プラットフォームを共有した2台
自動車エンジニアやデザイナーにとって、新しいスポーツカーを任されるほど幸せな仕事はないかもしれない。そう考えると、1980年代のアルファ・ロメオやフィアットに在籍していた人たちの気持ちは、晴れやかとはいえなかっただろう。
【画像】懐かしのイタリアン・ロードスター スパイダーとバルケッタ GTVにクーペフィアットも 全68枚
フィアットのミドシップ・スパイダー、X1/9の生産は1982年にカロッツェリアのベルトーネ社へ移された。アルファ・ロメオには、105シリーズの進化版といえるスパイダーが残っていたものの、その起源は1966年の124 スポーツ・スパイダーにまで遡った。
アルファ・ロメオはフィアット傘下に加わり、独自の勢いを失っていた。トリノの巨人、ファット自身も経営には苦しんでいた。だからこそ、そんな状況を打開するように、スタイリッシュなオープン・スポーツカーが誕生したように思う。
フィアットのバルケッタと、アルファ・ロメオの916型のスパイダーは、コンパクト・ハッチバックのティーポ用に開発されたタイプ2プラットフォームを共有していた。トリノの先進的なアイデアと、デザインの才能も一緒に。
小さなイタリア製スポーツカーに飢えていた当時のファンは、1995年に発売された2台へときめいたことだろう。英国へ当初導入されたのは、左ハンドル車だったとはいえ。
フィアット・バルケッタの英国価格は1万4000ポンドで、欧州本土の価格と比べてかなり高いものだった。その結果、少なくない数が並行輸入で英国へ入り、現在も正規輸入車より残存数は多い。
クリス・バングルも関わったスタイリング
小さなフィアットのボンネット内に搭載されたのは、1.75Lの4気筒エンジン。5速MTが組み合され、色っぽいオープンボディを軽快に走らせた。
ダブル・オーバーヘッド・カム(DOHC)の16バルブで、可変吸気バルブタイミングを備え、英国仕様では最高出力131psと最大トルク16.7kg-mを発揮。不足ない活気を与えていた。
サスペンションは、プントにも似た独立懸架。フロントがマクファーソンストラット式、リアがトレーリングアーム式を採用し、独自のチューニングを得ていた。アンチロールバーも装備されている。
そんなバルケッタが一際注目を集めた理由が、魅惑的なスタイリング。後にBMWで活躍するデザイナーのクリス・バングル氏のほか、アンドレアス・ザパティナス氏とエルマンノ・クレッソーニ氏による共同プロジェクトで、情熱的に進められた。
当初から従来の型にはまらない、新しいデザインが目指されていたという。検討用のクレイモデルが作られ始めたのは1991年。優雅に曲線を描くフォルムだけでなく、ドアハンドルやワンピース・ヘッドライトなど、繊細なディティールも実現されている。
一方、インテリアデザインを手掛けたのは、若きアレッサンドロ・カヴァッツァ氏。バルケッタで頭角を現し、アルファ・ロメオのデザイン部門を率いるポジションへ抜擢されている。
ボディラインがインテリアへ流れ込む
大学を卒業したてだったカヴァッツァは、フィアットの既存部品を巧みに組み合わせながら、自身が「柔らかい繭」と表現する、優雅なものへ発展させた。
「様々な要素を結びつける、流れるようなラインが必要でした。特定のポイントでフェードアウトさせることで、柔らかさを生み出しています」。と、彼は後に説明している。
ボディラインがインテリアへ滑らかに流れ込むというアイデアは、ドアパネルだけでなく、ダッシュボードなど全体の曲面にも影響を与えている。目線より下のエリアにも、ボディとの呼応が見られる。
バルケッタの生産を任されたのは、コーチビルダーのマッジョーラ社。トリノ郊外の、ランチア・デルタを製造していた工場を改修して進められた。
フロントエンジン・フロントドライブのフィアットは、手頃なスポーツモデルを欲していた自動車ファンにヒット。英国でも、動力性能で勝り右ハンドル車を選択できたマツダMX-5(ロードスター)と並んで、1995年から好調に注文を集めた。
ところが、2002年にマッジョーラ社は破産。フィアットのミラフィオリ工場へ生産を移し、フェイスリフトでリフレッシュを加え、2003年にフェイズ2の後期モデルとして市場を満たした。
トランクリッド中央にブレーキライトが追加されたのは、最終年の2005年。10年間に、合計5万7571台がラインオフしている。
特徴的なサイドラインと4灯ヘッドライト
他方、アルファ・ロメオの916型GTV クーペとスパイダーは、プラットフォームを共有するバルケッタよりひと回り大きい。仕立ても豪華で、英国価格は2万110ポンドが付けられた。それでも、BMW Z3などよりはお手頃だった。
ピニンファリーナ社に在籍していたエンリコ・フミア氏がスタイリングを手掛け、後方に向けて上昇し、ボディを囲むショルダーラインが特徴。そのラインは大きなクラムシェル・ボンネットの開口部へ繋がり、大胆なフロントマスクを構成している。
ボンネットに穴が空き、そこから4灯のヘッドライトが光るアイデアは、1981年に自ら手掛けたアウディ・クワトロ・クオーツ・コンセプトにまで遡る。その後、日産セフィーロのスタイリングで検討されたが、コストを理由にキャンセルされたようだ。
インテリアは、ピニンファリーナ社のジュゼッペ・ランダッツォ氏が防水性を持つデザインをスパイダー用に考案するが、承認には至らず。アルファ・ロメオ内で描かれたGTVクーペのものへ、軽く手直しされるに留まった。
サスペンションは、フロントがマクファーソンストラット式で、リアがマルチリンク式。4ドアサルーンの155とも一部の部品を共有している。高負荷時にリアタイヤへ僅かに舵角が生まれる、巧みな設計が施されている。
ステアリングにも、アルファ・ロメオがラピッド・レスポンスと呼んだ、高度な技術が与えられている。旋回時のレスポンスを高めるレシオ特性で、ロックトゥロックは2.2回転に設定された。小回りは得意ではなかったけれど。
この続きは後編にて。
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