人気も堅調で、実力充分。それなのになぜ廃止された? 消えた実力車が生き残れなかった「分水嶺」は?
最近は以前に比べると国内新車販売が低迷している。1990年には778万台が販売されたが、2020年は約460万台であった。コロナ禍の影響を受ける前の2019年は、消費税の導入があったとはいえ520万台だ。最盛期に比べると、国内販売は70%以下に低下した。
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また近年ではSUVの車種数が増えている。メーカーでは電動化や自動運転に関する投資も急増しており、国内向けの新車開発を絞るようになった。
そこで生産を終える車種も増えたが、廃止するのが惜しいクルマも少なくない。その事情を考えたい。
文/渡辺陽一郎 写真/MITSUBISHI、TOYOTA、NISSAN、HONDA
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トヨタ プリウスα
プリウスα(販売期間:2011年~2021年/全長4615×全幅1775×全高1575mm)
まずプリウスαが挙げられる。2011年に発売され、1か月後の受注台数は5万2000台に達した。2013年に入っても1か月に8000~9000台が登録され、この頃はプリウスシリーズ全体の約40%をαが占めた。
しかし2015年にプリウスが現行型にフルモデルチェンジしても、プリウスαは刷新されなかった。それはトヨタのハイブリッド車が増えたからだ。
2011年時点では、ハイブリッド車は少なかったが、2013年にはカローラフィールダー、2014年にはヴォクシー&ノア、2015年にはシエンタと、空間効率の優れた車種にもハイブリッドが設定された。その結果、プリウスαはフルモデルチェンジされず2021年に生産を終えた。
ハイブリッド専用ワゴンは貴重な存在だったが、そのニーズは、現在用意されている豊富なトヨタ車で補える。またハイブリッドの車種数が増えて身近な技術になったため、今ではハイブリッド専用車の魅力も薄れた。
そのためにプリウスαの廃止だけでなく、プリウスの登録台数も減っている。2010年にプリウスは、αなどを含んだシリーズ全体で1か月平均2万6000台を登録したが、2010年は5600台だ。プリウスシリーズの需要は10年前の20%程度まで下がりαの廃止に至った。
トヨタ エスティマ
エスティマ(販売期間:1990年~2019年/全長4795×全幅1800×全高1730mm)
以前はLサイズミニバンの主力はエスティマだった。アルファード&ヴェルファイアも、このエンジンとプラットフォームを使って開発された。
しかしその後にアルファード&ヴェルファイアの登録台数が増えた。2010年は、エスティマは1か月平均4500台前後で、アルファードは約3000台、ヴェルファイアは5000台であった。
この時点ではエスティマも健闘していたが、アルファード+ヴェルファイアの姉妹車全体では8000台に達する。この後もアルファードとヴェルファイアは売れ行きを伸ばし、エスティマは古くなって登録台数を減らした。
エスティマがフルモデルチェンジされずに廃止された理由には、アルファード&ヴェルファイアの好調な売れ行きと併せて、ミニバン需要に関する不安感もあった。現時点でミニバンは日本の人気カテゴリーだが、子どもの数は減っており、今後需要が急落する心配もある。そこに開発費用の削減も加わって廃止された。
そして今ではトヨタの全店が全車を扱うから、販売格差も拡大している。ヴェルファイアはアルファードの8%しか売れていない。仮に2012年頃にエスティマをフルモデルチェンジしても、販売不信に苦しんでいた可能性がある。
その一方でエスティマには、アルファード&ヴェルファイアとは違う独自の価値もある。トヨタの開発者は次の通りコメントした。
「エスティマは空力特性に優れたミニバンだ。全高も低いから、アルファード&ヴェルファイアに比べるとボディも軽く、タイヤは細くできる。もしアルファード&ヴェルファイアが開発されていたら、走りが軽快で、なおかつ燃費の優れた上級ミニバンになっていたと思う」
廃止するには惜しいクルマであった。
日産 ティーダ
