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極私的トミカ、ホットウィール、マッチボックス考【長尾循の古今東西モデルカーよもやま話:第8回】

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極私的トミカ、ホットウィール、マッチボックス考【長尾循の古今東西モデルカーよもやま話:第8回】

『箱スケール』と呼ばれるジャンル

私の知人の中には、自身のミニカーコレクションのため自宅とは別に倉庫や一軒家を借りているという剛の者もいたりします。しかしまぁそんな極端な例はともかく、多少なりともクルマに興味がある方なら誰しも、少年時代にミニカーの何台かは持っていたのではないでしょうか。

【画像】筆者所有のトミカ、マッチボックス、ホットウィール(の一部)! 全5枚

そして、そのミニカーは多くの場合トミカだったのでは? 1970年、玩具メーカーのトミー(現タカラトミー)からデビューした『トミカ』。シリーズ共通のパッケージ(箱)のサイズに合わせて、小さなクルマは大きめのスケールで、逆に大きなクルマは小さなスケールで再現される、いわゆる『箱スケール』と呼ばれるジャンルのミニカーで、価格も一律。

それまで我が国にはこのクラスの手軽なミニカーがなかったこともあり、すぐにトミカは大人気となりました。以来、長年にわたって我が国を代表するミニカーの代名詞として親しまれ、日本国内はもちろん、世界各国に熱心なトミカ・コレクターが存在することでも知られています。

そんな大前提がありつつ、ここからはトミカが生まれる前から自動車のおもちゃ、模型、ミニカーが好きだった自分の『トミカ誕生前夜』の極私的な思い出話を。

小さくて廉価な『マッチボックス』

戦前からその萌芽が見られた、自動車をスケールダウンした小さなおもちゃ、いわゆるミニカーは、第二次世界大戦後の1950年代から1960年代にかけて特に大きく発展し、黄金期とも言える隆盛を誇りました。

コレクターの主戦場、そして子供たちの憧れは何と言っても1/43スケール(前後)のミニカーでしたが、当時の自分の場合、1/43クラスは誕生日かクリスマスにしか手に入れられない高級品。いきおい普段の生活の中でよく手に入れることがでたのは、小さくて廉価な『マッチボックス』のミニカーでした。

マッチボックスを手掛けていたのは英国のレズニー社。同社は工業用ダイキャスト鋳造会社として1947年に設立された会社で、創業当初はミニカーや玩具以外のさまざまなダイキャスト製品も手掛けていました。

そんなレズニー社は1953年、エリザベス2世の戴冠式に使われた馬車のミニカーをリリース。これが大ヒットとなったことから、本格的なミニカーメーカーとしての歩みをはじめます。

マッチ箱ほどのパッケージに収まることから『マッチボックス』と名付けられた小さく手頃なそのミニカーは、1-75シリーズという名称で、その名の通り75車種のモデルが用意されました。

基本的には1台の新作ミニカーがリリースされると、いままで販売されていた何か1車種が絶版となり、シリーズ全体では常に75車種がラインナップされている仕組みです。自分にとっては図鑑でしか見られないような欧米の名車が手元で堪能できるということで、とても好きなブランドでした。

ちなみに、前段で『我が国にはこのクラスの手軽なミニカーがなかった』と書きましたが、それは『日本の子供に馴染み深い国産車のミニカーを作る日本の玩具メーカーがなかった』という意味で、マッチボックスの文法をうまく日本市場向けに落とし込んだのが、トミカ成功の秘訣だったかと思います。現在のトミカの場合、新作追加、絶版を繰り返しつつ、常に120台の通常製品がラインナップされています。

1968年に登場した『ホットウィール』

お話変わって1960年代後半のアメリカ。マッチボックスなどと同様、安価で小さなミニカーのマーケットに向けて1968年に登場したのがアメリカの大手玩具メーカー、マテル社が送り出した『ホットウィール』です。

当時のカタカナ表記では『ホットホイール』。マッチボックスに代表される『実在するクルマを律儀に縮小再現する』というそれまでのミニカーとは全く異なり、架空のショーカーや激しいカスタムが施されたホットロッドといった、アメリカのカーカルチャーをそのまま落とし込んだ独自の世界観は、ミニカーの世界に大きな衝撃を与えました。

結論から言えば、ホットウィールは商業的に大成功を収め、今なお盛況です。逆にその成功にあやかろうと、本来の個性を見失って迷走してしまった当時の欧州ミニカーメーカーの多くは、次第に衰退していった……というのが当時の私の印象です。

そんな変動する時代の中『身近な国産車のミニカーを日本の子供達に気軽に手にしてもらう』というコンセプトがぶれなかったトミカが、いまやワールドワイドな人気ブランドなのは嬉しいことです。

それぞれのブランドが持つ個性や歩んできた歴史

トミカ、ホットウィール、マッチボックスのミニカーは、いずれもミニカー専門店や玩具店などで入手可能です。一時期は世界最大級のミニカーブランドだったマッチボックスは、現在ではかつてのライバルだったマテル傘下で、往時のイメージを今に伝えるミニカーを展開しています。

子供の頃から慣れ親しんできた小さなミニカーにも、それぞれのブランドが持つ個性や歩んできた歴史などが垣間見え、興味深いものがあります。

これら3ブランドのミニカーは、いまだに現行製品、絶版中古品を問わず、気に入ったモデルを見つけるとついつい買ってしまうのですが、個人的にはスピードホイール採用以前のマッチボックスが一番好みです。

文:AUTOCAR JAPAN AUTOCAR JAPAN

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