いまやドゥカティのラインアップの中でも高い知名度と人気を誇るシリーズが「モンスター」。ハイパフォーマンスを構えずに楽しめるスポーツネイキッドというジャンルの嚆矢となった「モンスター」シリーズは2026年に登場した最新モデルで5代目となるが、初代の誕生はなんと1993年。既に30年以上の歴史を誇る「モンスター」の系譜を、ここで振り返ってみよう。
文:小川 勤 写真:DUCATI
▶▶▶写真はこちら|ドゥカティ「モンスター」の系譜(35枚)
ドゥカティ「モンスター」誕生秘話
一人の男の情熱が30年以上愛されるアイコンを生んだ
「ドゥカティにネイキッドは必要ない」。これがモンスター開発時の経営陣の答えだった。
ドゥカティの初代モンスターが誕生する1990年代前半、ドゥカティは世界スーパーバイク選手権で活躍するスポーツバイクを販売するメーカーだった。また、当時の欧州で、ネイキッドは一般的ではなかった。
しかし、デザイナーのミゲール・アンヘル・ガルーツィは諦めなかった。日本の雑誌で当時のスーパーバイクである851のストリップ写真を見たガルーツィは、「自分が乗りたいバイクはこれだ。カウルは必要ない」と思った。ガルーツィは当時のボスであるマッシモ・ボルディに何度も交渉するが、その答えは前述した通り。説得できなかった。
そこで、ガルーツィは独断で開発をスタート。851のスチールトレリスフレームと900SSの空冷Lツインエンジンを手に入れ、小さなファクトリーでそれをカタチにしていった。秘密裏に作業を進め、いよいよ経営陣にプレゼンを行なう。
「他に何もつかないのか?」
これが試作車を初めて見た経営陣の第一声だった。
それでもガルーツィは経営陣を説得し、1991年末にまずはディーラーにそのバイクを発表。この時にフランスのインポーターから1000台の注文が入った。その後、1992年のケルンショーで一般公開となったのだが、ケルンショーで発表された車名はM900。「モンスター」ではなかった。
モンスターの物語はここからスタート。851&888系のフレームに904ccの空冷Lツインエンジンを搭載。1993年3月5日に最初の20台が生産され、イタリアで発売された。
1993年にデビューした初期型モンスターのカタログ。車名は「M900」で「モンスター」の文字はどこにもない。
当時イタリアでは『モンスター・イン・マイ・ポケット』というゲームが流行っており、子供たちはそのゴム製モンスターを集めるのに夢中だった。ガルーツィも仕事から帰宅すると子供達から「モンスター、買ってきた?」と毎晩聞かれた。そこでガルーツィはプロジェクトコードを「モンスター」に決めたのだ。
ただ、なかなか車名には採用されず、ケルンショーでもカタログは「M900」のままだった。
しかし、ケルンショーの会場では皆がこのバイクを「モンスター」と呼んだ。それはディーラーに発表していた際にガルーツィが「モンスター」と呼んでいたからだった。さらに、その際に1000台注文したフランスのインポーターが「モンスター」の名でフランスのメディアに紹介してしまっていたのである。ここからモンスターは、30年以上に渡って愛されるドゥカティの大切なアイコンに成長していくのだ。
1995年には日本市場向けにM400が登場。M600、M620、M695、M750など様々な中排気量モンスターが販売台数を押し上げ、ドゥカティに成功をもたらした。
【第1世代 1993-2007】解説 モンスターは時代に応じて様々な役割を果たしてきた
デビュー当時、異端児とも言われたモンスターだがすぐに大ヒットとなる。当時経営難だったドゥカティを救った救世主でもあり、世界中で新しいカスタマーを次々に獲得。しかし、その乗り味はネイキッドとは思えないほど難しかった。
スーパーバイクからカウルを剥ぎ取ったモンスターは、軽快すぎるハンドリングで、ディーラーやオーナーたちはそれを改善するためにカスタムに没頭した。
実は、筆者が初めて乗ったドゥカティは1995年製のモンスターだったが、キャスターの立ちが強く小さなギャップに乗るとハンドルが大きく振られた。同世代の916系はコーナリングスピードをどこまでも高めたくなるリスキーな走りを誘うキャラクターだったが、モンスターはとにかく敏感だった。ただ、手のかかる存在だったからこそ、多くのライダーがモンスターに夢中になったとも言えるだろう。
第一世代のモンスターは、1993年から2008年モデルまで。第一世代が最も多くの派生モデルを展開し、頻繁にモデルチェンジも行われている。ここでいくつかのモデルを見てみよう。
