FIA世界耐久選手権(WEC)の2021年シーズンは、3月19日のセブリング1000マイルレースで開幕する予定となっていたが、WECは開幕戦を4月4日に延期することを決定。レース開催地も、ポルトガルのポルティマオにあるアルガルヴェ・サーキットに変更することが発表された。
新型コロナウイルスのパンデミックは、感染力の強い変異種の存在が確認されたこともあって、収束の気配を見せていない。特にアメリカではすでに死者数が40万人を超えるなど、対策が急がれている。
■トヨタ、WEC開幕戦セブリングの開催を懸念。グリッケンハウスのエントリーにも影響?
ヨーロッパからアメリカに向けた海上輸送の都合上、WECは開幕戦に関する判断を2月初頭までに下す必要性に迫られていたが、チームやスタッフがアメリカ大陸へと大移動するというリスクを避け、ヨーロッパでシーズンをスタートさせることを決めた形だ。
3月30~31日には、アルガルヴェ・サーキットでWEC公式プレシーズンテスト”プロローグ”が行なわれ、開幕戦のポルティマオ8時間レースに向けて各チームが準備することになる。
なお”スーパーセブリング”としてWECと同週末にセブリング12時間レースを実施する予定だったIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権は、予定通りレースを実施すると見られている。
WECのオーガナイザーであるACO(フランス西部自動車クラブ)のピエール・フィヨン会長は、次のようにコメントしている。
「残念ながら新型コロナウイルスのパンデミックは世界的に問題を引き起こし続けており、セブリングを中止してポルティマオでのレースに変更するという決定は、FIA、IMSA、セブリングの経営陣との協議の上でなされた」
「アメリカの友人に会えないのは残念だし、アメリカに戻ってIMSAと一緒にスーパーセブリングでレースができる日が待ち遠しい。我々は今後もIMSAやセブリング・インターナショナル・レースウェイと長期的な関係を築いていくことに焦点を当てており、将来的にはセブリングに戻ってくることを望んでいる」
また、WECの新CEOであるフレデリック・ルキアンは、チームのために責任ある決断を下したと述べた。
「この数ヵ月間、パンデミックが非常に予測不可能なものであることを見てきた。主要な関係者と何度か話し合った結果、ほとんどのチームが拠点としているヨーロッパに残って開幕戦を行なうことが決定された」
「土壇場でのキャンセルは、WECファミリー全体に経済的な影響を与えることになるので、責任ある決断をした」
ヨーロッパで開幕戦が行なわれることで、『グリッケンハウス 007 LMH』と呼ばれるニューマシンの開発を進めているグリッケンハウスが、開幕戦に参加する可能性が浮上した。
グリッケンハウスは2021年のWECエントリーリストに名前が載っているものの、新マシンを開発する上でヨーロッパでのテストに時間をかけたいとして、セブリングでの開幕戦には参戦しない意向だったのだ。
チームオーナーのジム・グリッケンハウスは「3月16日にはレースをする準備が整い、もし開幕戦がヨーロッパでその日以降に行なわれるなら、2台で参戦できる」とコメントしている。
一方、新たなWEC開幕戦と同週末には、富士スピードウェイでスーパーフォーミュラの開幕戦が行なわれる予定となっている。そのため両シリーズに参戦している中嶋一貴と小林可夢偉は、スーパーフォーミュラを欠場し、ニューマシン『GR010 HYBRID』のデビュー戦を優先することになると思われる。
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