ティーダ(国内販売期間:2004年~2012年/全長4205×全幅1695×全高1535mm ※前期型)
ティーダは日産のコンパクトカーで、業績の改善を目指す過程において2004年に発売された。
使用される「Bプラットフォーム」は、先代マーチと共通だが、内外装は上質で、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は2600mmと長いから後席も広い。「小さな高級車」を感じさせた。
さらに良好な視界とバランスの取れたボディスタイルを両立させ、優れた商品に仕上げていた。そのために2005年には1か月平均で8000台以上が登録され、今日のフィットと同等に売れていた。
ところが2代目は3ナンバー車に拡大され、海外専用車となった。日本では先代ノートに最上級のメダリストを設定したが、質感は大幅に下がり、ティーダの位置付けを埋めることはできなかった。
2008年に発生したリーマンショックによる世界的な経済不況の後は、各社とも商品開発が海外市場中心になり、日産は特にこの傾向が強かった。この流れのなかで、国内市場に最適な「小さな高級車」の素性を備えるティーダが廃止された。前述のエスティマと同様、残念な結果となった。
そこで改めて、数か月後には、現行ノートをベースにした上級モデルが追加される。実質的にティーダの復活となる。
ホンダ アクティトラック
アクティトラック(販売期間:1977年~2021年/全長3395×全幅1475×全高1745mm)
アクティはホンダの軽商用車で、アクティバンはすでに生産を終えて後継のN-VANに切り替わった。アクティトラックも2021年6月には生産を終える。
ダイハツとスズキが生産する今日の軽トラックは、エンジンを前席の下に搭載する後輪駆動車だが、アクティトラックは後部(荷台の下側)に搭載する。そのため駆動力の伝達効率が優れ、2WDでも悪路走破力が高い。農道を走る機会の多い軽トラックでは強い魅力になっている。
しかし軽商用車は薄利多売の象徴だ。採算を取るのが難しく、今では前述のダイハツとスズキしか軽商用車を手掛けていない。ほかのメーカーは、この2社のOEM車を販売している。そこでアクティバンに続いて、トラックも廃止される。
ちなみにN-VANは、N-BOXと基本部分を共通しながら車内を刷新することで、軽商用バンを成立させた。OEM関係を持たないホンダらしいクルマ造りだが、軽トラックの開発までは無理であった。
三菱パジェロミニ
パジェロミニ(販売期間:1994年~2012年/全長3395×全幅1475×全高1635mm)
近年廃止された車種の中でも、特に惜しいのがパジェロミニだ。1970年以降、軽自動車サイズの悪路向けSUVはジムニーのみだったが、1994年にパジェロミニを加えてヒット商品になった。1998年には軽自動車の規格が刷新され、2代目にフルモデルチェンジされている。
しかし2000年代に入ると、軽自動車の分野では背の高い空間効率の優れた車種が人気を高める。三菱では2001年に発売した初代eKワゴンが好調に売れた。2006年には2代目に刷新され、2013年登場の3代目は、日産と共同で開発されている。
2011年には初代(先代)N-BOXが発売され、軽自動車では全高が1700mmを超えるスーパーハイトワゴンが売れ筋になった。三菱もeKスペースを設定して、売れ筋商品になっている。このような経緯を辿ってパジェロミニの売れ行きは下がり、2012年に廃止された。
しかしパジェロミニは、国内の使用環境に適した軽自動車で、三菱のブランドイメージにもピッタリと合う。貴重な商品だったが、三菱の業績悪化も影響して廃止された。伝統的に売られ続けるジムニーと明暗を分けている。
そして今の三菱は、eKクロスとeKクロススペースを用意して、再びSUVスタイルの軽自動車を手掛けている。後輪駆動プラットフォームの開発は困難だが、エクリプスクロスをコンパクトにしたような前輪駆動ベースの軽SUVは開発できるだろう。多くのユーザーが喜ぶと思う。
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みんなのコメント
余裕ありすぎて車種増やして自社内で競合過多になって自滅、
昔からあるよね
ナディアとガイアとかさ………
三菱からしたら贅沢な悩みに見えるけど