刺激に満ちた怪物たち
text:AUTOCAR UK編集部
【画像】不滅のハードコア・スポーツカー【じっくり写真で見る】 全142枚
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)
真のペトロールヘッドの世界へようこそ。驚異的なグリップとスピード、鮮やかなドライバー・エンゲージメントとスリル、最高のハンドリング、そしてサーキット走行に適した仕様と目的がすべてここにある。きっと気に入るはずだ。
ポルシェ、フェラーリ、ランボルギーニ、マクラーレン……彼らは皆、最高にハードコアなスポーツカーを作りたがっている。英AUTOCAR編集部は、どれが称賛に値するかを決めるために、あらゆるクルマをテストしてきた。その中から10台、ランキング形式で紹介する。
スピードと興奮を提供してくれる正真正銘の不滅の名車に敬意を表したい。中には、あまりにも刺激的すぎて、日常的には扱いにくいものもあるが、ここで取り上げているクルマはすべてナンバープレートを付けて公道を走ることができる。
サーキット走行用のツールが欲しいと思ったら、すべてが選択肢に上がるだろう。コースを思い切り楽しんだ後は家までドライブすることもできる。
この記事では、現在生産されているマシンと、販売は終了してしまったが、いまだに後継が登場していないマシンの両方をランキングしている。このような類のクルマは滅多に出てこないし、すぐに完売してしまうが、パンフレットから消えてしまった後も長く愛され続ける。
1. マクラーレン765LT
マクラーレンのスペシャルモデル「ロングテール」シリーズの最新モデルは、欠点がないわけではないが、サーキット・スーパーカーの上位に位置する爆発的なパワーを持ったクルマとしては、決して負けていないと思う。
まず第一に、765LTに注ぎ込まれた努力と費用は評価に値する。720Sのようにすでに軽量なクルマから重量を削るのは並大抵のことではなく、チタン製ホイールナットや薄いガラスの採用など、極端な措置を取らざるを得なかったが、その結果、合計で80kgもの軽量化に成功し、パワートレインにかかる負担を大幅に減らした。
そのパワートレインは、マクラーレンの4.0LツインターボV8。このクルマのために765psにチューニングされ、ファイナルドライブを短くすることで、首を持っていかれるような加速を実現している。
しかし、LTが720Sと大きく異なるのは、より柔軟なバランスとハンドリングだ。単純に、このクルマは遊びたいのであって、おそらくマクラーレンがこれまでに作ったクルマの中で最も楽しいものだろう。
コーナーのどの段階でもヨーがかかり、そのためにスピードが犠牲になることもあるが、ダイナミズムとマクラーレンの特徴であるステアリング、そして軽い感覚が組み合わさることで、記憶に残るドライビング・エクスペリエンスを実現している。
ただし、そう簡単には乗りこなせないので、ドライバーの気概が必要だ。
2. ポルシェ911 GT3
ポルシェ911 GT3は、ハードコアへのフォーカス、サーキット走行への対応力、ハンドリングの素晴らしさ、ドライバーとの距離感、そしてパフォーマンスにより、絶対的な評価を得ているクルマだ。
モータースポーツを始めたばかりの人が、スピードや興奮に対する投資効果を最大化するためにはどのクルマを買えばいいのか、という質問に対する定番の回答となっている。唯一の難点は、最近では誰もがそのことを知っているため、非常に高い人気を誇っているということだ。
992世代のGT3は、見た目は以前よりも派手になったものの、紙面上ではその素晴らしさを特に大きくアピールするマシンではない。最高出力510psの4.0Lフラットシックスを搭載しているため、このクラスのマシンとしてはやや力不足の感があり、ポルシェ自身のラインナップにも、パワーや加速性能を謳う911が何台も存在する。
しかし、GT3ほどペース、グリップ、バランス、そして適切に配分された重量を兼ね備えたライバルはいない。また、衝撃的なラップタイムや、オールラウンドなダイナミクスと卓越したコントロール性も唯一無二と言っていい。
