長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、各グランプリウイークエンドのドライバーたちの戦いを詳細にチェックし、独自の評価によりベスト5のドライバーを選出する。今回は第18戦シンガポールGPの戦いを振り返った。
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【F1第17戦ベスト5ドライバー】角田裕毅が難局で見せた緻密で知的な走り/絶好のタイミングで結果を出したローソン
■出遅れたと思われたラッセルが他を寄せ付けない速さを発揮
ジョージ・ラッセル(メルセデス):予選1番手/決勝1位
ジョージ・ラッセルにとって、シンガポール週末の幕開けは決して幸先の良いものではなかった。FP2でターン16の壁にヒットしてしまい、その結果、このレースにおいて最も重要な時間帯である夜のセッションで、予選とレースのシミュレーションを行うことができなかったのだ。
つまり、金曜日にはラッセルは出遅れているように見えた。しかし、FP3開始時には、彼は完全に調子を取り戻していた。予選Q3での2回の最速タイムはいずれもポールポジションを確保するに十分なものだった。決勝では、完璧なスタートと、最初の20周における圧倒的なペースによって、レースの主導権をしっかり握り、最終スティントでは新品のハードタイヤを慎重に使いながら、必要に応じて終盤で再びプッシュできるだけの余力を残した。
しかし結局その必要はなかった。後ろのフェルスタッペンはプレッシャーをかけられるほどの距離に一度も近づくことができなかったのだ。そうしてラッセルは、シンガポールで堂々たる圧勝を飾った。
■3戦連続マクラーレン2台に勝利したフェルスタッペン
マックス・フェルスタッペン(レッドブル):予選2番手/決勝2位
マックス・フェルスタッペンが2位に満足することは決してないが、シンガポールでのレッドブルのマシンは3番目の速さしか持たなかったことを考えれば、彼がこれ以上の結果を望むのは難しかっただろう。
予選ではマシンの持つ力をすべて引き出し、Q3で自身のタイムを更新しようとしていた矢先、残り3つのコーナーでランド・ノリスに追いついてしまった。ノリスに進路を妨げられたと感じたフェルスタッペンは憤った。しかし実際には、仮にその周を完璧に走り切っていたとしても、ラッセルのタイムを上回る可能性は低かっただろう。
フェルスタッペンは、ソフトタイヤでスタートするという賭けをしたが、報われなかった。ラッセルの方が良いスタートを決め、すぐに遠ざかっていったのだ。フェルスタッペンはハードタイヤに交換するまでの間、タイヤを慎重にマネジメントして走らざるを得なかった。さらにハードタイヤでは、ライバルたちよりも長いスティントを走行することになった。
それでもフェルスタッペンは、より新しいタイヤを履き、速さで勝るノリスのマクラーレンを抑え込んでみせた。それはまさにお手本のような走りだった。フェルスタッペンは一度だけ、コーナーでコース外にはみ出すというミスを犯し、「まるでハンドブレーキがかかっているみたいだ!」と不満を漏らした。その時には、ノリスが一瞬横に並ぶことができたが、それ以外でフェルスタッペンが隙を見せることはなかった。その結果、フェルスタッペンは3戦連続でマクラーレン2台を打ち破ったのである。
■怒りを収めて最善を尽くしたピアストリ
オスカー・ピアストリ(マクラーレン):予選3番手/決勝4位
オスカー・ピアストリが憤るのも当然だった。スタート直後にチームメイトに押し出され、それによって事実上、表彰台のチャンスを失ってしまったのだ。
その結果、さらに悪いことに、シンガポールGPを終えた時点で、ノリスとの差が22ポイントに縮まってしまった。またしてもマクラーレンの判断が、ピアストリにとって不利に働いたのだ。ハンガリーでは、戦略を変更したノリスに逆転されてしまい、イタリアでは、ピット作業の遅れで順位を落としたノリスを前に出すように、チームに指示された。シンガポールでは、チームは、ノリスがピアストリに接触して前に出た後、このインシデントに介入しないと伝えた。
