積算8415km 減りの少ないミシュラン
text:Richard Lane(リチャード・レーン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
英国仕様のトヨタGRスープラが履くタイヤは、ミシュラン・パイロット・スーパースポーツ。とても素晴らしいパフォーマンスのタイヤだと思う。
今回、残り溝の深さをデジタル計で測ってみたのだが、約8000kmを走行したあとで1.5mmも減っていなかった。高速道路が中心だったとはいえ、チャレンジングな道では積極的な運転を楽しんだにも関わらず。ミシュランの技術力には脱帽だ。
積算8832km A90の後継としての高い期待
新しく生まれ変わったトヨタ・スープラ。筆者は編集部で若い部類に入るが、それでもどっぷりクルマ好き。
1990年代のA80型スープラの後に誕生したのが、A90型スープラ。北米のチューニング文化とハリウッド映画のおかげで、スープラの金額は手に届かないところにまで吊り上がっていた。
その後継として誕生したトヨタGRスープラへの期待は、極めて高かった。並外れた何かを期待していたところもある。非現実的なものを。
トヨタが実際にわれわれへ授けてくれたのは、339psを発揮するジュニア・グランドツアラーと呼べるようなクルマだった。スタイリングはフェラーリF12ベルリネッタに通じるテーマを備え、メカニズムはBMWが供給している。
価格は、約5万4000ポンド(756万円)。高いと感じる人もいるはず。でも、オールドスクールなスポーツカーの存亡が危ぶまれる中で、悪い内容とはいえないだろう。
BMWと構造を共有することのメリット
トヨタGRスープラは完璧ではない。編集部へ来た当初から、アイデンティティには複雑さを感じた。このクラスのスポーツカーとして、ハンドリングのシャープさには物足りなさがあった。
日本のスポーツカーは、従来から個性的で一風変わったところがある。マツダRX-8やホンダ・シビック・タイプRも、ハイブリッドの最新のホンダNSXも。ましてGRスープラは、BMW Z4と多くを共有している。シンプルにいかなくて当然かもしれない。
格上のスポーツカーに立ち向かってきたスープラが、独自性を失ったという事実は、ポルシェ911 GT3がPDKだけになった時と重なる。実際、GT3の魅力が失われたわけではなく、グループテストで勝利を掴むほど優れていた。
いまGT3を選ぶドライバーのうち、3分の2がPDKを選択している。血統と感じる部分が、優れた評価につながるすべてではないということだろう。
スープラの場合、特にインテリアが良い例だと思う。確かにロータリーコントローラーの付いたインフォテインメント・システムやパワーウインドウのスイッチ、ステアリングホイールのボタンまで、BMWの匂いが隅々に残っている。
しかし機能的で、見た目も良く、着座位置も低い。包まれ感の強い車内構造は、視界にも優れる。
長期テストのGRスープラは、英国でプロと呼ばれる仕様。アダプティブ・クルーズコントロールにヘッドアップ・ディスプレイ、リアカメラなど、フル装備といえる内容で、価格は5万4960ポンド(769万円)。
エンジンとシャシーとのバランス
エンジンは、上質な直列6気筒が載っている。デザインも見事。GRスープラが素晴らしいと、いわずにはいられない。筆者が改めたいと感じた部分は、運転の操作系くらい。
基本的な人間工学は優秀。足元は広く、ステアリングホイールは充分に手元へ近づけられる。しかし、シートはBMW M2やポルシェ718ケイマンほど、優れたホールディング性を備えていない。
ステアリングホイールに取り付けられたパドルは、大きさが良くない。9時と3時の位置のスポークは握りにくい。プレミアム・ブランドのスポーツモデルほど、シリアスではなかった。
小さな欠点でも、スポーツカーの魅力を薄めることにつながってしまう。煮詰めきれていない、おもちゃっぽさを生んでしまう。
それは、ドライビング体験にもつながっていた。BMWの直列6気筒B58ユニットは、音も見事で滑らかに回転し、トルクも豊か。魅力的なエンジンだ。GRスープラのシャシー・エンジニアは、このユニットをどこまで理解していたのだろう。
ステアリングのレスポンスは、緩めにロールが生じるシャシーに対し、少し熱心すぎる。直列6気筒の重量がフロントに載り、シャープでタイトなターンインが得られていない。特にポルシェ718ケイマンと比べると、大きく劣る。
4気筒のジャガーFタイプとも比べてみた。短時間ではあったが、FタイプはGRスープラの穏やかなアンダーステア・バランスと、わずかな不安定さをあぶり出した。