最新の992 GT3についての懸念点は、このモデルが公道での快適性よりも、むしろ意図的にサーキットカーとして位置づけられているように見えることだ。そのため、フラッグシップモデルの次期GT3 RSが発表される前から、その地位を占拠している。このように、GT3は991世代に比べて、総合的な完成度が低いと考えられる。
しかし、1999年に最初のGT3が登場して以来、4世代に渡って何度も改良を繰り返し、どんどん良くなってきていることも事実だ。GT3の派生モデルを含めると、英AUTOCAR編集部が主催する英国のベスト・ドライバーズカー・コンテストで4回も優勝している。ちなみに、30年以上の歴史の中で、2回以上受賞したスポーツカーは他にはない。
3. マクラーレン600LT
AUTOCARの常連読者は、2018年の英国ベスト・ドライバーズカーに輝いたマクラーレン600LTがこのリストの3位に滑り込んできたことに多少の驚きを覚えるかもしれない。
誤解のないように言っておくと、マクラーレンは直感的で魅力的、美しくバランスのとれたハードコア・スポーツカーであり、公道でもサーキットでも気品ある働きをする。しかし、英AUTOCAR編集部は現行の911 GT3と765LTを極めて高く評価している。
600LTは、素晴らしい570Sをベースにしており、マクラーレン・オートモーティブが発表した3番目の「ロングテール」モデルである。パワーは30psアップして600psとなり、スプリングは大幅に硬く、ダンパーは再調整され、アグレッシブなボディワークにより走行時のダウンフォースがさらに大きくなっている。
また、サーキットで鍛えられた結果、余分なものも取り除かれている。最も軽い仕様(エアコンなし、ノーズリフトなし、ステレオなしなど)では、乾燥状態で1247kg(620Rよりも軽い)になる。
その結果、マクラーレンが得意とするスイートかつ正確な操縦性に加えて、これまで以上に速く、グリップ力があり、音も良いという、まさに特別なパッケージが完成したのだ。マクラーレンは最高の仕事をしている。
4. フェラーリ488ピスタ
まずは数値から紹介しよう。最高出力720ps、最大トルク78kg-m、最高重量1359kg、0-100km/h加速2.85秒、価格は25万2765ポンド(約3800万円)だ。要するに、488ピスタは実に本格的なマシンなのだ。そして、その効果は絶大だ。
英国ベスト・ドライバーズカー2018では、458スペチアーレの後継として、アングレシー・コースト・サーキットを最速タイムで周回し、マクラーレン600LTより1.7秒速い1分11.4秒を記録した。
このクルマは、即応性を特徴としている。ハンドルを切ると、追いかけられたウサギのようにフロントが俊敏に反応する。ステアリングコラムに取り付けられたレバーを引くと、7速デュアルクラッチ・トランスミッションが瞬きする間にギアを入れ替える。勇気を出してスロットルを全開にすれば、驚くほどの速さで地平線に追いつくことができる。
ピスタの絶大なポテンシャルを考えると、サーキットでは手に負えないと書いてしまうのは簡単だが、実際には最もバランスが良く、調整しやすく、美しいクルマの1つである。
しかし、マクラーレン600LTのように、公道でその能力を十分に発揮することができないため、今回は4位に甘んじている。だが、ライバルとの差は信じられないほど小さい。
5. ポルシェ911 GT2 RS
世界で最も愛されているスポーツカーが、ちょっとおかしなことになっている。最高出力700ps、最高速度340km/hのGT2 RSよりも速くてパワフルな911は存在しない。
GT2 RSは、GT3 RSのようなサーキット走行に特化した性能と、911ターボSでさえ対応できないほどのトルクと圧倒的なパフォーマンスを兼ね備えた後輪駆動車だ。これはかなりのハイレベルな指針であり、ポルシェ自身の高い基準をもってしても、完全に成功しているとは言えない。