モンスターはドゥカティでもっともカスタムされるバイクだった。900クロモは最初のスペシャルモデルとして登場した。車名の通り、タンクにはクロームメッキが施される。
2000年にはキャブレターからインジェクションに進化。「S」はヘッドライト上のコンパクトなフェアリングとシングルシートカバーを備えたグレード。851/888系のコンパクトなトレリスフレームを持つ通称「スモールフレーム」モデルは2001年モデルまで生産された。
2001年にはモンスターS4が登場。モンスターファミリーで最初の水冷4バルブエンジンを搭載し、スーパーバイク譲りのスポーツ性を発揮した。ここから、車体剛性を高めるためにスポーツツアラーST4用のフレームをベースとした「ラージフレーム」が採用される。
2001年のミラノショーで展示されたオブジェ。すべてがモンスターのパーツでつくられた架空のモンスター。モンスター25周年となるWDW2018でも展示された。
スーパーバイク世界選手権で4度の王座に輝いたカール・フォガティにちなんだ特別バージョン。専用のカラーグラフィック、テルミニョーニ製のスペシャルエキゾースト、カーボン製ボディパーツなどが奢られたスペシャル仕様で、わずか300台のみがネット受注方式で販売された。
1シリンダーあたり2本のスパークプラグを備える、ムルティストラーダ譲りのデュアルスパーク992cc空冷エンジンを搭載して進化、車名も1000に。
2004年には、リアを片持ちスイングアームとした、水冷996ccエンジンを搭載するS4Rが登場。右2本出しマフラーも特徴的。
S4Rの翌年には、弟分としてS2Rが登場。エンジンは803ccの空冷で、片持ちスイングアームや右2本出しエキゾーストなど、S4R譲りの特徴を備えていた。
992ccのDSエンジンを搭載した空冷のフラッグシップモデル。空冷第1世代の集大成とも言えるモデルで、マルケジーニ製のホイールや樹脂製タンクを装備した。
スーパーバイク直系の998cc「テスタストレッタ」エンジンを搭載したS4RSも登場。前後オーリンズサスペンションを装備、エンジンの下側(オイルパン)が尖っているのが特徴だ。
【第2世代 2008-2013】解説 ショートタイプのフレームで軽量&シンプル化
シャシーとデザインを一新し、第2世代へ進化。エンジンをフレームの一部と捉える概念は変えず、シンプル化と軽量化を果たした。
特にモンスター696は日本でも大ヒット。約100万円という価格と、簡単に着せ替えできる樹脂製のタンクカバーが純正で何種類も用意された。2013年にはモンスター誕生20周年を記念したモデルも誕生。第2世代には水冷のモンスターは存在しない。
軽量でパワフル。モンスターの常識を覆す乗りやすさを獲得したモンスター696が2008年に登場。日本では入門用のドゥカティとしても人気に。女性ライダーにも支持された。同コンセプトで片持ちスイングアームのモンスター796も存在した。
新たなるシャシーを獲得したモンスター1100も2008年モデルとして登場。片持ちスイングアームが良い雰囲気。
シャシーのイメージ図。当時のMotoGPマシンであるデスモセディチGPも似たようなレイアウトで、これがドゥカティの新しいトレンドになっていった。
ドゥカティ空冷Lツインエンジンとして初めて100馬力を達成したモデル。マフラーはアップタイプから右サイド2本出しになった。事実上、最強の空冷モンスターだ。
2012年にはアパレルブランドであるディーゼルとのコラボモデルも登場。シャシーやエキゾーストをブラックアウトし、専用表皮のシートなどの特別装備を採用。ミリタリーテイストでまとめたマットグリーンのカラーも洒落ていた。
【第3世代 2014-2020】解説 重厚感あるマッスルな存在に
これまでは軽量&コンパクトなネイキッドだったモンスターシリーズだが、水冷モンスター復活のタイミングでマッスルな印象に。1198ccのテスタストレッタ11°水冷Lツインを搭載し、電子制御を充実させた。大柄な車体は賛否が分かれたが、2016年にはスポーティなモンスター1200Rが誕生。スポーツ派も納得させた。
空冷はモンスター796をラインアップ。大排気量空冷モンスターファンは、事実上行き先を失った。伝統のスチールトレリスフレームがモンスターに採用されるのは、第3世代までとなる。
モンスターS4RS以来の水冷モンスターで、前後サスペンションにはオーリンズ製のフルアジャスタブルを採用。大きく、優雅で、ハイパフォーマンスだった。