予選Q1とQ2ではノリスが優勢だった。しかし今年よくあるように、重要なQ3でうまくまとめ上げたのは、ピアストリの方だった。
決勝スタート直後、ピアストリはターン3でノリスに接触され、危うくリタイアするところだった。チームメイトに当てられたという事実と、マクラーレンがそれに対して何もしようとしなかったことが、しばらくの間、ピアストリの怒りを駆り立てた。
しかしそのうちにピアストリは落ち着きを取り戻し、レース後半のハードタイヤでは最速ペースで走り続けた。ただし、フェルスタッペンとノリスに追いつくには周回数が足りなかった。彼が3位争いに加わっていたら、レース終盤はさらに見応えのある展開になっていたはずだ。
■幸運にも助けられ、ピアストリとの点差を縮めたノリス
ランド・ノリス(マクラーレン):予選5番手/決勝3位
ランド・ノリスはチャンピオンシップにおけるピアストリとの差を縮めることに成功した。彼の視点からすれば、それがすべてだった。
ノリスは予選Q1とQ2ではピアストリを上回ったが、重要なQ3で勝つことができなかった。その結果、ノリスは決勝スタートにおいて、より多くの仕事を抱えることになった。アンドレア・キミ・アントネッリの悪いスタートに乗じて、ノリスはすぐに4番手に上がり、その後、自分のチームメイトを押し出して、3番手を奪った。
今回再び明らかになったのは、ノリスはホイール・トゥ・ホイールでの戦いを得意としていないという事実だ。ノリスは前に出ようとするなかでの動きを大きく誤り、フェルスタッペンに接触し、その後ピアストリにも接触した。それでも幸運なことに、大きなダメージを負わずに済み、フロントウイングのエンドプレートが曲がった状態のままレースを続行することを、レースディレクターが許可したことにも救われた。
そういう波乱があったものの、その後のノリスは見事な走りを見せた。ミディアムタイヤではピアストリより速く、フェルスタッペンを射程圏内にとらえ続けたのだ。ノリスはフェルスタッペンのアンダーカットを狙わず、最適なタイヤ戦略で走り続け、終盤15周にわたってフェルスタッペンに大きなプレッシャーをかけ、ミスが起きるのを待った。しかしフェルスタッペンは決定的なミスを犯さず、ノリスには追い越すチャンスが訪れなかった。
■ランキングでようやく正当な位置に浮上したアロンソ
フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン):予選10番手/決勝7位
ベテラン、フェルナンド・アロンソの内には、いまだに驚くほどの情熱と闘志が宿っている。彼の年齢を知らずに、その走りと無線での発言だけを見聞きすれば、アストンマーティンの14号車を操っているのは、野心に満ちた10代の若者だと錯覚してしまうだろう。
シンガポールでアストンマーティンは、予想よりも競争力を欠いていたが、アロンソは見事に予選Q3へ進出した。一方、チームメイトは今回もQ1で脱落しており、再びふたりの差が明確に示された。
アロンソは決勝序盤に、ルーキーのオリバー・ベアマンとアイザック・ハジャーを抜いてふたつポジションを上げ、レース終盤には、“ベスト・オブ・ザ・レスト”として8位でフィニッシュするものと思われた。
しかし、前を行くルイス・ハミルトンのブレーキトラブルと、レース後に彼に科されたペナルティによって、アロンソの順位はひとつ繰り上がって7位に。6ポイントを獲得したアロンソは、ドライバーズ選手権で11位に浮上し、これまで幸運続きで彼の上に立っていたランス・ストロールをようやく上回ることとなった。アロンソの際立ったパフォーマンスに、ようやく少しばかりの正当な報いが与えられたと言えるだろう。
[オートスポーツweb 2025年10月09日]
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