パワーアップだけではない高速化メニュー
text:Richard Lane(リチャード・レーン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
AUTOCARでは、満点の最高評価を獲得したアルピーヌA110。標準モデルより、A110 Sが本当に良いのかどうか、気になる点はそこに尽きる。アルピーヌとしても、自慢の軽量スポーツカーに「S」バージョンを用意する意図は、本来、標準モデルより良いクルマを追加することにあるはず。
A110 Sへは40psのパワーアップに短いスプリング、硬いアンチロールバー、大径のブレーキと幅広のタイヤが与えられている。内容的には、他メーカーがクルマを速くしようと考えた時に施すメニューと同じ。大抵は同時に、運転体験もより良いものになると主張される。
アルピーヌによれば、標準のA110は既に狙った通りのクルマに仕上がったとしている。改良を加え、よりシリアスなモデルを準備する予定はない。このA110 Sは単に別のバージョンで、主にサーキット向けの味付けを施したクルマとのこと。上下関係は存在しないようだ。
A110 Sの英国での価格は5万6810ポンド(812万円)で、同等の装備を持つA110より7000ポンド(100万円)ほど高い。販売台数はA110とA110 Sとの比は3:1になると見込まれている。
今回の試乗車には2208ポンド(31万円)のカッコいいカーボンファイバー製ルーフに、936ポンド(13万円)の鍛造ホイールが追加されている。
ほかにも細かなオプションが追加され、試乗車は総額で6万3000ポンド(900万円)。この金額は6気筒のポルシェ・ケイマンGTSとほぼ同額となる。
ボディサイズや雰囲気からすると、明確なライバル関係にもある。いつか比較する日も来るだろう。だが、新しいポルシェ製自然吸気4.0Lフラット4が、アルピーヌの2.0L直列4気筒ターボと比較対象となるのかは、疑問を感じるところだ。
ケイマンより遥かに軽量な1114kg
ケイマンにはない部分は、サスペンションが4輪ともに機能で優れるダブルウイッシュボーン式になることと、軽量なオールアルミ構造となるところ。
アルピーヌの方がボディは小さいし、性能や価格も控え目。それでも個性は全く萎縮していないし、特別感は強いかもしれない。同じミドシップ・レイアウトでも車重は1114kgと、ケイマンより遥かに軽い。
A110 Sのインテリアの造形は、基本的にA110と同一。バックスキン調合皮のディナミカが車内に張り巡らされている。かつて青・白・赤のトリコロールが用いられていた差し色は、オレンジとカーボンファイバーに置き換わった。
とても軽いサベルト製シートが配置され、ステアリングコラムの調整しろも大きく、ドライビングポジションは良好。だが着座位置は20mmほど高く感じる。
細かいケチを付けるつもりはないけれど、サーキット仕様といいつつ、ステアリングホイールに滑りにくいディナミカが巻かれるのは上下部分のみ。なぜ全周、ディナミカ仕上げにしなかったのだろうか。
ボディの雰囲気は、標準のA110同様にとても魅惑的。ブレーキキャリパーはオレンジに塗られ、エンブレムはブラックに仕上げられ、わかる人の心には強く響くだろう。滑らかなカーブを描くフォルムと低く構えたスタンスは、そこから得られるドライビング体験を強く匂わせる。
過度にシリアスではないが、腕の立つドライバーを受け入れる準備は整っている。前回の試乗はポルトガルだった。英国の道を走るのは、今回が初めてだ。
コーナーを曲がれば気づく性格の違い
いざ走り出して興味深いのが、292psを絞り出す1.8Lターボエンジンを急き立ててコーナーを3つも曲がれば、A110とA110 Sとが驚くほど異なる性格だとわかること。
Sの方がステアリングはよりダイレクトではある。でも率直にいって、7割くらいのオーナーの場合、SではないA110の方が気に入ると思う。
カーブの続く道を全力で走らせるような場面では、Sの方が足回りが硬いぶん、ディフューザーを路面に擦るようなことは少ないだろう。それでもベースモデルが備えている、突出した滑らかでしなやかな足さばきには至っていない。間違いなくA110の輝く個性だと思う。
Sも素晴らしいドライビングが楽しめるものの、その違いは小さくない。シャシー性能を引き出し、柔軟性と操縦性のスイートスポットに持ち込める速度域は、標準のA110と同様に100km/hを超える必要もない。だが、足の硬さが消えることはないのだ。
アルピーヌA110の好ましい個性として、アウト側に荷重が移動して発生するロール・オーバーステアがある。一方でSの場合は、足回りが引き締められたぶんロール・オーバーステアが穏やかになり、ウェット路面では逆にアンダーステアが徐々に出てしまう。
とはいっても、全体的に素晴らしいドライビングフィールにおける、ごく小さなネガティブ要素に過ぎない。標準のA110より、より真剣に走りにフォーカスしていることは明らかでもある。
A110がSになっても、1日中運転していたいと思えるクルマに変わりはない。若干高められたパフォーマンスが、楽しさを奪ったということはない。他のクルマには真似できない個性で、ミドシップ・リアドライブとしての喜びを堅持している。
一般道よりもサーキットでの楽しさ
最高出力が292psになった、パワーアップの実感は乏しい。デュアルクラッチATの許容値の都合で、最大トルクが32.5kg-mのままなことが原因だろう。だが、一般道ではより扱いやすくなっている。
最大トルクの発生回転域は、2000rpmから6400rpmまでと拡大。アルピーヌA110にとって、パワートレインがさほど魅力的な要素ではないということにも変化はなかった。クルマを進めるための上質なツールといったところ。
もしサーキットでの走行会にしばしば繰り出すのなら、A110 Sを検討しておきたい。反面、一般道での走行が中心であれば、Sは懐の深さが半分くらい浅く感じられるかもしれない。長距離ドライブでのマナーや日常的な親しみやすさも、標準モデルと比べれば明確に劣っている。
アルピーヌA110は、しなやかな乗り心地と充分に居心地のいい車内を持ち、クルージング時の燃費も15.9km/Lと良好。グランドツアラーにもなり得るという、比類のない能力を兼ね備えている。Sを選ぶなら、乗り心地に関しては期待しない方が良いだろう。
アルピーヌA110がSとなっても、小柄で軽量な素晴らしいスポーツカーだという事実は揺るがない。明確に一般道よりもサーキットでの楽しさに重心が寄っている、というだけではある。アルピーヌが狙った通りというなら、そういうことだ。
アルピーヌA110 Sのスペック
価格:5万6810ポンド(812万円)
全長:4180mm
全幅:1800mm
全高:1248mm
最高速度:259km/h
0-100km/h加速:4.4秒
燃費:15.2km/L
CO2排出量:146g/km
乾燥重量:1114kg
パワートレイン:直列4気筒1978ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:292ps/6400rpm
最大トルク:32.5kg-m/2000-6400rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック
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みんなのコメント
オプション付けたら楽に1000万円オーバーですから。
比較するならSでは?
でも、A110Sが出て従来のモデルがお手頃価格になったら乗ってみたいかも♪(現ボクスター乗り)