アメリカ車を真似た華やかな英国車
1950年代末の英国では、バイパス沿いに小洒落たドライブインがあった。女優に似たウェイトレスが、アメリカ英語を真似て話す客へ注文を取っていた。彼らが乗り付けたのは、アメリカ車を真似た華やかな英国車、ということが少なくなかった。
【画像】テールフィンは控えめに アメリカンなアッパー・サルーンたち 同時期の英製モデルも 全185枚
2026年の素敵なギルクス・ガレージ・カフェへ、そんな4台へ集まってもらった。戦後の暗い空気を、徐々に晴らしていった魅力的なサルーンたちだ。
ホワイトのボンネットにペール・ブルーのルーフが映える、フォード・ゾディアック MkIIは1960年式で、マイク・ハートリー氏がオーナー。コンサルとゼファー、ゾディアックという、美しい3兄弟の「MkII」は、1956年に登場している。
量産車でありながら、「職人技を感じさせる細部へのコダワリ」を備えるという、売り文句で英国人へ訴求された。「フォードの最高傑作」だと、高らかに主張もされた。
3兄弟では最上級仕様のゾディアック
いかにもアメリカンなスタイリングは、コリン・ニール氏の仕事。控えめなテールフィンが伸び、1955年式フォード・フェアレーンへ似た雰囲気を漂わせる。当時のAUTOCARは、アメ車のような無駄な翼だと表現したが、英国流に解釈されてはいる。
ハートリーのクルマは、全高が約45mm低いローラインルーフ・ボディで、よりスタイリッシュ。2016年にレストア済みの状態で、航空機エンジニアから購入したそうだ。
「ゾディアックだと知らない人には、手頃だったゼファーと勘違いされます」。と彼が微笑む。エンジンは2.6Lの直列6気筒で、MkIIの3兄弟では最上級仕様だったのに。
フロントグリルやメッキトリム、シガーライターなどの上級装備で、ゾディアックとゼファーは差別化されていた。バックミラーの上部には、丸いアナログ時計も備わる。
加速すると動きが遅くなるワイパー
バキューム圧で動くワイパーは、3種で共通。「加速すると動きが鈍くなりますが、サイドバルブ・エンジンの古いフォードと違って、止まりません」。とハートリーは説明する。新時代を象徴するサルーンとしては、不思議なほど戦前の技術といえた。
「リアのダンパーを調整して以来、操縦性は見違えました。現在の交通環境では、完璧ではないですが。コラムシフトの変速は、急がない方が良いです。時々ですが、3速から2速へ落とす際、(一度クラッチペダルを戻す)ダブルクラッチを挟む必要があります」
前後のドラムブレーキは、ある程度活発に走る場合は、定期的に整備が必要らしい。フロントが標準でディスクになったのは、1961年式からだった。
ホワイトウォール・タイヤにツートーン塗装は標準
70年前にゾディアックへ関心を持っていた英国人は、オースチンA105 ウェストミンスターも候補にしていただろう。A90の進化版として、1956年に登場。車高の低いサスペンションと、ツインSUキャブレターを載せた2.6L直6エンジンが採用されていた。
このエンジンは、後にオースチン・ヒーレー100/6にも搭載されるが、A105もスポーツサルーンが目指されていた。実際、1958年の英国サルーンカー選手権で優勝している。
快適性や特別感を求めるドライバーを、オースチンは豪華装備で満たした。コラムシフトの4速MTにはオーバードライブが備わり、サイドミラーは標準。フォグランプにホワイトウォール・タイヤ、ツートーン塗装、メッキトリムなども追加費用なしだった。
ボンネットの先端には、「フライングA」のマスコット。優雅なフォルムだが、ドアは1.5Lエンジンの格下、A50と共有していた。ボンネットは長いが、キャビンは短い。
英国の自動差産業の優位性を復活?
オースチンは、発売直後の1956年後半にA105をフェイスリフトしている。フレッド・オールドハム氏が所有する、同年前半の初期型、通称「エフィー」は非常に珍しい。
「買ったのは2015年ですが、自分が2番目のオーナー。クラッチは固着し、ブレーキや燃料ポンプも駄目でした。でも車内には、スペアパーツが山ほど」。と振り返る。
エンジンは、A105の後継モデル、1959年に発売されたA110用2912cc直6へ置換されている。「このエンジンのお陰でパワフルです。どこを走っても称えてもらえますよ」。オースチンというブランド名を、知らない若者も最近は多いそうだが。
鮮やかな配色のベンチシートにクロームトリムで、インテリアも華やか。新聞のテレグラフ紙は、「英国の自動差産業の優位性を復活させるうえで、重要な役割を果たす」と1956年に評価したが、その後の歴史は少々違った。
この続きは、アメリカンな英国車たち(2)にて。
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