11月12日、静岡県の富士スピードウェイで開催されているENEOS スーパー耐久シリーズ2023 Supported by BRIDGESTONE第7戦『S耐ファイナル 富士4時間レース with フジニックフェス』の決勝レースを前に、マツダはメディア向けにMAZDA SPIRIT RACINGとしての2023年のスーパー耐久への挑戦を振り返った。2022年から登場したMAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio conceptは、この最終戦に300馬力までパワーアップ。MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER CNF conceptも203馬力へ。将来へと繋げるべく最終戦に臨む。
MAZDA SPIRIT RACINGは、2021年のスーパー耐久最終戦岡山でバイオディーゼル燃料を使ったデミオを投入。マツダのワークス活動としてはひさびさにモータースポーツに復帰した。「そこからまずスーパー耐久を知ること、バイオ燃料に慣れることを1年かけて行ってきました。我々にとってはワークス活動は30年ぶりで、社内にも体制がなく、当時を知る人も少なくなっていたので、体制づくりに専念しました」というのは、マツダのエグゼクティブフェローで、MAZDA SPIRIT RACINGを率いる前田育男代表。
スーパー耐久第7戦富士に登場の液体水素GRカローラはさらなる進化を遂げる。走行時にCO2を回収
その後、2022年の最終戦にマツダ3に2.2リッターディーゼルターボを搭載したMAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio conceptをデビューさせたが、「ボロボロでした。初戦にいろいろなものが壊れ、ゴールは切ったものの、切っただけ」という状況。「経験不足でした」と振り返った。
しかし2023年からはさまざまな改良を積み重ね、第2戦富士SUPER TEC 24時間レースの予選では、ST-Qクラスに参加する他のライバルたちと予選で続くことに成功。第6戦岡山では、Team SDA Engineering BRZ CNF Conceptを上回ることに成功した。
■さまざまな改良を続け“戦える”クルマに
「ここまでやって来られたのは、ST-Qクラスの“共挑”の活動のおかげだと思っています。いろんな話し合いをして目標を決め、垣根をなくして一緒に将来のモータースポーツを作っていくという姿勢で動きはじめた活動ですが、勇気をもらっていますし、ライバルが明確になったことで、我々も速さを追求する姿勢が生まれ、彼らに食らいついていくマインドセットができあがってきました」と前田代表。
そんなMAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio conceptの挑戦だが、当初デミオでの参戦時から燃料はユーグレナのサステオ100、さらに2023年からはHVO(水素化処理植物油)燃料への切替を目指しサステオHVO100、さらに第5戦もてぎからは、ヨーロッパからネステのHVOであるネステMy RDにチェンジした。
またエンジンもさまざまな改良を進め、さらに第2戦富士からは、これまで苦労を続けて来たミッションにドクミッションを投入。軽量化やブレーキ強化/剛性アップ、リヤスタビ投入など車体面の改良も続けられ、ミッションが壊れなくなったことにより、今回の第7戦富士では300馬力、トルクも「マックスでこれ以上ないところまで絞りきってもってきています」という。
さらに、エンジンについても低圧縮比と空間利用向上を狙い、2段Egg燃焼室を採用。また2023年はアルミ製のピストンに対し、遮熱膜を採用。ピストン入熱低減による材料負荷の低減に取り組むなど、新技術も採用されていった。
これまでの活動を経て、前田代表は「量産車の厳しさはまた別の次元であるのですが、レースの現場はスピード感が必要ですし、起きることが想定できないことだらけなので、弊社のエンジニアにいくら教育プログラムをやってもらっても、こういう現場で体験できることは他に絶対ないですね」と社内の人財育成に貢献してきたと強調した。
また第4戦オートポリスから参戦したMAZDA SPIRIT RACING ROADSTER CNF conceptは、2リッターエンジンを使用し、ST-Qクラスに参戦する28号車ORC ROOKIE GR86 CNF Concept、Team SDA Engineering BRZ CNF ConceptとともにP1製のカーボンニュートラルフューエルを使用。第4戦では専有走行でのクラッシュもありながら、その後は軽量化や空力開発などを続け、ブランドのアイコンであるロードスターの進化に繋げている。
■メディアからは話題の“アイコニックSP”についての質問も
スーパー耐久ではさらにST-5クラスに参戦する倶楽部 MAZDA SPIRIT RACING ROADSTERの活動、これを頂点としたさまざまなレース活動を通じ、ドライバーのステップアップに貢献するなど、多角的、かつ積極的な活動を続けているMAZDA SPIRIT RACING。ちなみに、最後の質疑応答では、ジャパンモビリティショーで出展され大きな話題となった魅惑的なコンセプトカー『マツダ・アイコニックSP』のモータースポーツでの活用についての質問も出た。
2ローターのロータリーEVシステムを使用するとされるコンセプトカーだが、メディアの後方にはマツダの毛籠勝弘代表取締役社長兼CEOが控えていたこともあり、前田代表は話しづらそうにしながらも、「ロータリーは我々の宝の技術で火を消すわけにはいかないですし、ロータリーエンジンの開発を夢見てマツダに入社したエンジニアもまだまだいます」と語った。
「特徴としてはコンパクトなサイズということもありますので、今後のモータースポーツにいろんなかたちで使えるのではないかと希望をもっています。私はRX-VISIONというスポーツカーを作って以来(前田代表はデザイン本部長としてRX-VISIONを手がけた)、……言いにくいのですが(苦笑)、私が満塁ホームランを打てない状況が続いているものの、何らかのかたちで出したいなという気持ちはずっと持ちつづけています。うしろに弊社のトップがいるので、ぜひうかがってみてください(笑)」
この後、別の質問にも答えながら、「私もすごく期待しています。やっぱりGT3とかGT4とは欲しいですよね。それがあるともっと上のレースにもいけますし、いろんなチャレンジも幅が広がってくると思います。このスーパー耐久はあるひとつのステップだと思っているので、そこから上というのは、これまたうしろの弊社のトップに……(笑)」と前田代表は言葉を選びながらも、笑顔で語った。
これらの質問はメディアから“言わせた”ところもあり、あくまで前田代表のコメントでしかないが、この声を後押しするのはやはりファン、ユーザーの熱意だろう。今後のMAZDA SPIRIT RACINGの活動にぜひ注目していきたいところだ。
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