GRスープラはとても速い。だが、どこか鮮明さに欠ける。トラクションの制限もあるようだった。
小さなフェラーリ812スーパーファスト
定期的な整備間隔を、トヨタは16000km毎と指定しているが、今回のテストで重ねた距離は8800kmほど。整備が必要になるまでは走れていない。エンジンオイルの使用量は少ないし、コストはさほどかからないだろう。
ミシュラン・パイロット・スーパースポーツは、2mmも減っていない。これまで派手なバーンアウトも何度かしているのに。
燃費は平均で11.3km/L前後。高速道路を長距離巡航させれば、13.5km/Lに迫るほど伸びた。筆者の尺度的には、充分に良い数字だ。
GRスープラのストロングポイントを実感できたのが、2度走った長距離ドライブ。英国からドイツとイタリアへ向かった。日常的な利用を妨げる要素はないうえ、長距離移動を苦もなくこなすことができる。
サスペンションのスプリングは比較的柔らかく、このクラスのどんなモデルより乗り心地はしなやか。大人2人、10日分の荷物を問題なく積める大きな荷室も付いている。ミドシップのライバルモデルでは叶えられない機能性だろう。
荷室と車内とが続いているから、ロードノイズを荷物が拾い、振動することはある。でも、グランドツアラーとしてトヨタGRスープラを選びたくなる特徴だといえる。
まるで小さなフェラーリ812スーパーファストのように乗れる。しかも駐車する場所の心配は、フェラーリほど必要ない。
乗りやすいエキゾチックモデル
価格が約5万4000ポンド(756万円)のクルマとなると、多くを求めて当然。公平に考えなければならない。
トヨタGRスープラは、このクラスで最も充足感の高いドライバーズカーとはいえないだろう。複数台を乗り比べて、その日のうちに高い評価を掴むことも難しいかもしれない。
しかし、乗りやすいエキゾチックモデルの1台として、ライバルを超える魅力を感じる部分もある。最高出力はやや劣るものの、仕上がりは良い。ドライバーが興じれる自由度もある程度残され、所有する満足感も充分に得られるはずだ。
セカンドオピニオン
トヨタGRスープラを数日乗ってみて、いくつかの思いが頭に浮かんだ。1つ目は、想像以上に洗練されているということ。もう1つは、GRスープラのハードコア仕様を作る余地が、大きく残されているということだった。 Lawrence Allan(ローレンス・アラン)
テストデータ
気に入っているトコロ
長距離移動:クラスの水準以上に、長距離は安楽。グランドツアラーとしてGRスープラは良くまとまっている。
ストレート6:リニアに回りトルクが豊かで、クルマの個性を構成している。気張らなくても、特別な雰囲気を味わえる。
ボディサイズ:狭い道でも、全幅を気にする必要はさほどいらない。
気に入らないトコロ
ダイナミズムの不足:シャシーは、クラスの中で最もシャープなわけではない。アンダーステア傾向がそれを証明している。
操作系:シートやシフトパドル、ステアリングホイールなどを改めれば、ドライビング体験も良くなりそうだ。
走行距離
テスト開始時積算距離:−km
テスト終了時積算距離:8832km
価格
モデル名:トヨタGRスープラ・プロ(英国仕様)
新車価格:5万4340ポンド(760万円)
現行価格:5万4340ポンド(760万円)
テスト車の価格:5万4960ポンド(769万円)
オプション装備
プロミネンス・レッド塗装:620ポンド(8万6000円)
燃費&航続距離
カタログ燃費:12.2km/L
タンク容量:52L
平均燃費:11.4km/L
最高燃費:13.2km/L
最低燃費:9.8km/L
航続可能距離:590km
主要諸元
0-100km/h加速:5.2秒
最高速度:249km/h(リミッター)
エンジン:2998cc直列6気筒ターボチャージャー
最高出力:339ps/5000-6500rpm
最大トルク:50.8kg-m/1600-4500rpm
トランスミッション:8速オートマティック
トランク容量:290L
ホイールサイズ:19インチx9.0J(フロント)/19インチx10.0J(リア)
タイヤ:255/35 R19(フロント)/275/35 R19(リア)
車両重量:1495kg
メンテナンス&ランニングコスト
リース価格:1069ポンド(14万9000円/1カ月)
CO2 排出量:170g/km
メンテナンスコスト:なし
その他コスト:なし
燃料コスト:1025ポンド(14万3000円)
燃料含めたランニングコスト:1025ポンド(14万3000円)
1マイル当りコスト:0.19ポンド(26円)
不具合:なし
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