2015年には821ccエンジンを搭載するモンスター821も登場。空冷の696と796がカタログから外れたタイミングで、新たなるミドルモンスターとして登場した。
2016年には最高のパフォーマンスを約束するモンスター1200Rが登場。前後サスペンションにオーリンズ製を採用し、専用チューンが施されたエンジンは160HPを発揮した。
待望の空冷モンスターとしてモンスター797が登場。第一世代を思わせるスチールトレリスフレームを採用し、ファンに原点回帰したような印象を与えた。
モンスター誕生25周年を記念した、モンスター1200 25°アニーバーサリオは、500台限定の記念モデル。イタリア国旗を模したカラーリングを施し、ゴールドカラーのフレームとホイールを採用した。
【第4世代 2021-2025】解説 トレリスフレームを廃し、新たなるシャシーを獲得
第4世代のモンスター+は、先代のモンスター821と比較するとエンジンで2.4kg、フレームで4.5kg、ホイール1.7kg、スイングアーム1.6kg、リアフレーム1.9kg、さらに細部を見直すことで、トータルで18kgもの軽量化を実現。
パニガーレ系のシャシーコンセプトをモンスターにも採用し、フレームはモノコックに進化。スチールトレリスフレームが姿を消し、937ccとは思えないスリムで軽量な車体を実現した。軽量パーツをふんだんに使った軽量化でなく、構造で軽くすることを追求。そのプロセスはとても合理的で、走りにも現れていた。
日本仕様はローダウンサスペンションとローシートを採用。足つき性の良さにもこだわった仕様となっている。
まるでフレームがないようにも見えるレイアウトが特徴。だが、エンジンの真上に小さなモノコックフレームを搭載。
世界中で愛された天才F1ドライバー、アイルトン・セナの没後30年となる2024年にモンスター セナを発表。世界限定341台で、2025年モデルとして登場した。セナのヘルメットをオマージュしたカラーが特徴だ。
【第5世代 2026~】解説
モンスターとは究極にシンプルなバイク。その答えがここにある
見た目には第4世代から大きな変化はないように見える第5世代のモンスターだが、新たに開発された890ccのV2エンジンを搭載してフルモデルチェンジ。V2はドゥカティが初めてミドルクラス専用に設計したエンジンで、Vツインエンジン史上最軽量に仕上がり、扱いやすい特性を重視。
長く間、Vツインエンジンに使用されていたバルブ開閉機構であるデスモドローミックをバルブスプリングに変更し、ヘッドのコンパクト化も実現した。
第5世代のモンスターは、第4世代から4kgの軽量化を果たし、より身近に。日本仕様は、ローダウンサスペンションとローシートを標準装備する。
「ライディングを楽しむには、ひとつのエンジン、2つの車輪、燃料タンク、ハンドルバー、それらを取り付けるいくつかの金属が必要なだけだ」これはモンスターの生みの親であるガルーツィの言葉だ。
時代が変わってもモンスターの思想は変わらない。それはドゥカティらしさを最もシンプルなカタチで楽しめるバイクだということだ。
自らを「I M LEGEND」と名乗る最新モンスターに跨れば、軽さと細さはすぐに体感でき、走り出せば一瞬で身体にフィットすることを理解できるはずだ。
ドゥカティ「モンスター+」カラー・人気投票
[ 表が省略されました。オリジナルサイトでご覧ください ]
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
「道徳の敗北だ」 上尾市消防本部が激怒した”非常識行為”にSNSも唖然 「あってはならない愚行」の内容とは
高速道路の料金が実質「半額」になる!? ETCを使っているなら登録しないとソンする「無料サービス」の正体とは
2週間で1000台受注! 中国メーカー初の軽EV「ラッコ」 乗って分かった驚きのクオリティ、意外な“弱点”も
中身は100%本物のBMWだけど海賊版! いまロシアで作られ売られる「無許可のBMW」の正体とは
あまり長距離は走らないけれど……ハイブリッド車を選ぶ意味はあるのか!? ハイブリッドとガソリン車で迷った時の後悔しない選び方!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント
純正OPのバーハンKITに交換したり、サイドバック付けて収納容量稼いで、ツーリングにも使用しましたが結構、疲れるバイクだった印象が残っています。。。