2011年11月、スズキの売れ筋軽乗用車「アルト」をベースに、標準モデルのアルトより30%以上の燃費向上を実現した「アルトエコ」が登場した。ハイブリッドのような高価なシステムを使うことなく、また車両価格を大きく上昇させることなく、JC08モード走行燃費30.2km/Lを実現して大きな注目を集めた。今回は登場間もなく行われた試乗テストの模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2012年3月号より)
標準モデルとほとんど変わらない外観と室内
アルト エコで新色として登場したリーフホワイト(緑味を帯びた白)の色は、言われればなるほどとわかるもの。外観の特徴は、リアコンビネーションランプの一部とハイマウントストップランプにLEDが採用されたこととエンブレムぐらい。室内は標準モデルと変わらない。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
走り出すと、最初の出足は思ったよりも力感がある。ただ、30km/hぐらいから上への加速感は、周囲の流れに合わせようとするなら、アクセルペダルをしっかりと奥まで踏み込むことが必要な印象だ。エンジンとCVTは燃費向上に向けたセッティングなので、その意図から外れる運転を行う場合には、その意思をしっかりと伝える必要がある。だがしっかりと伝えれば、それなりにきちんと応えてくれるのがいい。
アルト エコのエンジンは、新型MRワゴンに投入された新しいR06A型のNA仕様がベース。MRワゴン用に対して、クランクメタルの幅を約10%縮小してフリクション低減と軽量化を実現、バルブスプリングのセット荷重を約25%低減するなどしてカムシャフトの駆動ロスを抑え、アジャスタースプリング荷重を約30%低減してタイミングチェーンを低張力化。さらにピストンリングの表面処理をより摩擦係数の低いDLC(ダイヤモンドライクカーボン)に変更、ピストン下部のスカート部に施す樹脂コーティングを均一コーティングからオイル保持力に優れた波状のパターンコーティングにされた。エンジン再始動時などで、シリンダー壁面のオイル付着量が十分でない場合の対策である。CVTでは、電動オイルポンプの採用とより粘度の低い潤滑オイルに変更して回転抵抗が下げられた。
徹底的な高効率化、15mmローダウンも燃費向上のため
また、走行抵抗の低減にも力が注がれて、フロントのハブとベアリングに軽自動車として初となる一体構造を採用、回転抵抗の低減と軽量化を果たした。リアホイールベアリングも低抵抗化、ホイールキャップやスチールホイール、ドライブシャフト、トレーリングアームは設計変更によって軽量化された。タイヤはトレッドゴムを新開発し、内部構造の最適化で空気圧を標準タイヤの240kPaから280kPaに高めて転がり抵抗を大幅に低減した専用モデルだ。
さらにスプリングとショックアブソーバ変更で全高を15mmダウン。ボディ下部への空気流入量を減らし、タイヤが隠れた分だけ前面投影面積も減少することで空気抵抗の低減も図られた。この変更は80km/hぐらいから上の速度域で効果が出てくるとのこと。フロントバンパーはコーナー部分にフラットな面を設けて空気の流れをスムーズにし、さらにバンパー肉厚を薄くして軽量化も実施されている。
アイドリングストップの制御にも新プログラムが加わった。減速時に車速が9km/h以下になるとエンジンを停止させるとともに、停車時のアイドリングストップ時にハンドルを操作するとエンジンが再始動する機能を付加した。
アルト エコは、凄いモデルだ。30.2km/LというJC08モード走行燃費を実現するために、徹底的な高効率化が行われたスペシャルモデルだと思えた。スズキのエンジニアに話を聞くと、「アルトの実際の使われ方では、1日に10kmとか20kmぐらいという走行パターンの方が多いですね」とのこと。確かに、走らせてみると、遠方へのドライブより近距離をこまめに走らせるという用途を優先して最適化されていることが感じられた。
とはいえ、大多数のユーザーにとって、燃費の値は非常に大きなアピールを備えているのも事実だ。今後、アルト エコで培われた先進的かつ高効率なテクノロジーは、他のモデルにも広く導入されて、花開いていくのだろう。(文:Motor Magazine編集部 香高和仁)
スズキ アルト エコS 主要諸元
●全長×全幅×全高:3395×1475×1520mm
●ホイールベース:2400mm
●車両重量:740kg
●エンジン:直3DOHC
●排気量:658cc
●最高出力:38kW(52ps)/6000rpm
●最大トルク:63Nm(6.4kgm)/4000rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:FF
●車両価格(税込):99万5000円(2012年当時)
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みんなのコメント
ガソリンが20リッターしか入らないようにする
徹底した軽量化は有名な話です
これに触れてないなんて勉強不足ですね!