しかし、GT2 RSのオーナーにとって、このような些細なことが、ドライバーズカーとしての圧倒的な魅力を妨げるとは限らない。というのも、GT2 RSは、その荒々しさをほとんどの時間に抑制し、必要なときだけ発揮するという、驚くべき能力を持っているからだ。
GT2 RSは、21インチのリアホイールと幅325のタイヤを使用して、そのエネルギーをターマックに伝える。カーボン・セラミック・ブレーキが標準装備され、GT3 RSよりもさらに特殊なサスペンション・セットアップが採用されている。
それでいて、これまでの911 GT2とは異なり、公道の振る舞い方を知っているのだ。公道以外の場合は?ターボラグがないわけではないが、それでも驚くほどのレスポンスとリニア感があり、ハイパーカーが全力で走っているようなペースだ。
また、ほとんどの場合、サーキットでは使いやすく、従順だ。GT3のようにシナプスに組み込まれているような一体感はないが、それでも他に類を見ないものだ。
6. メルセデスAMG GTブラックシリーズ
メルセデスAMGの歴史上、どの市販車よりも多くのモータースポーツ技術を搭載した先代GT Rは、シュトゥットガルト近郊のライバルであるポルシェ911 GT3のゴールデンボーイに、アファルターバッハが一矢報いたモデルである。
このGT Rの存在は、いつの日か世界的に有名なライバルの影から抜け出し、同等の地位と評価を得られるスポーツカーメーカーになるというAMGの決意を物語っている。
そんなGT Rをさらに進化させたように見えるが、実際にはまったくの別物であるAMG GTブラックシリーズ。6代目となるブラックシリーズは、GT Rよりも35kg軽く、AMGのGT3マシンと共通のエアロノウハウをふんだんに盛り込んでおり(実際、レース用のエアロパッケージを開発した人物がこのモデルを手がけている)、ランボルギーニ・アヴェンタドールSVJを抑えてニュルブルクリンクのラップレコードを更新している。
AMGはツインターボV8を改良し、従来のクロスプレーン型からフラットプレーン型に変更し、出力を730psに高めた。サスペンションやインテリアもレース仕様になっている。
編集部のマット・プライヤーは、「狂ったようにブラックシリーズを運転して、そのプロセスに関与し、絆を感じ、最後にはフル装備のGT3レースカーよりも5秒ほど遅いラップタイムを記録することができる」と評価している。
7. ランボルギーニ・ ウラカン・ペルフォルマンテ
つい最近まで、ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェ・サーキットを周回する史上最速の量産車だったランボルギーニ・ウラカン・ペルフォルマンテは、AUTOCARが行ってきた数々のロードテストの中でも最速のクルマの1つでもある。
これは、最高出力640ps、超軽量、4輪駆動のランボが、マクラーレンP1、ポルシェ918スパイダー、ブガッティ・ヴェイロン・スーパースポーツよりも速いということだ。このクルマの自然吸気V10エンジンが8000rpmを超えたときの、恐ろしいほどの血気盛んな咆哮や、ツインクラッチ・トランスミッションのシフトアップ時の獰猛さには、ただひたすらに心を揺さぶられるだろう。
ターボを搭載したクルマが増えている今、ウラカンの鋭いエンジンは本当に受け入れられ、味わうべきものだと思う。しかし、驚くほどほど素晴らしいピレリ・トロフェオRタイヤが温まったときに得られるハンドリングのバランスにより、パワートレインの真の輝きに手を触れることができるのだ。
ウラカンには、他の追随を許さないスーパーカーとしての存在感と空気感、そして血の通った魂がある。欲望の対象としてのウラカンの魅力は多面的であり、これほど美しいカーボンファイバーは世界のどこにも見当たらない。ドライバーズカーとしては、スロットルオンでの落ち着きや、クルマとの対話性がやや欠けているだけだ。
8. ランボルギーニ・アヴェンタドールSVJ
スーパーカーに詳しい人に対して「イオタ」という言葉を口にすると、必ずと言っていいほど、膝がガクガクするような反応が返ってくる。当初は、ランボルギーニのテストドライバーであるボブ・ウォレスが、伝説的なミウラのパフォーマンスレベルを向上させ、FIAスポーツカーレースに参加できるようにするために行ったプロジェクトだった。プロトタイプは1台しか製作されず、特別限定生産される前に燃え尽きてしまった。
