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ENEOSの冴えたレース勘と、命運を分けた山下健太のウインドウの不運【GT500決勝あと読み】

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ENEOSの冴えたレース勘と、命運を分けた山下健太のウインドウの不運【GT500決勝あと読み】

 2021年のスーパーGT開幕戦を制し40kgのサクセスウエイト(SW/旧称:ウエイトハンデ)を搭載して第2戦富士500kmに臨んだ14号車ENEOS X PRIME GR Supra 。最大SWを搭載しながら予選6番手から決勝では2位となり、ポイントランキングでも独走状態に入ったが、その背景にはチームのファインプレイと、ひとつの悔しい出来事が隠されていた。

 今回の14号車のファインプレイは、タイヤの持ち込みセットにあった。第2戦富士500kmはレース距離の長さから、通常の6セットに1セット加えた7セット、タイヤを持ち込むことができた。
 
 通常ならば、2種類のタイヤを3セット、4セット持ち込むのが定石だが、14号車の阿部和也エンジニアはブリヂストンのタイヤ選択最終連絡日、タイヤをトランポに積み込むギリギリのタイミングで持ち込みタイヤを変更した。

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「この第2戦の開催日前後の天候が雨の予報があったので、気温が下がると予想しました。そこで1セットだけ、いわゆるソフトタイヤを持ち込んだんです」

 14号車の持ち込みタイヤは3種類の2セット(便宜上:ハード)、4セット(ミディアム)、1セット(ソフト)となった。ブリヂストンのGRスープラ勢では14号車のみ3種類を選んだとのこと。このラインアップで幅広い気温差に対応できるようになった反面、実際には練習走行で試す余裕がなく、予選Q1、Q2ともにドライバーはいきなりそのタイヤを履いてアタックすることにもなった。

 だが、その予選では山下健太がハードでQ1トップタイム、大嶋和也も6番手となり、決勝上位を狙えるポジションからスタートし、ドライバーも阿部エンジニアの期待に応えて決勝で2位フィニッシュを果たした。第1スティントと第3スティントを担当した山下が振り返る。

「3種類のタイヤ選択、よかったと思います。持っているなかで今回は最良の選択だったと思います。阿部さんの判断力のお陰です。最後(第3スティント)のタイヤは一番軟らかいタイヤだったのでアウトラップも簡単で、そのタイヤのおかげで17号車に追いつけた部分もありますが、最後は想像以上にグリップがズルズルになってしまいました。最後は17号車を抜く力はなくなっちゃいましたね」と山下。

 そのソフトタイヤで、第3スティントの山下はトップの17号車Astemo NSX-GTを追い詰めたが届かず2位でチェッカーを受けた。開幕戦の優勝に続き2位の結果だが、山下はそこまで喜んでいるようには見えなかった。実は山下にはひとつ、17号車とのバトルで悔しい出来事があったのだ。

「17号車をオーバーテイクできそうなチャンスはあったんですけど、最後の20周くらいでウインドウがすっごく油まみれになってしまって、西日が入って来たときなどは全然、コーナーのポストが見えなくなったんですよ」と、第3スティントの状況を話す山下。

 その不運とも言えるウインドウの油が、14号車と山下の命運を分けた。

「それで1回、スリップに入って1コーナーで並んで入ったんですけど、そのときに無線で『イエロー! イエロー!』と連絡が入って、結局2コーナーでのイエローフラッグだったのに、俺はポストが見えない状況だったので1コーナーだと思って『あっ!』と思って、ブレーキを踏んで引いてしまったんですよ」

 そしてすぐにそのイエローが2コーナーだと分かったとき、山下は車内でひとり、うなり声を上げたという。

「『あ”あ”あ”あ”ー!!』と。ショックでしたね」と、悔しさを見せる山下。

「でも、もしそこで抜いて黄旗中の追い越しになってしまったら台無しになるので……ちょっと引き気味に行きましたね。抜けそうなチャンスはそのときだけでした。そこからはタイヤがちょっとズルズルになってしまいました」と振り返る。

 タラレバで、その時17号車を抜くことができていれば?

「そこで抜けていたら、抑えられていたと思います」

 40kgのSWを搭載して2連勝の可能性が一瞬見えたENEOS X PRIME GR Supra 。2戦を終えて優勝、2位でチャンピオンシップの主役となったが、レースを振り返って、山下に改めて今の感想を聞く。

「2連勝を狙って来て、今回2位。展開的に抜けそうだったので、悔しいです」

 阿部エンジニアのレース屋としての勘が冴え、展開的にも恵まれた今回の14号車ENEOS X PRIME GR Supra。40kgの最大SWを搭載しての第2戦2位は上出来の結果と言えるのか、それとも悔しい2位となるかは今後の戦い方で明らかになる。

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