力供給車として活用された実績がある。また、V2H(Vehicle to Home)と連携し、日常的に「動く蓄電池」としての役割も期待されている。
災害リスクが日常化する日本では、「どちらか一方でも確保できれば使える」というPHVの「二重保険」の価値は、単なる環境性能や燃費効率を超えて生活インフラとして成立している。こうした背景を踏まえれば、PHVを「中途半端」と切り捨てるのは早計である。
電動化過渡期の選択肢
PHVは構造的に非常に完成度の高い技術である。電動化と実用性のバランスを保ち、災害時には命を守るインフラにもなり得る。にもかかわらず、中途半端と見なされるのは、
・ユーザー
・制度
・マーケティング
のいずれか、あるいはそのすべてが使いこなせていないからに他ならない。
PHVを万能にするか中途半端にするかは、使う側にかかっている。電動化の過渡期において、PHVという選択肢を正しく理解し活用することは、単なる移動手段にとどまらず、社会全体のレジリエンス(回復力)を高める上でも重要だ。(春宮悠(モビリティライター))
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みんなのコメント
1クラス、2クラス上の価格だからね。
さすがに動力源だけでその価値を感じるかというところ。