EV暴走族の登場というフィクション
夜の住宅街に響く爆音。エンジンをふかしながら集団で走り抜ける暴走族の姿は、かつて日本の高度経済成長期からバブル期にかけて「若者の反抗文化」の象徴として存在感を放っていた。
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しかし、時代は変わり、ガソリン車の存在感が薄れ、電気自動車(EV)の急速な普及が進むなかで、奇妙な光景が各地で目撃されるようになっている――。
今回は、未来に起こりそうなこんな「フィクション」を通して、今後の移動手段における課題を考えてみよう。
新時代の反抗文化
静かに加速する電動バイクやEVが、かつての暴走族スタイルで走行する姿は、見る者に違和感を与える。排気音もなく、スムーズに走るその姿はエコカーの象徴であるはずだが、集団での迷惑行為に変われば、「エコ」の看板はもはや意味をなさない。
このパラドックスは、単なる珍現象にとどまらない。現代では、移動手段とライフスタイルが密接に結びついており、EVという「善なる存在」が暴走族という「悪しき行為」と結びつくとき、私たちは移動の価値をどう捉えるべきなのか。
まず、従来の暴走族文化を振り返ると、それは単なる迷惑行為以上の社会的な文脈を持っていたことが分かる。
1970年代から1990年代にかけて、日本全国で暴走族が台頭した背景には、社会に対する若者の反発心があった。画一的な教育や労働環境への不満、家庭内での疎外感、さらには「大人社会」に対する反抗心が、改造バイクや車を駆る行為に象徴的に表現された。
その手段として選ばれたのが、
「内燃機関」
を搭載したバイクやクルマだった。エンジンを吹かすことで発生する騒音は、単なる物理的な音ではなく、「俺たちはここにいる」という存在証明そのものだった。
しかし、電動モビリティはどうだろうか。静粛性が最大の特徴であるEVでは、従来のような爆音を伴う存在誇示は不可能だ。それでもなお、EVを駆る新世代の「静かな暴走族」は、存在感を示そうとしている。
技術革新と反社会的行動の矛盾
EVで暴走する若者たちは、何を求め、何を訴えているのか。彼らの行動を単なる迷惑行為と片付けることは簡単だが、その背後には、時代に適応した新しい「主張の形」が見え隠れする。
まず、彼らがEVを選ぶ理由は、経済的合理性と技術的進化に基づいている。ガソリン代が高騰するなか、電気で走るEVはコストパフォーマンスに優れ、夜間電力を活用すれば、1回の充電で数百円程度の負担で済むことも少なくない。さらに、EVはエンジンを持たず、オイル交換や複雑な整備が不要で、長期的な維持費も抑えられる。モーター駆動による即応性は、かつての2ストロークエンジンを彷彿とさせる俊敏さを持っている。
また、SNS世代である彼らにとって、アピールの舞台は街頭だけではなく、スマートフォンの画面上にも広がっている。改造EVで静かに集団走行する映像は、YouTubeやTikTokで「未来的な反抗スタイル」として拡散される。
しかし、この新たなスタイルが社会的な受容を得られるかは別問題だ。EV暴走族が抱える最大のジレンマは、彼らが利用するモビリティ自体が「環境に優しい」存在でありながら、その行動が周囲に迷惑をかける点にある。
EVは走行中にCO2を排出せず、都市部の騒音公害も抑制できる「持続可能な移動手段」として普及が進められている。各国政府もEV化を促進し、自動車メーカーは競って新型車を投入している。にもかかわらず、深夜の住宅街を集団で走行すれば、音は静かでも視覚的な威圧感や交通の妨げになることは避けられない。騒音がなくても「迷惑」であることに変わりはない。
ここで浮かび上がるのは、「何をもってエコとするか」という問いだ。EVは環境に優しい存在だが、それを操る人間の行動次第で「エコ」は簡単に損なわれる。静粛性や低排出という技術的特性があっても、社会的文脈の中で不快感を与える行為は、結果として「持続可能性」に反することになる。
デジタル空間が変える走行文化
ここで重要なのは、EVを移動手段として「目的」として捉えるのか、それとも「手段」として活用するのかという視点だ。
暴走行為そのものが目的化される場合、移動手段は何であれ迷惑行為と見なされる。かつてのガソリンバイクであれ、現代のEVであれ、その本質に変わりはない。
一方で、EVを「手段」として使う場合、その役割は多様化する。通勤・通学、物流、観光、そしてスポーツ走行など、走る目的が明確であり、周囲と調和する形で使用されれば、EVはその本来の価値を発揮する。
EV暴走族の存在は、この「手段と目的の混同」を象徴しているともいえるだろう。
では、こうした新世代の走行文化は今後どう変化するのだろうか。
ひとつの可能性として、デジタル空間への移行が挙げられる。既にeスポーツとしてのレーシングシミュレーターが人気を集めており、実車での危険行為を伴わずに「走り」を楽しむ文化が広がっている。
また、EVメーカーも「走りの楽しさ」と「社会的責任」の両立を目指した取り組みを進めている。例えば、車両に搭載されたデータ通信機能を活用し、迷惑行為を抑制する仕組みや、走行履歴を可視化して安全運転を促進する技術が開発されている。
さらに、都市部では「EV専用の走行エリア」を設け、夜間走行を制限するような法規制が今後検討されるかもしれない。
移動の自由と社会責任のバランス
最終的に問われるのは、技術ではなく倫理だ。
どれだけ環境性能に優れたEVであっても、それを社会的責任を無視して利用すれば「迷惑」でしかない。一方で、技術を正しく活用すれば、EVは「移動」の可能性を広げる未来のパートナーとなる。
特に、若者たちがEVという新しいツールを手にする今だからこそ、移動の自由と社会的責任のバランスを見極めることが重要だ。
「EVで暴走族はおかしい?」
その答えは、明らかに「おかしい」だ。技術が進化しても、無秩序な走行が許容されることはない。移動手段は、社会と調和するための「手段」であり続けるべきだからだ。
EVという未来の乗り物を手にした私たちは、過去の反抗文化を再生産するのではなく、新たな共生文化を築いていくべきだ。
くれぐれも、暴走族にはならないように――。それが、EV時代を生きる私たちの「走り方」だ。
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みんなのコメント
エンジン音がなく近づいてきて、
突然、パラリパラリパラパラー ですから。
以前なら遠目に音が聞こえたら避けれたのに。