F1グループCEOとしてさらに5年間の契約更新が発表されたステファノ・ドメニカリ氏。これは、ほぼ全会一致で歓迎された。
「私にとって最も重要だったのは、リバティ・メディアの首脳陣から全面的な信頼を得られたことだ」
■ホンダ、バーレーンで行なわれた”V10回帰”を話し合う会議に参加「2026年のPU規定がF1再参戦決定の大きな理由だったと主張した」と声明
そうドメニカリCEOは語る。
「成長を継続するために、必要なチームやシステムを自由に構築する権限を与えられた。個人的にも、パドック内からの評価を得られたことはありがたかった」
F1では、幅広い支持を得るのは稀なことだ。すべてが急速に進化する中で、契約延長が正式に発表されてからわずか2日後には、新しいコンコルド協定(F1の財政的未来を定義する商業的枠組み)も合意された。
「経済面については決着した。残るはガバナンスの部分で、これはチームとともにFIAも関わってくる。これも非常に重要なステップだ。なぜなら、これは規則の安定性を保証するものだからだ。我々が変えたいのはアプローチそのもの。戦略的であるべき課題について、もっと戦略的に、少し戦術的すぎる現状から脱却しないといけない。これはFIAとチームの協力を必要とする」
■F1の将来のパワーユニットはどうなる?
Motorsport.com(以下MS):戦略的判断について、近年はエンジンの方向性に関する議論が活発です。あなたの見解は?
ステファノ・ドメニカリ(以下SD):「2年前、私はmotorsport.comのインタビューで、F1の将来に向けた戦略的ビジョンを共有した。それが、今まさに現実になろうとしている。バーレーンでは、FIAと現行および将来のエンジンメーカー(GMを含む)との会合があった。一部では行きすぎていた。将来的なトピックが議論されている中で、現行レギュレーションの延長を推し進めようとする動きがあったんだ。それは完全に間違いだったと思う。この複雑でコストのかかるプロジェクトに多大な投資をしてきた人々の努力を尊重すべきだ。今さらルールを変えるのは、間違ったメッセージを発することになる。パワーユニットに関する過去の決定を覆すのは、大きな過ちだ」
MS:つまり、迷いなく前進ということですね?
SD:「もちろん、改善に取り組むことを妨げるものは何もない。FIA、エンジンメーカー、チームが連携して、改善すべき点があるかどうかは常に評価できる。私たちは大きなレギュレーション変更の瀬戸際にいる。そして私は、メーカーが大きく出遅れた場合にすぐに挽回できる仕組みが必要だと強く信じている。この点は早急に対処すべき課題だ。それは、どのメーカーにも起こり得ることだからだ」
MS:とはいえ、F1の”競争”という側面を考えると簡単なことではないですね……
SD:「だからこそ、皆が戦略的に考えなければいけない。ひとつのチームが長期にわたって支配的になるのは、誰にとっても良いことではない。F1は今、驚異的な成長を遂げており、世界的なベンチマークになりつつある。それは誇るべきことだが、同時に慎重さも必要なのだ」
■危機に備える必要性
MS:あなたは2009~2010年の時期を直接経験しました。その時は半数以上の自動車メーカーがF1から撤退しました。現在の世界経済が依然として不安定な中で、あのシナリオが再来する可能性はありますか?
SD:「その可能性を考えないのは、あまりに楽観的すぎるだろう。特に今の経済状況では。ルノーは長年の参戦の末にF1から離れることを決めた。はっきり言っておきたいのは、大手自動車メーカーの存在は非常に重要だが、同時に私たちは成熟した立場として、もし業界に深刻な危機が訪れた場合、大きな自動車グループが厳しい決断を下す可能性があるという現実も理解している。だからこそ、私たちは技術的な意義を維持しつつ、コストを大幅に削減し、簡素化を進める必要があるのだ。たとえば、持続可能な燃料はEV技術と相互補完的な存在になり得る。こうした選択によって、メーカーがF1に関与し続けやすくなる。仮に危機によって一時的にF1から撤退するメーカーが出たとしても、我々としては独立して対応し、代替手段を見つける準備がある」
MS:簡素化という言葉が繰り返し出てきますが、内容があいまいなことも多いです。具体的にはどういう意味ですか?
SD:「私の世代のファンは、何がパフォーマンスや技術的魅力を生み出すのかを再考する必要がある。持続可能な燃料に注力するのは、間違いなく正しい方向だ。でも、これは少し挑発的に聞こえるかもしれないが、チームが多額の資金を費やして独自のギヤボックスを設計するのは、もはや理に適っていない。性能向上はごくわずかだし、ファンにとってももはや興味を引く分野ではない。技術とエンターテインメントが重なる領域を見極める必要がある。かつて最先端に見えたものでも、今では巨額の投資に見合わないものも多い。我々は、その現実を受け入れる勇気を持たなければいけない」
MS:2024年の中盤から、再びフレキシブルウイングが話題になっています。技術的論争が再燃していますね。
SD:「そういったことはたくさん経験してきた。1999年マレーシア(フェラーリのバージボードが規定違反とされ失格となったが、後に抗議が受け入れられ、失格が取り消しになった事件)、ダブルディフューザー、FRIC、マスダンパー、Fダクト……これらはすべてF1の歴史の一部だ。昔は、毎週日曜日に技術・スポーツ規則の議論に直接関わっていた。当時は、今よりも遥かに“グレーゾーン”が広かったが、F1関係者は今でも限界を突き詰める術を知っている。個人的には、現在の論争は比較的小規模だと思う。むしろ、もう少しそういった議論があってもいいのではと思うくらいだ……あれはF1のスパイスだから」
■ラスベガスGPの重要性
MS:ラスベガスGPの開催は、期待通りの成果を上げましたか? 一部では財政面で期待外れという声もあります。
SD:「大きな成功だった。しかしどんな新規プロジェクトでも、初期投資をすぐに回収できるとは限らない。イベント単体として見れば、ラスベガスは明らかにF1にとっての勝利だ。メディア露出に加え、他では獲得困難だった商業契約を結ぶことができた」
MS:これはF1という“システム”の見本市と言えるのでしょうか?