アヴェンタドールSVJは、ウォレスのミウラ以来、ランボルギーニとしては2台目の「イオタ(Jota)」の名を冠したモデルである。また、ディアブロ、ムルシエラゴ、カウンタック、ミウラなど、ランボルギーニの重要かつ唯一無二の大型ミドエンジン12気筒スーパーカーの系譜へのオマージュでもある。
しかし、アヴェンタドールの後継モデルでは、電動化によってこのレシピが変わろうとしている。
大きくて、広くて、重くて、焼け付くような速さを持つアヴェンタドールSVJは、その性能を最大限に発揮するためには肉体的な努力と身体的な妥協、そして十分なコミットメントを必要とする。
まず、狭くてかなり時代遅れのキャビンがドライバーの熱意を試すだろう。その後、シフトチェンジの激しさ、走行ペースの野蛮さ、グリップレベルの限界を見つけるために必要な集中力が、克服すべき次の課題となる。
しかし、すべてを乗り越えれば、アヴェンタドールSVJは比類のない鮮烈なドライビング・エクスペリエンスを提供してくれる。速く走ることがより容易になった現代において、速いラップを刻むことは、他では得られない貴重な体験だ。
ハードコアなスリルを全身で感じたり、古き良き時代の味を楽しんだりしたいのならおすすめだ。このランボは、そのような存在なのだ。
9. ロータス・エキシージ・カップ430
これは、ロータスがこれまでに製造した公道走行可能なモデルの中で、最も速いクルマにほかならない。
スポーツ380の仕様を大幅に変更したカップ430は、エヴォーラGT430と共通の最高出力435psのスーパーチャージャー付きV6エンジンを搭載しているが、「ファイナル・エディション」仕様では1098kgという軽量を実現し、0-100km/h加速は3.2秒と謳われている。
最高速度は280km/hで、数百kgのダウンフォースを備えているため、ロータスのホームテストコースを後継の新型車より1秒以上速く走ることができる。
路上でもサーキットでも、カップ430はこれまでのロータスが到達できなかったレベルの猛烈な速さと強烈な魅力を感じさせる。しなやかな乗り心地を持たないクルマだが、3方向に調整可能なダンパーと調整可能なアンチロールバーを備えているので、好みに合わせて設定することができる。
標準の設定では、ドライバーの熱意を試すのに十分な硬さがあり、キャビンはこれまでに経験したことのないほどタイトで薄いものになっている。
サーキット走行では、そのハンドリングは見事としか言いようがない。軽いクルマなのにメカに負担をかけず、何度も何度もハードに走らせても、プレッシャーにしおれる気配がない。ドライバーが努力の結果に得られるのは、鮮やかな興奮、圧倒的なスピード、最高に俊敏でバランスのとれたハンドリングだが、ウェットコンディションでは非常に怖いものだ。
2021年に生産が終了するため、ファイナル・エディションはその名の通り最後のモデルであり、サーキット仕様の軽量スポーツカーの購入を検討しているなら、今がその時だ。
10. 日産GT-Rニスモ
R35世代のデビューから約13年を経て、ハードコアなニスモ仕様で再登場したGT-Rは、日産がマクラーレンと同じカテゴリーでパンチを繰り出せることからも、その開発力の高さが伺える。
この最新モデルでは、3.7L V6に軽量で高速回転可能なターボチャージャーを搭載し、巨大なセラミックブレーキ、ホイールアーチ・ベントなどの各エアロパーツ、そして大量のカーボンファイバーを使用している。パワーは600psのままだが、価格は17万5000ポンド(約2650万円)にまで上昇した。
問題は相変わらず、GT-Rが基本的に重いクルマであり、このリスト上で最も重心が高いという点だ。繊細さや満足感ではなく、圧倒的な速さと個性でこのリストに名を連ねている。
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