SD:「まさにその通りだ。地元コミュニティにとってコストが高かったのは否定しない。今年からはラスベガスGPは完全に我々F1の管理下にある。運営チームは直接我々にレポートする体制に変わった。ROI(投資収益率)を加速するために構造も見直した。地元の投資家の関与も強化したいと考えている。ラスベガスGP週末の経済効果は2年連続で巨大だった……スーパーボウル以上のインパクトだ。地元にも多大な利益をもたらしている。このプロジェクトへの投資と信頼は、これからも継続しなければいけない。アメリカで大きく前進してきたが、まだまだ成長の余地はある。今後もF1の存在感を高めていく必要がある」
MS:アフリカは保留状態ですか?
SD:「“保留”という表現は正しくない。そのステップを踏む前に、3つの観点での保証が必要だ。まず、F1が訪れることで地域社会に還元される投資であること。次に、インフラ……サーキットだけでなく、ホテル、道路、空港などの整備だ。そして、長期的にイベントを支えられる経済基盤も整えなければいけない。我々は何も止まってはいない。むしろ、“OK、やろう”と言える段階に至るために、何が足りないのかを評価し続けている。ただし、まだその段階には到達していない」
■ハミルトン、フェラーリ移籍の効果
MS:ハミルトンのフェラーリ移籍は、F1に何をもたらしましたか?
SD:「イタリア人として海外に住んでいる私から見ると、あのニュースがもたらした関心はものすごいものだった。F1の注目度が一気に高まった。もちろん、最終的にはスポーツであり、注目度は結果に左右される。それには時間がかかる。ルイスは長年メルセデスで多くの関係や技術的な理解を築いてきたが、それがフェラーリでも同じとは限らない。忍耐が必要だ。彼は中国でスプリントを制したが、少し不完全な週末があるだけで人々の評価はすぐに変わってしまう。我々はもっと冷静に見るべきだ。日本GPでは多くの人がマクラーレンの1–2フィニッシュを予想していた。バーレーンでは“退屈なレースになる”という声もあった。でも、どちらも外れた。世間はあまりにも早く結論を出しすぎる」
MS:この話題に関連して、日本GPを「退屈だった」と言う声もあれば、「レースの緊張感やタイヤの劣化の少なさが良かった」と評価する声もありました。
SD:「全員を満足させることはできない。鈴鹿は非常に緊張感のあるレースだった……タイミングスクリーンを見ていた人には、そのすごさが分かるはずだ。でも、オーバーテイクがなかったので、多くのファンがもっと目に見えるアクションを求めるのも理解できる。それももっともな意見だ。だからこそ、我々はモナコでの2回の義務ピットストップを導入しようとしたし、ピレリには高劣化タイヤの継続使用を要請した」
MS:タイヤの劣化とレースの緊張感、そのバランスを取ることは可能ですか?
SD:「我々には2つのファン層がある……F1に精通した“ハードコア”なファンと、比較的新しいライト層のファンだ。スポーツとして、我々がもっとわかりやすく説明する責任がある。ファンにとって当たり前に見えることでも、初めて見る人にはそうではない。我々はレース中に何が起きているのか、もっと上手に伝える必要がある。とはいえ、やはりオン・トラックのアクションが最も魅力的な部分であることは間違いない」
■次なるスーパースター
MS:F1は新世代のドライバーたちによって再び活性化されています。彼らのクオリティは高いと思いますか?
SD:「今見ているものは本当に素晴らしい。これはジュニアカテゴリーの育成システムがうまく機能している証拠であり、F1にとって朗報だ。同時に、こうした若いドライバーたちは守られるべき存在でもある。メルボルンでは、私はハジャー(アイザック・ハジャー/レーシングブルズ)をサポートする意志を明確にしたが、彼はその後すばらしい走りを見せた。ローソン(リアム・ローソン/レーシングブルズ)も、厳しいスタートを切った今こそ支援されるべきだと思う。我々は彼らの“人間としての側面”を忘れてはいけない。アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)は本当によくやっている。まだ18歳だし、メルセデスが彼をうまく支えているのを見て私は嬉しく思う。彼が今でも家族と共にいて、謙虚である姿を見るのは素晴らしいことだ」
MS:最終的にF1は11番目のチームを承認しましたね。
SD:「キャデラックのプロジェクトは、アメリカ市場でのF1の存在感をさらに高める助けになる。私たちが交わしてきた会話は進化し、第2案は第1案よりもずっと強力なものだった。これからは、このプロジェクトが前進し、しっかりとした2人のドライバーを選び、結果を出せるかどうかにかかっている。キャデラックのような大ブランドが加わることは、F1というシステム全体にとって利益になるし、アメリカでさらに多くのレースを開催する道を開く可能性もある」
MS:F1のカレンダーは24戦のままですか? それとも増える可能性がありますか?
SD:「確定している。最大数は24戦のままだ」
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みんなのコメント
きているが、今のWECのように性能調整でやっと成り立つような状況は絶対に避けなきゃいけない。
モータースポーツの頂点であるF1はあくまで”ショー”ではなく、スポーツ的にも技術的にも公平性を担保する”競技”でなければならない。